コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
ゼロというものを認識するだけの私だと、生まれてみて最初に気づいた。
気づいてしまった。
何もないのに、周りは笑顔で、忙しそうで、なにか期待とかいう名前のもののような、空気があって。
それが全て、私に向かっている。
目に映るものはみんな自分より先にうまれていて、もう何かを成している。
誰かの役に立ったり、邪魔だと思われる”存在”だ。
ああ、なんて自分だ。
何ももっていない、裸で、言葉ももたず、伝えられず、手も足も体も、明るみでたった今初めて見た。
これはあまり上手く動かず、ばたばたとしていて、憎たらしく丸い。
こんなまぶしい「世界」で何の役にも立つまい。
何てことだ、せっかく生まれてみたのに、とんだ失態、無知である。
生まれる前の暗くおちついていてあたたかい場所へとかえりたい。
気づいたが、思ったが、伝えられず、ただただ私は泣いた。
涙というものが出ているかもわからない。
すると何故か私は抱き上げられて、それはさらに笑って言った。
「生まれてきてくれてありがとう」
私はさらに大きく泣いた。