朝の静けさの中、すちはみことを抱き寄せたまま、ふっと微笑んだ。
その笑みは優しいのに、どこか底の見えない影がある。
「ねぇ、みこと。」
「……ん?」
首を傾けた瞬間、すちはみことの頬を包み、真っ直ぐに視線を絡めた。
「学校、もう行かなくてよくない? 退学して、ずっと俺の家にいてよ」
穏やかな声なのに、逃れられない重さがあった。
みことの心臓がどくん、と跳ねる。
「え……? 退学って……」
戸惑うみことを見つめながら、すちはふわりと笑う。
優しい表情なのに、その瞳はどこか試すよう。
「嫌なら、いいよ? ……その代わり、俺はみことから離れるけど」
その一言で、みことの表情が一瞬で崩れた。
「っ、やだ!!」
みことはすちの腕を掴み、必死にしがみつく。 目には涙が滲み、声が震えていた。
「離れないで……! すちがいないの、無理……俺……すちがいなくなるくらいなら……」
喉がつまって言葉にならず、ただ首を振り続ける。
「すちの言う通りにするから……っ… 退学でもなんでもするから……! 一緒にいて……!」
その言葉に、すちは静かに笑った。
優しさでも安心でもない、 まるで“みことの反応を確認して満たされる”ような笑みだった。
すちはみことの頬を親指で撫で、囁く。
「そう。……やっぱり、俺がいないとダメなんだね」
言葉は甘いのに、絡め取るような響き。
みことはすがりつくようにすちの胸に顔を埋め、震えながら息を吸った。
「……すち……いなくならないで…… ずっと一緒にいて……」
すちはその頭をそっと抱きしめ、低く囁く。
「大丈夫。 素直なみことなら、ちゃんと側にいるからね」
みことの心臓は早鐘のように打ち、 安心と恐怖と依存が渦巻きながら胸を締めつけていた。
「みこと、今日の予定……俺が全部考えといたから。 みことは何もしなくていいよ」
「え……? でも、……」
「いいの」
すちはみことの唇に指を当て、そっと制する。
「考えるの、しんどいでしょ? 俺がぜんぶ管理してあげる方が、みこと楽じゃない?」
その言い方は優しいのに、否定を許さない柔らかさを含んでいた。
みことは胸がじんと熱くなり、言い返す気力を失う。
「……うん。すちが決めてくれるなら……」
即座にすちは嬉しそうに目を細め、みことを抱き寄せる。
「いい子。 じゃあ、朝は俺が作るから、みことはベッドで待ってて」
朝食を作り終えたすちは、みことの席の前にそっと置き、首を傾ける。
「これね、みことが好きな味に合わせてある。 ちゃんと俺が栄養も考えたよ」
「すち……そんなに……」
「だって、みことの身体、俺が一番わかってるから」
皿を手渡しながら言うすちの声は甘く、どこか誇らしげ。
みことの頬は自然と熱くなった。
食べ終わると、すちはみことのスケジュール帳を持ってきて言う。
「みことの退学、連絡しておいたからね 」
「えっ……勝手に……?」
「みことの為だから。“勝手”じゃないよ」
柔らかい口調なのに、揺るぎのない断定。
みことはそれ以上何も言えず、ただ胸がざわざわしながらも妙に安心してしまう。
「ほら」
すちはみことのスマホを手に取り、連絡の来た友人のメッセージを見せる。
「最近みことと遊んでないってさ」
みことが困った顔をすると、すちは微笑んで、みことの手を包む。
「無理して行かなくていいよ。 みこと、外に出ると疲れるし……俺と居る方が落ち着くでしょ?」
「……うん。すちと居る方が、安心する」
「でしょ」
すちは満足げに頬を寄せ、囁く。
「みことは、俺の事だけ知ってればいいんだよ。 他は全部、俺が守るから」
すちと暮らすようになってから、みことの日々は穏やかだった。 いや、穏やか すぎた。
すちはいつも優しくて、声も、触れる手も、みことの不安をすべて溶かしてしまうほどに甘い。
その甘さに包まれていると、みことは考えることをやめてしまいそうになる。
すちが隣にいるだけで、胸がふわっと軽くなる。
朝起きても、何も決めなくていい。
何を食べるか、いつ寝るか、外に出るか出ないか──
全部すちが『みことはこれがいいよ』と言ってくれる。
最初は少し戸惑っていたはずなのに、
気づけばその“決めてもらえる心地よさ”が癖になりつつあった。
ある日、すちは新しい服をベッドの上に置いていた。
みことの好きな色のふわっとしたニット。
「今日これ着よっか。みことに絶対似合うよ」
「でも……これ、いつもと違う気が……」
「大丈夫。俺が見て、可愛いって思ったんだよ?」
胸の奥がぎゅっとつままれるように熱くなる。
褒められ慣れていないみことは、それだけで抗う気力が薄れていく。
「……じゃあ、着る」
「うん、いい子」
この“いい子”の一言が、みことの心を蕩けさせる。
褒めてほしくて、安心したくて、 すちに合わせた方が幸せだと錯覚していく。
ある夜、みことは自分の胸の鼓動がやけに早いことに気づいた。
理由を考えてみても、答えはひとつだけ。
「すちがいないと不安」
すちがコンビニへ出ているわずか数分。
その間にすら胸の奥がざわざわして、
部屋の静けさが耐え難く感じられてしまう。
扉が開いてすちが帰ってきた瞬間、 肺に空気が戻るように息が楽になった。
「みこと、ただいま。」
「……すち」
声は震えて、みことは自分でも驚いた。
「え、どうしたの?そんな顔して」
「なんか……すちがいないと、落ち着かなくて……」
すちはほっとしたように笑みを深める。
「大丈夫。 みことを置いて遠くになんて行かないよ」
優しく抱きしめながら、小さな声で囁く。
「みことは俺がいないと不安なんだよね。
ちゃんと、知ってるからね」
その言葉に、みことの体から力が抜けていく。
“すちがいないと怖い”
そんな感情が次第に当たり前になっていった。
「ねぇみこと。友達が誘ってくれてたよね?」
「……うん。でも、あんまり行きたくない……」
「どうして?」
「すちと離れるの、やだ……」
自分の口から出てきた言葉に、みことは一瞬だけ戸惑った。 けれどすちは、優しく頭を撫でて微笑む。
「そっか。 みことが俺を必要としてくれるの、嬉しいよ」
その言葉を聞いた瞬間、 みことは自分の“選択”が正しいと感じてしまった。
すちがいればいい。他はいらない。
そう思った瞬間、心がとても軽くなった。
数週間が経つ頃には、みことの日常はすちの家の中だけで完結していた。
朝はすちが起こしてくれる。
ごはんも服も予定も、すちが全部決めてくれる。
みことはただ『うん』と言って従えば、すちは満足そうに優しく頭を撫でてくれる。
気づけば──
すちの手のひらの中が、みことの“世界全部”になっていた。
ある日、すちは珍しく用事で朝から出かけることになった。
「数時間だけ家を出るけど……大丈夫?」
ソファで膝を抱えていたみことは、
その言葉だけで胸の奥がぎゅっと締めつけられた。
「……すち、いなくなるの?」
「すぐ戻る。夕方には帰ってくるから。」
「……やだ……。行かないで……」
すちはみことの頬をそっと撫でる。
甘い声で、逃げ場のない優しさで。
「みこと。 俺がいない時間も、俺のことだけ考えて。ちゃんとできたらご褒美あげる」
その言葉が胸に染みこんでいく。
すちが行ってしまう不安よりも──
その言葉の甘さの方が強くなる。
「……わかった……。すちのこと考えてる……ずっと……」
すちは満足そうに微笑み、みことの額にキスを落とした。
すちが出かけてから少し時間が経った頃。
家の中は静かで、みことはその沈黙に押し潰されそうになっていた。
「……すち……」
名前を呼んだところで返事はこない。
でも、呼ばずにはいられないほど胸が苦しい。
みことは寝室へ向かい、 すちがいつも寝ているベッドの匂いに吸い寄せられるように近づいた。
シーツにも枕にも、 すちの匂いがまだあたたかく残っている。
「すちの……匂い……」
みことは震える手ですちの服を抱き寄せ、そのままベッドに潜り込んだ。
大きく息を吸い込むと──
胸が痛むほど恋しくなる。
「……会いたいよ……すち……」
服をぎゅっと抱きしめる。
その布越しに、すちの腕のぬくもりを探してしまう。
触れたい。
名前を呼んでほしい。
甘やかしてほしい。
みことの呼吸はどんどん浅くなり、
胸の奥が焦げつくような寂しさに変わっていく。
すちがいないだけで、何も落ち着かなくて、 身体の中の空っぽの部分が広がっていくみたいだ。
「……すち、どこ……帰ってきて……」
服を抱き寄せたままくるまり、
シーツの上で小さく身を丸める。
腕も、首も、腰も、 すちに触られていた場所が次々と疼き出す。
「……やだよ……すちがいいのに……」
みことはこらえきれず、 シーツに顔を埋めながら震えた声を漏らす。
寂しさで胸がいっぱいになって、身体が熱くて、 なのに抱きしめてくれる人はいない。
すちのいない部屋で、 すちの匂いに包まれながら、 みことはひとりでその寂しさを耐え続けた。
「……すち……帰ってきたら……ぎゅってしてね……」
涙でぬれた声は、静かな部屋に溶けて消えていった。
玄関を開けた瞬間、すちは空気の違いにすぐ気づいた。
静かなはずの部屋に、かすかな熱と湿った気配。
(……泣いてるな)
靴を脱ぎながら、ため息に似た薄い笑みが漏れる。
一人にしたらどうなるかなんて、最初からわかっていた。
寝室のドアをそっと開けると──
シーツが乱れ、みことがすちの服にくるまって震えていた。
赤くなった瞼。
浅い呼吸。
泣き疲れて眠ったのか、眠れていないのかすら曖昧な顔。
すちはドアの前で一瞬立ち止まり、
その姿をゆっくり眺めた。
(……可愛いな。こんなに俺がいないとダメなんだ)
ベッドへ歩み寄り、腰を下ろす。
みことの髪を指先で梳くと、すぐにぴくりと反応した。
「……すち……?」
かすれた声。
すちはその声だけで胸が甘く痺れる。
「ただいま。 みこと、俺がいなくて……寂しかった?」
その問いかけに、みことの瞳が一気に潤む。
「……すち……帰ってこなくて………っ」
泣きながらすちの服を握りしめるみことの手は震えていた。
すちはその手を包み込み、わざとゆっくり強く握り返す。
「俺のこと、考えてた?」
耳元で囁くと、みことは小さく震えた。
「ずっと考えてた…っ…すちがいないと……落ち着かない……」
「みことはもう、俺がいないとダメになっちゃったんだよね?」
否定できるはずもなく、みことはすちの胸に縋りつく。
「……うん……」
その素直さに、すちは優しく笑った。
「ほら、ちゃんと俺の方見て」
みことの顔を両手で包み、濡れた睫毛に触れる。
「泣きながらも待ってたんでしょ? いい子だね、みこと。ご褒美あげる 」
すちはベッドに腰を下ろし、みことを腕の中に迎え入れるように広げた。
「おいで。 俺がいない間に寂しくなった分、全部埋めてあげるから」
その声は甘くて、優しくて、逃げられない。
みことはほとんど反射のようにすちの胸へと倒れ込み、強く抱きついた。
すちは満足そうにその体を抱きとめる。
「 今日はずっと抱いててあげる」
すちの声に包まれながら、 みことはようやく深い呼吸を取り戻していった。
すちはその震える背中を、 ゆっくり、何度も、何度も撫で続けた。
──まるで
最初からこうなることを見越していたみたいに。
「泣き顔かわいすぎ……」
囁くと同時に、唇を重ねる。
最初は触れるだけのキス。
けれど、みことがぎゅっとすちの服を掴んだ瞬間、 すちはゆっくり口を開いて舌を滑り込ませた。
「ん……っ、すち……」
息が溶けるほど深く、みことの力は抜けていくばかり。
すちはみことの後頭部を支え、 何度も、何度も、 息を奪うような深いキスを繰り返す。
「 …ほら、もっとこっちおいで」
みことの腰を抱き寄せ、 胸に押しつけるように抱きしめながら、 角度を変えてまたキスを落とす。
「っ……ん、ん……っ」
甘く、くちゅ、と音がするたびに
みことは涙を浮かべた瞳で
ますますすちに縋りつく。
すちは舌を絡める深いキスをまたひとつ、 みことが呼吸を乱して身を震わせるまで。
「すち……すち…… 側にいて……ちゃんと触ってて…… 俺、すちの匂いないと……やだ……」
「いいよ。 俺に依存して。 みことは俺のだから」
すちはそう言って、 泣きながら甘えるみことを胸に抱えたまま、 頬、眉間、まぶた、唇へと 甘く柔らかいキスを際限なく落とし続けた。
すちに深く甘やかされ、 みことの呼吸は少しずつ熱を帯びていく。
涙で濡れた瞳のまま、 みことはすちの胸元にしがみつき、 震える声で囁いた。
「……すち…… お願い…… もう、さみしいの、やだ……」
みことはゆっくりと膝をすり寄せるように開き、 すちに触れてほしいと全身で訴える。
その仕草に、すちは一瞬だけ息を詰めた。
あまりに無防備で、 胸の奥が強く疼く。
「……そんな顔で頼むなよ。 抱きつぶしたくなるだろ」
低く掠れた声でそう囁くと、 すちはみことの細い身体を ぐっと腕の中へ引き寄せた。
逃げ場なんてひとつも残さない。
みことの背中に腕を回し、 腰ごと抱え込み、 ベッドに沈めるように――
「ん……っ、すち……!」
すちはみことの頬を片手で包み、 涙の筋をなぞる。
「 ……ほら、俺だけ見とけ」
囁きながら、 みことの唇に深く口づける。
舌を絡め、喉を震わせるほど濃く。
「っ……ん、ん……っ……すち……」
足が震え、腰が逃げるように揺れるみことを、 すちはさらに強く抱きしめる。
まるで腕の中に閉じ込めるように。
「怖いくらい可愛いよ、みこと。 こんな風に足開いて―― お願い、なんて言われたら…… 我慢できるわけねぇだろ」
耳元へ唇を寄せ、 熱い吐息を落としながら、 みことの腰に手を添えて 離れられないよう。
みことは震えながら、
でも確かに――
すちの腕の中で安心していた。
すちは、みことの震える体を抱き寄せ、ゆっくりと深く繋がるように体を重ねる。
みことは肩を震わせ、目を潤ませながらすちの名前を甘く漏らした。
「……すちの……きたぁ……っ♡」
その無自覚なほど素直な喜びの声に、 すちの胸の奥が一気に熱を帯びる。
「そんな顔……俺、抑えられなくなるって言ったよな?」
囁いた声が低く甘く震え、 次の瞬間、すちはみことの腰を捕まえて、深く強く抱きしめるように体を押し付けた。
みことの大好きなところを狙うように、 すちの動きは急に激しさを帯びる。
「すち……っ♡ …やっ…ぁっあっ…それ……っ♡す、ぐ…ぃっちゃぁ゙!!♡♡ん゙ぁ゙~~~!♡♡」
声が震え、背中が反り、爪がシーツを掴む。
当たるたびにみことの体はびくびくと跳ね、 息も声もまともに保てなくなっていく。
すちはみことの反応に溺れるように、 さらに深く甘く、逃がさないように抱き寄せた。
「もうイっちゃったの?可愛い。…そんな声出されたら……もっと欲しくなるだろ」
みことは泣きそうなほど嬉しそうに笑いながら、 すちにしがみついて体を預け続けた。
みことはすちに抱かれながら、 自分でも制御できないほど強い快感と安心に、 ゆっくり、ゆっくりと沈んでいく。
「すち……っ、すち……♡」
呼ぶ声は甘く震え、 涙の粒が目尻ににじむたび、 すちはみことの頬を指でそっとなぞり、 その表情を逃さず見つめる。
「みこと、愛してる…♡」
囁きが耳に触れるだけで、 みことの背筋はぞくりと震え、 脚がすちを求めるように絡む。
胸の奥が熱くて、息が浅くて、 どこにも逃げられない。
逃げたいとも思わない。
すちの体温、匂い、吐息、声、 触れてくる手の強さ、優しさ——
すべてがみことの思考を溶かしていく。
「……すち、すち……♡ 俺……こんな……っ……♡」
震える声でそう零すと、 すちはみことの顎を甘く掴み、 逃げられないように顔を近づけて言う。
「わかってるよ。 みことはもう——俺じゃなきゃダメなんだろ?」
その言葉が胸に落ちた瞬間、 みことは完全にすちに溶けた。
「……っ、うん……♡ すちじゃないと……いや……っ♡ すち……もっと、もっと……♡♡♡」
自分でも引き返せないほど甘い声で求め続け、 すちの腕の中で体を震わせながら、 ゆっくり、深く、確実に依存していく。
すちはみことの腰を強く抱き寄せ、 耳元に低く優しい声を落とす。
「大丈夫、 溺れていいよ。ぜーんぶ 、俺が受け止めるから」
その瞬間、みことは涙をこぼして微笑んだ。
すちに抱かれたまま、 心も体も完全に彼だけのものになっていった。
「ぁっぁっ♡でりゅ♡またぁっ!ぃくぃぐっ♡♡」
「おぐぅ♡♡ぃっちゃぁ♡ずっと……ィッてぅ♡♡♡」
「ひぁあっ♡♡ぃっしょっ、ゃぁっ♡♡」
「すち……やだ……っ、もう……っ♡ 離れたくない……すちぃ……っ♡」
「……すち……っ、好きぃ……っ♡ すち……だけ……っ、すちの声……欲し……っ♡」
「はぁ……っ♡ ……すち……♡ すち……っ、もぉ……無理……とけちゃう……っ♡」
「あっ♡へぇ…♡お゙ぉおお゙っ♡♡♡」
意識も声も、すべてすちの中に沈んでいく。
みことは完全にすちに依存し、 名前を呼ぶたびに甘く震え、 思考すらすちで満たされていった。
みことは、すちの腕の中でまだ呼吸の仕方を思い出せないまま、胸に額を押しつけていた。
身体の奥に残る余韻が波のように揺れて、思考を全部溶かしていく。
すちはそんなみことを逃がさないように、まるで壊れものを抱くみたいに背中を撫でる。
優しさなのに、逃げ道を塞ぐみたいな温度だった。
「ねぇ、みこと。離れられないね」
囁く声は甘いのに、どこか底が抜けていて、依存そのものの響きだった。
みことは瞼を震わせ、ぼんやりとすちを見上げる。
もう自分がどこまで堕ちたのかも分からない。
ただ、すちが触れてくれるなら、何でもよかった。
弱く手を伸ばして、すちのシャツをぎゅっと掴む。
「……すち、いなくならないで。 俺、もう……ひとりじゃ無理だよ……」
掠れた声で告げた瞬間、すちはみことを抱きしめる腕に力を込める。
みことの言葉を否定するでも肯定するでもなく、ただその依存を受け入れるように。
「うん、ずっといるよ 」
耳元でそう囁かれ、みことの全身がかすかに震える。 すちの声が胸の奥に沈んでいき、快楽よりも深い“支配”と“安心”が混ざって広がる。
二人とももう気づいていた。 この依存は止まらない。止めるつもりもない。
すちの体温に縋るように、みことは指を絡めて囁く。
「……すちがいれば、それでいい。… 壊れてもいい……」
その言葉に、すちは静かに微笑み、みことの頬に口づけを落とす。
「じゃあ、永遠に一緒だね。… 逃げないでね、みこと」
絡めた指は、もう誰にもほどけない。
2人はすでに狂っていた。
互いなしでは呼吸すらできないほどに。
その依存は、優しい檻のように永遠へと続いていった。
君が堕ちるまで__𝐹𝑖𝑛.
コメント
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初コメ失礼します! めっちゃいいですね!めっちゃ好きです!