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────────────────────タイトル:Ωの嫉妬、αの檻
著者:そると
発行日:2025年9月2日
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彼らが出会ったのは、上司と部下という関係だった。
篠原は冷静沈着で、誰に対しても距離を置くような男。
だが唯一、部下である結城にだけは、どうしようもなく抑えられない感情を抱いてしまった。
結城もまた、その想いに気づき、戸惑いながらも応えるようになった。
互いに惹かれ合い、やがて番となったことで、二人の絆は一層強く結ばれる。
――しかし、それは同時に「嫉妬」と「束縛」の始まりでもあった。
Ωである結城の心は繊細で、篠原の笑顔が他人に向けられるだけで胸を締めつけられた。
「どうして、俺には見せてくれないのに……」
そんな想いが募り、結城の瞳には涙が宿る。
一方で、αである篠原の愛は執着に変わっていく。
結城が誰かと楽しそうに話す姿を見れば、胸を焦がすような嫉妬に駆られた。
その嫉妬はやがて、結城を自分だけの檻に閉じ込めたいという衝動へと姿を変えていく。
「君は僕のものだ。他の誰にも渡さない」
そう言って首筋に牙を立て、結城を番として刻みつけた夜。
結城は混乱しながらも、心の奥ではその言葉に安堵していた。
逃げ場のない檻。
けれど、そこにあるのは確かに「愛」だった。
時が過ぎても、二人の関係は変わらない。
嫉妬も束縛も、痛みも甘美も――すべては互いを確かめ合うための儀式に変わっていった。
篠原は言う。
「君は、もう僕なしでは生きられない」
結城は涙を浮かべながらも、微笑んで答える。
「俺だって……ずっと、ここにいたいんです」
窓のない檻の中。
互いの存在だけを信じ、互いの呼吸だけを感じ合う。
それは決して逃れられぬ「Ωの嫉妬、αの檻」。
けれど二人にとっては、この上なく幸福な終着点だった。
――狂愛の果てに辿り着いた、二人だけの永遠。
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