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魂
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kurara
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うわああ、元貴の体調の異変がじわじわと深刻になってきてて胸が締め付けられるよ…😭💔 涼ちゃんと電話で悩むシーン、お互い心配しながらも踏み込めないもどかしさがリアルすぎて切ない。それに「痩せた?」とかファンが気づき始めてるのもまた怖い…この違和感がどう転ぶのか、続きが気になりすぎるよ🥺💦
突発性難聴。
元貴はこれを患っている。
数年前のツアーの時もこの症状を抱えていた。
難聴の症状には種類が様々ある。
聴力低下。
耳鳴り。
閉塞感。
歪聴。
複聴。
同じ音なのに左右で違う高さの音が聞こえてしまう、音色がそもそも歪んで聴こえる、聞こえない、聞こえにくい。
そして副次的にめまいや、音源定位障害、音の発生源の位置が掴めなくなる、などが発生する。
症状の重さは人によって様々だ。
そして、その治療法は基本的にステロイド剤の摂取だが、これには副作用を伴う。
不眠。
イライラ。
焦燥感。
抑うつ。
動悸。
顔の浮腫み。
手の震え。
倦怠感。
など。
結局元貴はあの晩、おとなしく症状を認めた。
でも、ぶり返しちゃったけどすごく軽度なもので、もうステロイドが効いてきているから問題ないよ、と一蹴すると、楽屋を出ていってしまった。
実際、その真偽を確かめることは俺にはできなくて、その後ろ姿を見つめる他なかった。
そしてその夜、元貴からは『涼ちゃんには僕から話すから』とだけラインが来ていた。
涼ちゃんに隠してしまうんじゃないかとソワソワしたものの、一応、元貴から説明はあったようだった。
涼ちゃんからはすぐさま俺に電話がかかってきた。
『元貴は大丈夫、っていうけど、絶対大丈夫じゃなさそうに思えたんだけど!』
「うん…」
怒ったような、焦ったようなその声は心配そのもので、涼ちゃんは1人で電話の奥でうんうんと唸っていた。
『いつからだったんだろ、なんか普段ならすぐ相談してくれる気がするのに…』
「そうなんだよね…」
『まぁ、でも元貴の気持ちもわかるよ…公開してるツアーのスケジュールとか、テレビ収録とか、ドラマとか、主題歌の提供とか…なんか、もうずっとずっと先までの予定が決まってて….どれもとっても大事だもん』
その通りだった。いつの間にか俺たちの予定は不眠とまでは言わないが不休であり、2時に寝て5時に起きなきゃ行けない、なんてことはザラな数年間だった。
ここ数年はさらに曲のリリースがいろんな企業、ドラマ、映画のテーマ曲だったりもして、”ミセスグリーンアップル”として決められる時間の範囲なんてほぼなく、納期というか、決められた中でのアウトプットがマストで発生していた。
そして、FC会員数の伸びやテレビへの出演量の増加を考えても、元貴のようにビジネスについての感覚がない俺でもわかるくらいに、いま、”波に乗っている”のだ。
「かといって、じゃあそのままでいいよ、とはならないよ…心配だし…」
『うん…それは、僕もそう思ってる……』
電話を繋げたまま、俺たちの間に沈黙が降りた。
どうしたらいいのか、きっと誰もわからなかったからだ。
元貴のしたいこと。
元貴の”ミセスグリーンアップル”。
元貴の体。
それを、俺のエゴで、口出していいのか、それを考えて結論を出すのは、あまりにも難しかった。
元貴はその日以降も、いつも通り美声を轟かせ、素晴らしい曲を出してきた。
ただ、ライブ中に俺の手元を見る癖はいまだに残っていた。
でも、元気そうに元貴はケラケラと笑って、表面的にはいつも通りに見えた。
元貴の言う通り、軽い症状で、すぐに改善したのかもしれない。
ライブ中に俺の手元を見るのは、リスクヘッジなのかもしれない。
でも、違和感は日に日に大きくなっていった。
そう思って2週間ほど経った。
楽屋に入ってきた元貴の目を見てびっくりした。
目がめちゃくちゃ赤くて、くまもとんでもないことになっていた。
「ちょっと元貴…ちゃんと寝れてる?」
少し遅れた反応で俺の方を見てきたが、まぁそりゃあギンギンの目をしていて、ちょっと怯みそうになる。
「昨日何時くらいに寝たの」
「んー….覚えてない」
「ちゃんと寝れてる?」
「寝てる寝てる、まぁ寝るの下手くそだけども」
「目、すんごい赤いよ」
「…花粉かなぁ…っと、ごめん、ありがとう」
話してる途中によろけた元貴を支えると、なんだか少し痩せて感じられた。
元貴からはいつも香ってくる香水の香りがしなくて、香水をつけ忘れたのが分かる。
心配して色々言いたくなる気持ちが押し上がる。でも確かに多忙なのも、元貴が不眠気味なのも、それは周知のことなのだ。
「今度いい枕買いに行こうよ一緒に」
「……ん、行きたい」
元貴はよろけた時に俺に抱かれた体勢のまま、俺に体の体重を委ねた。
くたっと胸元に顔を擦り寄せて、少し目を閉じた。
何故か元貴はギュッと俺のシャツを握って、しばらくそうしていた。
『もっくん痩せた?』
『なんか最近もっくんのストーリーが謎ストーリー増えて心配』
『今日のテレビミセスのもっくんめっちゃテンション高かったなwwwwwほんまここおもろい』
元貴の違和感は日に日に膨らんでいるようで、jam`sのネットの反応にも表れるようになっていた。
ただ、なんとなく不眠に加速がかっていそうなのと、ふらつき、たまに見せる酷く暗そうな顔と、異常なまでにテンションが高い日もあって、それらは全て元貴の衰弱を示していた。
もう、俺と涼ちゃんの限界が来ていた。
こんな姿の元貴は見てられなかった。
「もう、元貴ちょっと休もうよ」
「なぁに言ってんの、大丈夫だよ」
「いや、もう、さすがに心配になるから…顔色すごい悪いよ」
「すっぴんだからでしょ、何よりいつ休むのよ、休めないでしょ、ツアーあるよ」
それを言われて俺も涼ちゃんも口を閉じる。
そうだ、本当に、スケジュールの空きなんてほとんどなかった。
「でも、さすがに!」
「っからぁ、大丈夫だって!」
元貴の大きな声が割って入って、元貴が自分でびっくりしたみたいに口を抑えた。
「…ごめん、いやその、ほんと、大丈夫よ。いつもの不眠なだけ、慣れてるから…」
元貴はそのまま語尾を濁したまま、逃げるようにして楽屋から出ていってしまった。