小学生の頃の幸せな時間を思い出して勇気を振り絞って歌を録る。
『僕らは命に嫌われている 価値観もエゴも押し付けて いつも誰かを殺したい歌を 簡単に電波で流した』
最初の『馬鹿げてるよな』のところの『馬鹿』が出なかったけれどミックスでなんとかする。
歌をYouTubeにあげる。
少し勇気が要ったが、嫌な妄想と記憶を押さえつけながらなんとかあげる。
三日間程、反応が良いものでなかった時のことを想像してしまい、よく寝れなかった。
だが、心配する必要は無かったようだ。
【綺麗なのに可愛い声で歌もうまいですね!早く次もあげてほしいです!】
コメント。好評価もつけられた。
【今度は感動系の歌歌ってほしい!】
【リクエスト!余命2:30】
【元気系も歌って!ポジティブ☆ダンスタイムとか!】
【チャンネル登録しました!感動!】
よかった…良いコメントがたくさんついてる…!
嬉しくなって、全てのコメントにいいねをつける。
1週間に2回ぐらいのペースで歌をあげる。
演奏もあげてみたいな、そう思う。ギターの弾き語りとかで。すぐできそうなのは…
『さぁ眠眠打破 昼夜逆転 VOX AC30W テレキャスター背負ったサブカルボーイが バンドの仲間にやっほー』
そしてまた動画をあげる。
バイトの時間だ!急げ!
バイトといってもまだ中3なので近所の店のお手伝いをして、お小遣いを貰っている感じだ。雇用契約とか堅苦しいのは無い。
カフェの裏で紅茶やコーヒー、カフェオレなどの飲み物を淹れる仕事だ。
声は知らない人の前で面と向かってはあんまり出したくないため、レジ打ちやウェイターなどはできない。
そんな感じだ。
まかないでコーヒーをもらう。なんかお小遣いもコーヒーもってちょっと悪い気もするけど。美味しい。
『今日のコーヒー美味しい…』
『あぁ、今日はね、店がオープンしてから丁度5年だから良いのを淹れたのよ』
『どうりで』
『凄いね〜違いがわかって。実はこれほんの少しの違いなんだよね〜みんな気付いてくれなかったのざーんねん☆』
『ちょっとwww詩織さんwwwその言い方www』
『あらごめんなさい笑わせるつもりはなかったのよ〜☆』
『いや完っ全に笑わせにきてるじゃないですかwww』
詩織さんは私が気軽に話せる数少ない大人だ。
幼稚園でのいじめは大人達の私の声への勘違いからだったため、少し大人と話すのには勇気が要る。
その点詩織さん、子供みたいなんだよなぁwところどころ。なんかあんまり怖くないっていうか。
本人にところどころ子供みたいなんて言ったら
ちょっと〜それどういう事ねぇ〜
って言われそうだけどねw
バイトから帰る。少し憂鬱な気分。
何故ならもうすぐ学校の定期テストで学校に行かなければならないからだ。
学校行かなくてもテスト受けられればいいのに…
幸い、テスト勉強は苦じゃない。
中学生になる前はテスト勉強嫌だとか辛そうとか面倒くさそうだとか思っていたがいい点数を取る為の勉強、みたいなのは案外必要無くてやってこいと言われた課題をやるだけという感じだ。実際。
学校怖い。部活も行きたいけど、本当は行きたいけどすごく怖い。
学校が怖くなければ全部解決なのに…
学校に行かなければならないと思うとそれだけでなんだか吐き気がしたり頭痛がしたりする。
だけどテストにはそれを全部押さえ込んで行かなければならないのだ。
おまけに遠いときた。乗り換えを繰り返しながら電車で片道1時間15分かかる。
受験したから仕方がないが、塾でもいじめに耐えながら頑張ってきた私を恨んだ。