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同時刻、波月洞ー
羅刹天は巨大な怪物に見覚えがあった。
「どっかで、見た事があんだよな…。どこだったかな…。」
「それって、重要な事なのか?羅刹天…。」
羅刹天は法明和尚の言葉を無視し、考え込んだ。
「思い出した、貴様…。犬神か。」
「犬神?何だそれ。」
羅刹天の言葉を聞いた悟空は、そう尋ねた。
「犬神は強力な呪詛を持っていて、取り憑いた人間を呪い殺してしまう憑き神だ。封印されていた筈だが、お前が解いたのか、牛魔王。」
牛魔王は羅刹天の問いに答えた。
「正解。俺の血って、何でも出来ちゃうみたいでね?犬神の封印も簡単に解けたよ。」
「恐ろしい男だな、お前。ますます、戦ってみたくなった!!」
カチャッ。
羅刹天は刀を構え直し、走り出した。
「あ!?羅刹天!!待て!!」
「おらぁあぁあ!!」
法明和尚の言葉を無視し、羅刹天は犬神に突っ込んだ。
「グァァァァァアァア!!!」
犬神は羅刹天に向かって、大きな腕を振り落とした。
ダンッ!!
ドゴォォーンッ!!
羅刹天は華麗に攻撃を交わし、犬神の脇腹に刀を突き刺さした。
グシヤァァァア!!
「無茶しやがって!!」
パンパンッ!!
法明和尚は霊魂銃を構え、弾を何発か放った。
「グァァァァァアァア!!」
犬神は叫び声を上げ、羅刹天を掴もうとするが、羅刹天は続けて犬神の体を斬り刻む。
そのまま飛び跳ね、牛魔王に向かって刀を振り下ろす。
ビュンッ!!
キィィンッ!!
「可愛い顔してんのに、戦い方はエグいねー。血塗れじゃん。」
牛魔王は羅刹天の攻撃を止めつつも、容姿を見て言葉を放った。
羅刹天の体や髪には犬神の体から出た返り血で真っ赤になっていた。
「強い奴をぶっ殺すのが俺の喜びなんだよ。強い奴を倒した奴が最強だろ?」
「シンプルで良いね。俺の物になる気はない?」
牛魔王はそう言って、羅刹天に近寄った。
「牛魔王!?何を言ってるんだ!?」
牛魔王の言葉を聞いた法明和尚は、驚きのあまり声が出てしまっていた。
「お前にその女は扱えねーぞ、牛魔王。」
そう言ったのは、悟空だった。
「あははは!!面白い事を言うなぁ?牛魔王。」
ズシャ!!
羅刹天は刀の先を牛魔王の顔面に向かって、突き刺さす。
だが、牛魔王は顔だけ逸らし攻撃を避けた。
「舐めてんのか?お前。俺は誰ものにもならぬゆえ、お前の言葉は俺を愚弄していると捉える。」
「その割には、悟空には懐いてるみたいだけど?」
「それはそうだろ。お前よりも良い男なんだからな?俺は悟空の事は好きだぞ。」
「へぇ。」
「っ!!避けろ!!羅刹天!!」
牛魔王の様子がおかしいと判断した悟空は、羅刹天に声を掛ける。
「っ!!」
ビュンッ!!
グサッ!!
羅刹天の体に黒い影が突き刺さった。
牛魔王の影が大きくなり、槍の形に変化し羅刹天の体を貫いた。
「ガハッ!!」
羅刹天の口から血が吐かれた。「羅刹天!!」
法明和尚は羅刹天に近寄ろうとするが、犬神が拳を振るう。
「痛ってぇな、糞が。」
ズシャ!!
体に刺さった影を抜き、刀を構える。
「やっぱり、傷はすぐに塞がるか。」
「ハッ、俺は最強だからな。」
スッ!!
牛魔王の背後から沙悟浄が気配を消しながら現れた。
羅刹天が牛魔王に近付いたのは、沙悟浄が背後から近付いたのを悟られないように話をしていた。
沙悟浄は鏡花水月を牛魔王の背中に向かって、振り下ろした。
キィィンッ!!
「「っ!?」」
羅刹天と沙悟浄は驚いた。
牛魔王は沙悟浄の方を振り返らずに、鏡花水月の刃を影を操り受け止めた。
「何となくは、読めていたけど。悟空から気を逸らせようとしてんだろ?残念。」
牛魔王には、羅刹天と沙悟浄の思惑は読めていた。
丁達の洗脳を解く為に、悟空は牛魔王と戦えない状態だった。
その為、牛魔王を悟空に近寄らせないように戦いをしていた。
ビュンッ!!
牛魔王は悟空に向かって、影を飛ばし、自分自身も影の中に入った。
「しまった!!あの野郎、悟空の所に向かって行った!!」
羅刹天の言葉を聞いた法明和尚は霊魂銃を構え、走り出した。
「影を撃つぞ。」
カチャッ。
パンパンッ!!
ビュンッ、ビュンッ、ビュンッ!!
牛魔王は霊魂銃の弾を、影の姿で華麗に避けた。
「悟空!!そっちに行ったぞ!!」
沙悟浄の声を聞いた悟空は、丁達に背を向けた。
「俺の側を離れんじゃねーぞ。」
シュルルッ。
悟空はそう言って、如意棒を振り体勢を整えた。
「どうして、貴方は…。僕達を助けようとするんですか。」
丁は悟空に尋ねた。
「お前が俺の身内だからだ。」
「カッコイイねぇ、悟空。」
ビュンッ!!
影の中から現れた牛魔王は、黒い刀を持ち悟空に向かって振り翳した。
キィィンッ!!
「俺を殺せるのはお前だけだよ、悟空。そして、お前を殺せるのも俺だけだ。」
「気色悪い事を言ってんじゃねぇよ。」
キィィンッ!!
悟空は牛魔王の刀を弾き、如意棒の長さを長くし振り回した。
ビュンッ!!
牛魔王は軽々と如意棒を避け、影を異様な形に変形させ、悟空に飛ばす。
「丁達がお前の事を思い出せる事はないよ。忘れてしまっているからね。」
「お前等が記憶を閉じ込めただけだろ。」
「グァァァァァアァア!!!」
犬神が悟空に手を伸ばした。
「させるかよ。」
タタタタッ!!!
シュシュシュッ!!!
沙悟浄は鏡花水月を構え、犬神の体を斬り付ける。
「グァァァァァアァア!!」
「はぁ!!」
羅刹天は太刀を大きく振り翳し、地面ごと刀を叩き付けた。
ドゴォォーンッ!!!
丁ー
あの人の背中から目が離せなかった。
胸が締め付けられて、苦しい。
あの人が僕の額に手を付けた瞬間、記憶が流れ込んで来た。
僕はあの人の後ろを歩いていて、その背中をずっと見ていたかった。
闘技場で会った時から、僕はこの人から目が離せなかった。
目の前で激しい戦いが行われている。
恐れていた牛魔王よりも、光を放っているあの人の方が…。
「丁、お前の主人はどっちか分かってるよね?」
「っ!?」
いつの間にか牛魔王が、僕の目の前に立っていた。
「か、頭。」
李が不安げな声を出して僕の名前を呼んだ。
僕は鎌を掴み、李を後ろに隠す。
この人は、僕達の王じゃない。
それだけは確信している事、そして僕は李達の頭だ。
「何、その目。」
牛魔王は僕の目を見て、冷めた表情をした。
「丁だけじゃない、お前等もなんだ。」
胡と高も僕と同じ気持ちのようで、牛魔王を尊敬の眼差しで見れなくなっている。
「牛魔王様…いや、牛魔王。僕達は貴方を主人だと思っていません。李を食べようとした貴方を、僕は許せません。」
「ッチ。どいつもこいつも、思い通りに行かない奴等だ。大人しく言う事を聞いておけば良いんだよ。」
ゴゴゴゴゴゴゴッ…。
牛魔王の影が大きくなった。
「禁。」
ジャキンッ!!
目の前に大きな鎖が現れ、牛魔王の体を拘束した。
「何、お前。陰陽師にでもなったつもり?悟空。」
「使える物は何でも使う。」
「あの爺さんみたいな事を言うな。」
「あ?テメェが爺さんの事を口にするな。」
悟空はそう言って、牛魔王を睨む。
ズキンッ、ズキンッ!!
「思い出せ、本当の王は誰だ。」
僕の声が頭に響く。
「まぁ、良いや。コイツ等、俺に口答えするし殺しても良いか。」
シュッ。
パリーンッ!!
見えない速さで、影が鎖を砕いた。
「お前の大事な物は全て壊す。あの時の快感をもう一度、味合わせてくれよ。」
牛魔王はそう言って、ニヤリと笑った。
「なら、死ね。」
ズシャッ!
一瞬にして、牛魔王の背後に立っていた悟空は牛魔王の体を如意棒が貫いていた。
ポタッ、ポタッ。
「ガハッ!!」
ビチャ!!
牛魔王の口から血が吐き出された。
ブシャ!!
悟空の背中から赤い血が吹き出した。
「俺がタダで、背中を取らせると思ったのか?」
牛魔王が指で影を操作し、悟空の体を影が貫いていた。
見たくない。
見たくない、あの人がやられてしまう姿を…。
何で、そんな事を思う?
視界がボヤけた。
何で、泣きそうになっているんだ?
どうして、あの人が血を流す姿を見たくないんだ?
「やめて下さい!!牛魔王!!その人を傷付けるな!!」
そう言ったのは、李だった。
李は武器である鎌を持って、立ち上がっていた。
「あれ…?俺、何でこんな事を言ってるんだ?」
「李…、お前…。」
「ごめん、頭。だけど…、俺…。あの人がやられるのは嫌だ!!」
「俺も、あの人…が、傷付くのは嫌だ。」
「高…。」
シュルルッ…。
牛魔王の影が高と李に向かって、飛んで来た。
ビュンッ!!
パンパン!!
「大丈夫か、悟空。影は任せろ。」
法明和尚が影に向かって、銃弾を放っていた。
「法明和尚…。あぁ、三蔵のお師匠?」
牛魔王はゆっくり顔を法明和尚のいる方向に向けた。
「お前も邪魔だなぁ…。」
「それはお前の方だよ、牛魔王。良い加減、悟空に執着するのはやめたらどうだ。」
「あ?」
法明和尚は指を素早く動かし、牛魔王に向かって札をばら撒いた。
「悪いが、俺も自分の弟子の方が可愛いからね。弟子の邪魔をするお前は消させて貰う、爆。」
悟空は素早く牛魔王から距離を取ると、ばら撒かれた札が光り出した。
ドゴォォーンッ!!!
ドゴォォーンッ!!!
爆発?!
煙が立ち込める中、黒い影が伸びた。
「避けろ、おっさん!!」
「は、え!?」
ドンッ!!
悟空はそう言って、法明和尚の体を突き飛ばす。
ブシャァ!!
影の獣が悟空の腕を喰い千切っり、赤い血が吹き出した。
「悟空!!!」
沙悟浄が慌てて、悟空に駆け寄る。
僕は顔から血の気が引くのが分かった。
悟空の腕からポタポタと血が流れ落ちている。
「はぁ、はぁ、はぁ…。」
息が上手く吸えない。
こんな感覚は初めてだ。
嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ。
「か、頭!?大丈夫ですか!?」
胡が僕の顔を覗き込み、心配そうにしていた。
答えようと言葉を出そうとするが、言葉が出て来なかった。
ポンッ。
大きな手が僕の肩に触れた。
「大丈夫か、丁。」
顔を上げると、悟空が目の前にいた。
「心配すんな、俺は死なない。腕を見てみろ。」
言われた通りに、腕を見てみるとない筈の腕が再生していた。
「う、腕が。」
「生えた!?」
「「…。」」
李と胡と高も驚いていた。
「沙悟浄、牛魔王が来る。」
「了解。」
悟空と沙悟浄は体勢を整え、戦う体勢を作った。
僕達を庇うような体勢…。
「貴方に問いたい。敵である俺達を何故、庇うように戦ってくれるのですか。」
胡はそう言って、悟空に尋ねる。
「お前等の王だからだ。」
ドクン。
心臓が跳ね上がった。
ゴゴゴゴゴゴゴッ!!!
「行くぞ、犬神!!お前の相手は俺様だ!!」
「グァァァァァアァア!!!」
犬神と羅刹天は激しい戦いを続けていた。
「答えろ、丁。」
「えっ?」
「お前の王が誰なのか、誰がお前の王なのか言ってみろ。」
ドクン、ドクン、ドクン!!
パリーンッ!!
何かが、割れる音が頭と耳に響いた。
僕は、この人を知っている。
映像が頭の中に流れ込んで来て、欠けていた記憶が思いだされて行く。
ビュンッ!!
黒い影が伸びて、沙悟浄達の元に向かって来た。
僕達、黎明隊は貴方の為に作られた組織だ。
僕達の王は昔も今も変わらないー
「悟空!?避けないのか!?」
沙悟浄は微動だに動かない悟空に声を掛けてた。
悟空は静かにフッと笑った。
キィィンッ!!!
悟空の前に鎌を持った丁、その周りには李や胡、高が悟空の周りに立ち攻撃を受け止めていた。
「丁達!?」
沙悟浄は丁達の行動を見て驚いた。
「はっ!!」
キィィンッ!!
影を弾いた丁は、悟空の方に振り返り膝を付いた。
ザッ、ザッ。
丁の後ろで李や胡、高も跪く。
「我らの王は貴方だけです、若。僕達は、ずっと貴方に会いたかったんですよ…?若。」
「思い出したのか!?毘沙門天の術を解いたのか!?」
丁の言葉を聞いた牛魔王は、目を見開いた。
「黎明隊はアンタの為の隊じゃない、若の為の隊だ。僕達は若の言葉で、術を解いた。牛魔王、アンタは僕達の王ではない。僕達は若の為に死に、若の為に忠義を尽くす。若、ご命令を。」
丁は頭を下げたまま悟空に言葉を放った。
「俺の為に生きて、俺の為に死ね。俺が死んで良いって、言うまで死ぬな。そして、共に生きるぞ。」
「わ、若…。俺達を許してくれるんですか!?こ、こんな俺達を…。」
李は泣きながら悟空に尋ねた。
「お前達を許すと決めたのは俺だ。俺の為に役に立て、李。役に立てるよな、李、胡、高。俺の目的の為に働け。」
悟空の言葉を聞いた丁達は立ち上がり、武器を手に取り言葉を放った。
「「「「全ては御身の為に、御意。」」」」」
毘沙門天の術を解いた丁達は、牛魔王に向かって行った。