テラーノベル
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禪院真依は押入れの中で笑いを押し殺した。真希とのかくれんぼの一環で、またちょうどいい場所を見つけたのだ。
「ふふっ」つい、声が出てしまう。これでまた姉が自分を見つけられなかったら十連勝だ。何しろ禪院の屋敷は広い。本気で見つけ出すとなるとなかなか――
次の瞬間、真依は外のまぶしさに思わず目を細めた。押入れの扉が開いたのだ、と気づくには少々の時間を要した。
「誰かと思たわ。真依ちゃんやん」
そこのいたのは真希ではなかった。目元のきつい少年――というよりは、青年と呼んでいいだろう。
禪院直哉である。
「あ……」
「何してるん」
なぜここに直哉がいるのか。というよりも、なぜここが分かったのだろうか。真依は驚きのあまりまともな声も出せなかった。口をぱくぱくさせる。「えっ……」
歯切れの悪い彼女に痺れを切らしたのか、彼の声は冷たかった。「何してるん、って聞いてるんやけど。ほんまドンくさいな」
「……すみません」ようやく言葉を絞り出した。今すぐにでもここから逃げ去りたい、と真依は思った。従兄とはいえ十歳以上も歳が離れている直哉とは、気軽に話せるような関係ではない。むしろ真依は彼にどこか苦手意識を持っていた。にらんでいるような目も(いや実際、本当ににらんでいるのかもしれないが)、高圧的な態度も。
真依は押入れの中から出ると、「あの、真希は」と言った。「真希って見ましたか?」
「さあ? そんなんいちいち見てへんわ」
そう言い残すと、直哉はさっさとどこかに行ってしまった。そんな冷たい言いかたしなくてもいいのに、と心の内で思いながら、真依は真希を探すことにした。これだけ待ってもこないのだから、今回も自分の勝ちということでいいだろう。
「真依!」
振り返ると、真希が立っていた。あの部屋から少し離れた廊下である。
「お姉ちゃん! 今回で私、十連勝ね」と言いながら、真希へ近づく。
「くっそ~……」と心底悔しがったような顔を見せ、姉は毒を吐いた。「だってあいつがいたんだよ。正直会いたくないから、距離置いてたらどこも探せなくなっちまった」
「あいつ?」真依は首を傾げた。
「な、お、や!」姉は忌々しそうに言った。
「次からもっと範囲狭くしようぜ。真依もあいつに会んの嫌だろ?」
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