コメント
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悲しい...Σ੧(❛□❛✿) ところで小説の書き方上手いですねッ⁉︎プロですか...?..??y
※注意※
・本作はwrwrd様の御名前をお借りした二次創作です。御本人様とは一切関係がありません。
・スクショ、拡散等はお止め下さい。
・私情により前触れなく消す可能性があります。
・エセ関西弁。
※本作に含まれる要素※
軍パロ、バリバリの死ネタ(grさんとtnさん以外亡くなっている)、全体的に陰鬱な空気、憔悴しきって病んでるgrさんとtnさん、二人が墓の前で話しているだけ
なんでも114514な方のみどうぞ↓
地獄を想う
それは手足が悴むような厳寒な日であった。今にも雪降りそうな鉛色の雲が空を覆う中、グルッペンはトレンチコートを靡かせ一本の草道を歩いていた。
血色の無い肌とは裏腹に耳と鼻が赤く痛む。肺をも凍らすような冷気を掻き分け平坦な一本道を歩いていると、徐々に数多の墓石が姿を表す。グルッペンの目的地、そこは散華した者が眠る広大な墓地であった。
青い芝生を踏み締めて、静閑な墓地を歩く。規則的に並ぶ墓石に彫られた名前を一つ一つ目に焼きつけながら歩いていると、彼等が生きていた頃の姿が脳裏を過ぎりグルッペンはやるせない気持ちに陥った。
そうして暫く墓石を眺めていると、ふと芝生を踏み締める音がグルッペンの背後から聞こえた。隠す気もなく徐々に近付くその音の方へゆっくり振り返ると、そこには赤いマフラーを巻いた右腕が佇んでいた。
もう随分と憔悴したような面持ちで、ぼんやりとグルッペンを見つめていた。
「なんだ、お前も来ていたのか。トントン」
「あぁ、まぁ⋯ 」
グルッペンが向き合うと、トントンはあからさまに視線を近くの墓石へ落とした。故に視線が交わることは無く、グルッペンが一方的にトントンを見つめる形になった。
憂い気に伏せられた紅玉に睫毛の影が落ちている。どこか儚さすら感じるそれを、グルッペンはしげしげと見つめていた。
「⋯墓石を見つめてるとな、思い出すんよ」
やがてトントンはぽつりと呟いた。もうあの厳格な彼は見る影もない、蚊の鳴くような弱々しい声であった。
「思いだす⋯」
「あぁ。生きてた頃のアイツらを」
「⋯⋯⋯。」
「そうすると、なんか胸が詰まって⋯⋯ もう生きるのを諦めたくなんねん」
そこまで言うと、トントンは固く目を閉ざした。
眉間に皺が寄っている。きっと彼の瞼の裏には今、先逝った戦友とのかけがえのない思い出が映し出されているのだろう。グルッペンはなんだかたまらない気持ちになった。
「⋯私もだ、トントン」
「⋯⋯⋯。」
「ふとした瞬間に、どうしようも無い後悔と無念が襲ってくる」
上に立つ者として、戦場を駆け抜ける彼等を止めることは決して許されない。
グルッペンは大佐として、トントンはその補佐として彼等を奮い立たせ、その命が尽きるまで大義の為に鉛玉飛び交う戦場を少しでも長く走らせ続ける。それがグルッペンとトントンに与えられた使命であった。故に可愛いからと長年連れ添った仲間達を安全圏に置くことなど許されない。そんなのは先逝った戦友に顔向けできないし、何より彼等自身が兵士の矜恃としてそれを望んではいなかった。そして彼等は皆兵士として散った。正しく、散った。
“彼等は混沌とした戦場で、清く気高く逝ったのだ”
上の人間は弔いの言葉をそう締めくくった。それから二度としてこの墓地に赴く姿を見ていない。この世界、所詮そんなモンである。しかしそんなモンと唾を吐き捨て今の立場から降りるには、二人は色々と背負いすぎた。先逝った仲間の魂とか、想いとか。もう耐えられないと兵士を辞め自分だけが悠々自適に生きていくなど、何よりもグルッペン本人が赦せなかった。きっとトントンもそうなのだろう。
罪悪感という底なし沼に落ちた二人は贖罪の為に兵士を続けた。既にボロボロの心身を際限なくすり減らし、亡霊となった彼等を背負って屍の道を歩いていく。どこまでも、どこまでも。いつか天が赦しを与え、正しい死を迎えるその時まで。
「グルッペン、」
「⋯なんだ」
「くるしいなぁ」
グルッペンは下唇を噛んだ。込み上げる何かを抑えるために。
「⋯大丈夫だ」
厭世が滲むかつては荘厳であった右腕の顔を見つめながら、グルッペンは言い聞かせた。
「俺たちもいつか必ず地獄に落ちる」
自分にもそう、言い聞かせた。
地獄は救いだ。罰を希求する俺らにとってのこの上ない救い。そして先逝った仲間とまた会える、唯一の桃源郷。二人が今何よりも信じ想っているものは、ありもしない地獄であった。
「⋯そうか。はよ落ちれるとええなぁ、お互い」
何もかもすり減ってしまった彼はうわ言の様に呟く。それをグルッペンは悲痛な面持ちで聞いていた。彼も、己も、この身を引きずるだけの人生が続く。かつての思い出に首を絞められながら、尚も贖罪の為だけに生きていく。それは悲しい程に独り善がりで、なんの意味も無い。そう分かっていても、もうどうしようもなかった。
やがて刺すような冬風が辺りに吹き抜ける。もう身を寄せ合うことも出来ない我々を嘲笑うかのように、泣け無しの体温を奪っていく。
このまま仲良く凍え死ねば、彼等のところにいけるのだろうか。そんな無意味な事を夢想しては、どうしようも無い虚無感に襲われた。