コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
翌日からジャガーズは東京パイレーツとの3連戦があったが、1勝2敗で負け越してしまった。
ほとんどの野球評論家の優勝予想では、今年も東京パイレーツが有力であった。
先日のテレビ中継では、辛口で有名な評論家の久米が、
「今年もジャガーズは、いいところで4位ぐらいでしょうね。田村も今年がだめだったら来年はないでしょう。彼もここ数年の成績も思わしくなかったから、そろそろ潮時でしょう」と言っていたのだ。
私(田村)はパイレーツとの試合を終え、翌日、名古屋へ向かう予定であったが、その前に立ち寄るところがあった。私は平田コーチに新大阪駅までは私用のため、どうしても他の選手と一緒に行くことができないと伝えた。当初、平田は反対したのだが、何とかお願いをして了解をもらった。最後に平田は遅くとも16時には新大阪駅に着くように念を押した。私は平田コーチに礼を言い、大地が入院している病院へタクシーで向かった。
病院へ着いてから、受付のところで私は肝心なことを忘れてしまっていた。
あの時、私が年配の女性に会った時、彼女の孫の下の名前は覚えていたのだが、
名字を忘れてしまっていたのだ。「大地」という名前しか思い浮かばなかったのだ。
「五~六歳ぐらいの男の子で、名前は大地君というのですが、病室を教えて頂けないですか?」
と私は受付の女性に尋ねた。
「申し訳ございませんが、それだけではお調べすることができません。もし分かったとしても、ご家族以外の方ですと面会はできないですね」とその女性は言ったため、
「ダメですか?では仕方がないですね」と私は言い、残念だが帰るしかなかった。
私はあきらめてその病院を出ようとした時、正面玄関近くであの女性を見つけた。
私は小走りで女性に近づくと、
「あの、失礼ですが私のことを覚えておられますか?」と尋ねると、
「もちろん、覚えていますよ。でもどうしてこんなところにおられるのですか?」
と驚いた表情で明子が言った。
「大地君の見舞いへ来たのです」と私は言うと、
「ほんとうに大地に会いにきてもらったのですか?」と明子が驚いた表情で言った。
「この前、約束したじゃないですか」と私が少し笑って言うと、
「ありがとうございます。でも、正直来て頂けると思わなかったのでびっくりしました。大地もきっと喜ぶと思います」と明子が言った。