テラーノベル
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宿に着くまでの間、六花の頭は先ほどまでの熱いキスのことでいっぱいだった。頬が熱くなり、宗吾に見られたくなくて窓の外に目を向ける。
あんなに激しいキスをされたら、愛されてるんじゃないかと勘違いしてしまう。もし本当に愛されているのならば、彼が受け止めてくれるかはわからずとも、娘のことも素直に話せる気がした。
私とのキスだけであんなに硬くなっちゃうんだもの。きっと相当欲求不満だったに違いない。でもそれは私も同じか……宗吾のキスだけでこんなにも体が熱くなってしまったんだから──。
そして宗吾の硬くなったモノを想像して、心臓のドキドキが止まらなくなる。人のこと言えない……私だって欲求不満みたいじゃない──。
車は徐々に宿に近付いている。あんなキスの後だから、何があってもおかしくない。
それに……絶対に同室よね。このまま二人きりになったら……? ──頭に浮かぶのは宗吾の鍛え抜かれた裸体と、キスをした時に感じた高揚感。
もし押し倒されたりしたら──キスだけで腰が砕けてしまった私に、彼を押しのける自信は全くなかった。
私が誘わなければしないと言ったけど、それは本当だろうか……──それが安心材料にも、物足りなさにも感じる。
私は一体どうしたいのかしら──そう考えるほど、六花には一つの答えが見えていた。彼を受け入れたいのも、受け入れたくないのも、どちらも同じ感情だったから。
私から誘わなければしない、それが約束。それは私にこの感情の正体を認めろと言っているようなものよね。
「ここから十五分くらいだから」
「うん、わかった」
突然言われたものだから、つい声がうわずってしまう。
辺りが徐々に暗くなり始めた。車はゆっくりと車線変更をして、高速道路の出口に向かう。
温泉街の看板が見えてくると、通りを走る車や人の往来が多くなってきた。窓からはたくさんの温泉宿が見え、六花は視線をキョロキョロさせる。
しかし車は温泉街を抜け、更に奥へと進んでいく。
「あれ? ここじゃないの?」
「今日泊まるところはもう少し先なんだ」
宗吾の言葉に納得するように頷くが、何も目印のない木々の中を進んでいくのは、少しだけ不安になった。
「あそこだ」
すると前方に明かりが見え始め、『花里』と書かれた立派な木の看板を照らしていた。だが車が通るための入口しか見当たらず、建物は更に奥の方にあるように見受けられる。
車は暗闇の中に吸い込まれるように進んでいった。
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#再会
#一途な思い