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ある日若井とりょうちゃんに家に行ってもいいかと聞かれた。
よくあることなので特に何も考えず二つ返事をした。
仕事が終わり車に乗り込んでそのまま一緒に向かう。
家に着き軽くご飯を食べてダラダラと過ごしていると大事な話があると若井が切り出した。
いつもの思っていることぶち撒けタイムかと思ったがどうやら雰囲気が違う。
若井とりょうちゃんの間に座ると黒い瞳に見つめられる。
少し間を置いて若井が喋り出した。
「実は俺とりょうちゃんは吸血鬼なんだ」
「えっ?……」
言われた言葉の意味はわかるが理解できず頭の中で若井の言葉を反芻する。
静まり返った空気が漂っていた。いつもは音楽や会話が満ちる場所が、今夜に限ってはまるで別の世界のようだった。窓から差し込む月明かりが、元貴の横顔を淡く照らしている。
再び若井の顔を見ると目が赤く光っていた。
りょうちゃんの方に首を振っても同じように光っている。
「……本当に、吸血鬼だったんだね、ふたりとも」
ソファに腰掛けた元貴が、低く、しかし震えることなくそう呟いた。その両隣にはどこかいつもより影の濃い雰囲気を纏った若井とりょうちゃんが座っていた。
「驚いた?」
りょうちゃんが、少しだけいたずらっぽく笑う。しかしその目は真剣だった。若井は黙ったまま、じっと元貴を見つめている。
「驚いたよ。でも……なんとなく、ずっと感じてたのかも」
「え?」
「ふたりが、他の人とはどこか違うって」
元貴の声には不思議な静けさがあった。拒絶でも好奇心でもない。ただ、確かめるような、少しだけ寂しげな響き。
「俺、ずっと自分だけ取り残されてる気がしてた。ふたりが何を考えてるのか、近くにいるのにどこか遠くて。でもそれが、人間じゃないからって理由なら……納得できるかもしれない」
「元貴」
若井が静かに口を開いた。その声音は普段の彼よりも低く、熱を帯びていた。
「元貴のことは、特別だと思ってた。人間だからとか、吸血鬼だからとか、そんなの関係なく。……ただ、一緒にいたいって、ずっと思ってた」
涼ちゃんも頷く。「俺も同じ。元貴と一緒にいると、なんかこう……生きてるって感じがするんだよね。血とか命とか、そういうの全部越えて、ちゃんと心が動くっていうか」
元貴の目が少しだけ潤んだように見えた。けれど、すぐに小さく笑ってうつむいた。
「ねえ、吸血鬼って……血を吸わないとダメなんでしょ?」
若井とりょうちゃんは一瞬、言葉を失ったように見えた。そして、若井がぽつりと応える。
「うん。でも、俺たちはもう何年も人からは吸ってない。……我慢してた。人間に触れたくなるのが怖くて」
「輸血パックってのがあるんだ、吸血鬼用に…ずっとそれで飲んでたんだ」
「でも、今なら……」涼ちゃんが言葉を継いだ。「もし元貴が俺たちを信じてくれるなら、ちゃんと話せると思って」
元貴はしばらくの間、沈黙していた。やがて静かに顔を上げる。
「……吸われたら、俺、どうなっちゃうの?」
その声は、怖れているようでいて、どこか覚悟を含んでいた。
若井が立ち上がり、ゆっくりと元貴に歩み寄る。彼の指がそっと頬に触れ、優しく、しかし逃げられないように顎を上げさせる。
「何も変わらない。ただ、ちょっとだけ――」
「……快感が強くなるかもね」涼ちゃんが、横から囁くように笑う。
「ずるいよ、そうやって……」
小さく抗議するように眉をひそめた元貴だったが、頬に触れる指先の冷たさと、耳元にかかる吐息に、呼吸がふっと浅くなる。
「怖かったら、すぐに止める。でも、俺たちは……ずっと、元貴が欲しかった……」
若井の声が、まるで呪文のように元貴の心を包み込む。
「……やだとは、言ってないよ」
その一言に、若井とりょうちゃんの視線が交差する。そして、次の瞬間には元貴の手がそっと引き寄せられていた。
その夜、月は雲の合間に静かに光り続けていた。
若井の瞳が深く揺れた。りょうちゃんも隣からそっと息を呑み、ゆっくりと近づいてくる。元貴の体は強ばっていたが、それでも逃げようとはしなかった。むしろ、自分でも知らないうちに、ふたりの気配を求めていた。
若井の指先が、元貴の首筋を撫でる。その場所は、人間の体で最も柔らかく、そして脈打つ命が確かに感じられる場所。指がそこに触れた瞬間、元貴は息を詰めた。
「……大丈夫。怖くないよ」
若井の低い声が耳元で囁かれる。その声に、いつもの包容力ではない、どこか深い欲望のようなものが滲んでいた。
そして――
唇が、そっと首筋に触れた。
ペロッと舐められ唾液が付けられる。
フワフワと不思議な感覚がしてきた。
そして尖った歯が立てられた。チクッと鋭い痛みが走る。
何かが吸い取られていく。ただ、体の奥からじわじわと熱が引き出されていくような、奇妙な心地よさ。血が吸われているはずなのに、それはまるで優しく口づけされているような、甘い痺れだった。
「あ……っ」
思わず漏れた声に、元貴自身が驚いた。けれど、止めることはできなかった。若井の腕が背中をしっかりと支え、逃げ場を与えない。肌が密着するほど近くにいるのに、冷たい指先がどこまでも慎重で、やさしかった。
「気持ちいい、でしょ?」
反対側からりょうちゃんが囁く。
「俺たちの唾液は媚薬効果があるんだ、噛む時は痛いけど段々快感になっていくはずだよ」
その声に頷くことさえできないほど、元貴の意識はもう、ふたりの気配に包まれていた。
「りょうちゃん、そっちも」
若井の声に応えるように、りょうちゃんが反対側の首筋に唇を落とす。舐められたあとビリッと電流が走ったような快感が背筋を駆け上がった。
「あっ……だ、め、そこ……」
「平気だよ、元貴。ちゃんと見てるから」
ふたりの唇が、左右から元貴の命をなぞるように吸いつく。まるで血ではなく、感情そのものを啜られているような感覚だった。心が透明になって、ふたりに溶けていく。
視界がかすむ。けれど不安はなかった。体がふわふわと浮かび上がって、どこかへ連れていかれる――そんな幸福な錯覚のなかで、元貴はそっと目を閉じた。
「……これで、俺たちはつながったよ」
耳元で若井が囁き、りょうちゃんが舌で名残惜しそうに跡を舐め取る。
「ちゃんと……俺のこと、ふたりとも見ててくれる?」
消え入りそうな声で問う元貴に、ふたりの答えは同時だった。
「もちろん」
「……ずっと」
ふたりの吸血鬼に挟まれながら、元貴は静かに、安堵の吐息を漏らした。
目が覚めたとき、視界には天井の灯りがぼんやりと映っていた。
どこか夢の続きを見ているような感覚だった。体は軽いのに、心の奥だけが妙にじんわりと温かく、胸の奥がじくじくと疼いている。
「……ん」
喉が、乾いていた。
けれどそれは単なる水分ではない、何かもっと深いものを欲しているような渇きだった。息を吸い込むと、部屋に漂う若井とりょうちゃんの匂いが鼻腔を満たし、それだけで心が落ち着く。いや、それどころか――安心して、うっとりしてしまう。
「……起きた?」
声に振り返ると、隣で寝ていたりょうちゃんが、元貴の髪をそっと撫でていた。優しく、穏やかな目で見つめられるその感覚に、またふわりと心が浮かぶ。
反対側には若井がいた。いつもと変わらない顔なのに、どこかひとつ違って見える。夜の奥底みたいな、得体の知れない静けさを宿したその眼差しに、元貴は知らず、息を呑んでいた。
「……変な感じ、する?」
りょうちゃんの問いかけに、元貴は小さく首を振る。
「……怖くは、ない。ただ……なんか、全部が静かで……」
心臓の鼓動さえも、今は遠くで鳴っているように感じる。けれど、それは恐ろしい静けさではなかった。むしろ心地よい余韻に包まれていて、体の芯がぽうっと温まっていく。
首筋をそっとなぞると、まだほんの少しだけ、ぬるく残る痕があった。そこからじわじわと広がっていく熱に、思わず瞼を伏せる。
「ふたりの……なかに入れた、みたいな感じする」
ぽつりと呟いた言葉に、若井の目がわずかに緩んだ。
「それはね、本当にその通りだよ。吸血は――ただ血をもらうんじゃない。混じり合う、ってことだから」
りょうちゃんも、元貴の手を優しく包む。
「俺たちの匂いとか、鼓動とか、心の波みたいなものが……もう、混ざり合ってる。きっと今日から、いろんなものがちょっとずつ変わっていくよ」
「……変わる?」
「例えばさ――」
りょうちゃんが耳元に顔を寄せる。
「俺たちのそばじゃないと、安心できなくなるとか」
ぞくっと、首筋をなぞるその声に、鼓動が早まる。からかいに似た声音なのに、その通りになりそうな気がして、元貴は抗うように目を逸らした。
けれど逃れられない。
背後からそっと回された若井の腕に、ふわりと体ごと抱きしめられて、元貴はゆっくりと脱力する。
「もう、離さないから。俺たちは、元貴を選んだんだよ」
若井の声が低く、静かに落ちてくる。
「そして――元貴も、俺たちを選んだ。そうでしょ?」
その言葉に、否定の余地なんてなかった。
体も、心も、もう彼らの温度なしでは満たされなくなっていることに、元貴は気づいていた。熱の余韻は、まだ脈打つように体の奥に残っている。そのたびに、ふたりのことを思い出す。指の感触も、唇の熱も、首筋に刻まれた名残さえ――もう、切り離せなくなっていた。
これは血の契約じゃない。
欲の根に染み込む、静かで甘美な呪いだ。
また、あの時間がやってくる。
首筋がざわざわする。皮膚の下の血が、彼らを求めて震えているみたいに。
「元貴……いい?」
りょうちゃんの囁きに、元貴はかすかに首をすくめた。
逃げたいわけじゃない。けれど、抗いたくなる。吸血は、ただ痛みを伴うものだと思っていた――最初の一度目までは。だけど。
二度目からは、違っていた。
肌に触れる唇の温度も、噛まれる瞬間の圧迫感も、どこか身体の奥を刺激してくる。じわりと染みてくる熱に、どうしようもなく反応してしまう自分が、たまらなく恥ずかしいのに。
「ん……っ」
りょうちゃんが、やさしく首筋に舌を這わせたかと思うと、かすかな痛みと共に、鋭く歯が沈んだ。ぞくり、と背筋を電流が走る。
けれどその感覚は、決して「苦痛」とは言えなかった。
むしろ、心の底をくすぐるような甘さがある。血を吸われているはずなのに、身体の奥からじわじわと何かが湧き上がってくる。熱くて、くるしくて、でも気持ちよくて――。
「あ、……やだ、また……」
声が漏れる。唇を押さえても、止まらない。力が抜けて、りょうちゃんの腕の中に崩れ落ちそうになる。
「ほら……また気持ちよくなってる」
背後から、若井が囁くように言う。耳たぶに触れる吐息さえ、痺れるようだった。
「ほんとに正直だよね、元貴の体……。血だけじゃなくて、全部、吸い尽くしたくなる」
そんなふうに言われて、また体が震えた。羞恥と快感が入り混じって、どうしていいかわからなくなる。
吸われているのに、むしろ満たされていく。血が奪われているはずなのに、胸の奥が満ちていく。吸血という行為が、ただの捕食じゃないことに、元貴はとうに気づいていた。
――これは、交わりだった。
唇から牙が離れたとき、全身の力が抜けてベッドに沈む。
「……ん、……くるしいのに……気持ちいいって、おかしい……」
「おかしくなんかないよ」
りょうちゃんが、汗ばんだ元貴の額に口づける。
「吸われるたびに、俺たちの痕が元貴の体に残ってく。血も、感覚も、もっと深く結びついてく……それが吸血行為だよ」
「……やだよ……こんなの……やみつきになっちゃう……」
必死に言葉を吐くけれど、すでに心も体も、彼らに縛られてしまっている。もう抜け出せない。吸われるたびに溺れて、求めて、快感に震えて――そんな自分が、確かにここにいた。
恍惚とした意識のなかで、元貴は思った。
もう、戻れない。
それから何度、彼らに血を吸われただろう。
夜が来れば、首筋に牙を立てる。体温が下がるたび、意識はとろけるように熱を帯びていく。
最初は怖かった。痛みに耐えることしかできなかった。でも今ではもう――。
牙の感触に、背筋が自然と震える。首筋を舌でなぞられただけで、じわりと下腹に甘い疼きが広がるようになっていた。
「……っ、ぁ……また……きちゃう……」
そう呟いた瞬間、りょうちゃんの牙が深く刺さった。ずぷ、と血管を探るように沈んでくる感覚――たまらない。むしろその感触を「待って」しまっている自分がいた。
身体の奥のどこかがきゅう、と締まる。喉が勝手に喘ぎを漏らし、指先にまでしびれるような快感が波のように押し寄せてくる。
「元貴、こっち向いて」
若井の指が顎をとらえる。目が合った瞬間、ぞくりとした。彼の目は真紅に染まり、完全に「人ならざる者」としての本性を隠していなかった。
それでも、怖くなかった。いや――違う。
怖いと思うほど、心が震えるほど、その目に呑まれたいと思ってしまう。支配されたい、征服されたい。そう願ってしまう。
「人間としての理性」は、すでに溶けかけていた。
若井の牙が反対の鎖骨のあたりに沈む。今度は痛みが先行したが、それも数秒と持たなかった。すぐに快感が追い越し、痺れが体中に広がっていく。
「はぁ、……だめ、もう、やだ、気持ちよすぎて……」
「元貴……全部、俺たちのものにしていい?」
甘く、ねっとりとした問いに、元貴は言葉を出せなかった。ただかすかに首を縦に振ると、二人の牙が同時に深く沈み――
視界が白く弾けた。
痛みも、羞恥も、快楽も、何もかもが混ざり合って、元貴はついに、理性の最後のひとかけらすら手放した。
体は完全に蕩け、血を吸われるたびに、魂ごと啜られているような快楽に満ちていく。
「……ん、あぁ、……もっと……もっと吸って……」
かつて決して口にしなかったはずの言葉が、甘い声に変わって勝手にこぼれる。
――もう、完全に虜だ。
二人に血を与えるたび、自分は空っぽになる。でも、その空虚を満たしてくれるのも、また彼らだけだった。吸われるたびに依存して、望んで、堕ちていく。
夜の支配のなか、元貴は静かに、けれど確実に、「人間」ではなくなりつつあった。
気づけば、もう何度目かもわからない吸血のあと。
首筋から鎖骨、胸元にかけて、じわりと血がにじんだ跡がいくつも残っていた。甘噛みのように浅いものもあれば、明らかに深く牙を立てられた痕もある。それらすべてが、肌に熱を孕んで疼いていた。
――おかしい。
こんなのおかしいのに……。
胸の奥で、かすかに叫ぶ自分がいる。
「このままじゃだめだ」
「人間としての自分が壊れていく」
確かに、そう思っているのに。
「…あっ、やだ……」
絞り出すような声だった。
けれどその声は震えていて、拒絶とはほど遠い響きだった。
首を差し出すように背中を仰け反らせている自分に、気づかないふりをしていた。
「元貴、ほんとにやなの?」
りょうちゃんの指先が喉元をなぞり、ゆっくりと耳元に息を吹きかける。
「こんなに……感じてるくせに」
嘲るような、でもどこか甘やかすような声音に、思わず喉が震える。
違う、と言おうとしても、唇が開かない。
代わりに震えた吐息が漏れるだけだった。
「まだ……ほんの少し、正気があるんだね」
若井の声が低く囁かれる。
彼の手が頬をすくい上げ、強引に視線を絡めてくる。
「でもそれも、もう……すぐなくなるよ?」
その言葉と同時に、牙が再び肌を割いた。
「だめっ……っ」
そう言ったはずだったのに、口からこぼれたのはかすれた喘ぎだった。
ぞくん、と背筋に走る快感。喉の奥が熱くなり、下腹が疼く。
――気持ちよくなんて、なっちゃいけないのに。
そう思うたびに、体の奥の方がそれに反発するように熱を持つ。
吸われるたび、じわじわと深く、自分が壊れていく。
「ほら、気持ちいいんでしょ。もっと楽になって、元貴」
囁きが脳を溶かす。
手首をつかまれ、さらなる快感の渦へと引き込まれる。
「……やめて……ほしいのに……っ」
その言葉に、若井が優しく笑う。
「なら、ちゃんと“嫌だ”って言ってごらん。
俺たちを拒絶できるなら――ね?」
理性と快楽の狭間で、心が悲鳴をあげる。
なのに、また次の瞬間には、快楽に震える自分の体が、彼らの牙を求めている。
逃げたくて、抗いたくて、でも――
抗うにはもう、心が甘く蕩けすぎていた。
薄暗い部屋の中、吸血の跡がまだ熱を帯びた肌に触れるたび、元貴の胸はドクンと高鳴った。
どこか恥ずかしいのにしかしそれが嘘のように体は正直に反応してしまう。
若井がゆっくりと距離を詰める。
「ねえ、元貴、怖がらなくていいんだよ? もっと俺たちを信じて」
りょうちゃんもそっと肩に手を置き、柔らかな目で見つめる。
その視線に、元貴の心はますます揺れ動いた。
「……わかってる、でも……」
恥ずかしそうに俯いた元貴の唇が、震えながらも少しだけ開く。
「…もっと、してほしい……」
その言葉に二人の吸血鬼は優しく微笑んだ。
若井がそっと首筋に唇を寄せると、元貴は身体を震わせながらも目を閉じて甘い痛みを受け入れた。
「そう、いい子だよ」
りょうちゃんが指先に自分の唾液を垂らすと服の中に手を入れてきた。指先が胸を滑り、ローションのように濡れた感触が元貴を包み込む。
元貴は顔を赤らめながらも、自ら唇を噛み締めてこう囁く。
「…もっと…触って……」
それはもう拒絶ではなく、甘えと欲望の告白だった。
二人の視線が一層熱を帯び、元貴の恥ずかしさを弄ぶように寄り添う。
「わかった、元貴の望み、叶えてあげる」
彼らの冷たくも熱い愛撫が、ゆっくりと、しかし確実に元貴を深淵へと誘っていく。
元貴がそっと首を差し出すと、若井の冷たい唇が再びその柔らかな肌を捉えた。吸血の瞬間、甘くも鋭い痛みが走り、体中に熱が巡るのを感じる。
「元貴、怖くないよ。もっと感じて…」
若井の囁きに、元貴は目を閉じ、体を預ける。りょうちゃんも優しく抱きしめながら、指先で身体のあちこちを撫でていく。指先の感触が元貴の肌を滑り、その冷たさと温かさが交錯して、羞恥と快感が波のように押し寄せる。
「もっと…もっと欲しい…」
元貴は恥ずかしそうに、でも確かに求める言葉を零した。
若井がゆっくりと体を重ね、りょうちゃんは背後からしなやかな手を伸ばす。二人の巧みな愛撫に、元貴は徐々に理性を手放していった。
「大丈夫、君が望むままにしてあげる」
二人の吸血鬼に包まれて、元貴は甘く蕩けていく。初めは恥ずかしさに震えていた声も、やがて甘い喘ぎ声へと変わり、深く深く彼らの愛撫に溺れていった。