「せんせ、土籠せんせ」
「な、柚木、?」
先生に話しかける。
先生は俺を見た途端幼子のようにアメジスト色の瞳を揺らし顔を歪めた。
「なんでここに…ッ」
「ごめんね、怒った?」
本来ならそこにいるはずの無い存在。
だって俺はもう死んでるから。
でも、
「言ったでしょ、どこにも行かないって」
そう、俺はどこにも行かないと宣言した。
今立っているこの教室で。
「それより、せんせー俺達のこと知ってたんだ?」
「弟を止めることも出来ない俺は見ててさぞ滑稽だっただろうね」
まるで自分のものではないかのように口から勝手に言葉が出てくる。
もう俺は先生の正体を知っていて、人間じゃないことも分かっている。
だからこそ、少し悲しいと思う所もあった。
先生は俺の全てを知っていたのに。
俺は何も知らなかった。
他の生徒よりは先生のことを知れていると思っていた自分が恥ずかしくなるほどに、俺は先生のことを知らない。
それが悔しくて、つい意地悪い事を言ってしまった。
どう反応されるかと様子を伺っていると、先生はゆっくりと口を開いた。
「自分のことを滑稽だなんて言うな、お前は十分頑張っただろ。」
考えてもいなかった言葉に驚き、反射的に目を見開く。
もっと言い訳を並べたり自分を正当化するのだと思っていた。
最初の言葉が俺を労る言葉だなんて。
「え、?どういう、」
そう言いかけた時、身体が包まれる感触がした。
自分よりひと回りもふた回りも大きい大人の体。
しばらく感じていなかったその感覚は俺の中で必死に忘れようとしていた昔の両親との記憶を思い出させた。
「俺が誰にも文句なんて言わせねェ、だから」
「今は素直に泣いとけ。」
優しい言葉に目が潤み、大粒の涙がこぼれる。
今まで抑えていたものが溢れて、
もうどうしようもない。
子供のように嗚咽を漏らしながら泣きじゃくる。
しゃっくりをする度にぼろぼろと涙が出てくるから、止めることも出来ないまま泣き続けた。
今まで背負ってきたものがふっと軽くなった。
俺、頑張らなくてもいいの?
俺の罪はもう消えないけれど、
それでも、俺は今ここに存在できていることが何よりも嬉しかった。
もう何もいらない。
ずっとずっとつかさが1番だったのに。
ああ、これが
「恋」ってやつなんだ!
この作品はこれで終わり!
みんな最後まで見てくれてありがとー!!
ばいなら〜!
コメント
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通知きた瞬間飛んできた!!!!! 私のことを泣かせる天才()