俺と元貴の誕生日が近いのは、昔は嫌だった。俺の方が後だし、なんか元貴のオマケ感がある気がしてさ。いやそんなことはないんだろうけど、立て続けにお祝いすると、みんなが若干祝い疲れてる、みたいな、さ。
でも、今年だけは違った。俺の誕生日が、確実に、メインだった。
何故なら今年は、俺も元貴も二十歳を迎える年。そして、二十歳を迎えたら、俺たちは涼ちゃんを抱く。そういう約束を取り付けていたからだ。
「涼ちゃん、俺たち付き合って、もう半年くらいになるよね?」
クリスマスに三人で付き合い始めて、三月末には亮平くんの店で宣誓式までやった。
もうここまでしたら、後はセックスするだけ、俺も元貴もそう思っていたのに、のらりくらりと涼ちゃんに躱され、逃げられ続けていた。
今日は涼ちゃんの23歳の誕生日。俺たちは、思い切ってストレートにぶつけてみることにした。
「そうだね、なんかあっという間だったね。」
ニコニコと笑いながら、今年も俺が作ったケーキを頬張っている。口の端にクリームついちゃって、可愛いったらありゃしない。
いやいや、そうじゃなくて。いや可愛いんだけども。
「…だからさ、そろそろ…。」
俺が言うと、涼ちゃんが首を傾げる。
「まどろっこしいな。もういい加減セックスしよーぜ、涼ちゃん。」
俺の隣から、元貴が超ド級ストレートを涼ちゃん目掛けてぶん投げた。フォークを咥えたまま、涼ちゃんの顔がみるみる真っ赤になっていく。
「な…だ、ダメです。」
「は?! なんで?!」
「涼ちゃんしたくないの?!」
「いや………そういうわけじゃないけど…二人が、まだ未成年だから。」
「…は? お前までそんなこと…。」
元貴が、何か言いかけて、口を噤んだ。
あ、ニノ先生とキチクさんのことかな、と俺は前に元貴から聞いた話を思い出した。
その後も、頑として「二人が二十歳になってから。」と、お酒のCMみたいなことだけ繰り返して、涼ちゃんはまた、俺らを躱し続けた。
そんな日々も、今日でお終い。何故なら、本日、若井滉斗の誕生日をもって、元貴も俺も晴れて二十歳を迎えたからです!
もう、先月元貴が二十歳になってから、毎日圧がすごかった。
「おい、お前早く二十歳になれよ。」
「なんで誕生日こんな遅いの? 今日生まれたことにしろ。」
そんな、俺の過去を書き換えるようなことまで元貴は言ってきたりして、もう限界も近いな、と俺はヒシヒシと感じていた。
なんか元貴がかなりの巻きを入れて、俺の誕生日会を終わらせた。ねえ、酷くない?やっと俺メインの誕生日がきたと思ってたのに、絶対メインの夜ご飯より、この後のデザートの方に意識いっちゃってるやん。
ま、俺もそうなんだけど。
「さ、涼ちゃん、準備しようか。」
「へ? 準備?」
俺たちは必死に止めたんだけど、なんでよいいじゃん飲ませてよ、と言って、自分の作ったディナーと一緒に、お酒をいくつか飲んだ涼ちゃんは、ほんのり赤ら顔でぽやんと返した。
元貴が溜め息をついて、椅子に座る涼ちゃんの後ろからギュッと抱きつく。
「…俺たち、ちゃんと二十歳になったんだよ?」
元貴が涼ちゃんの耳元で囁くと、お酒だけのせいではない、頬の赤みが少し増した。俺は、涼ちゃんはきっともう、ちゃんとわかってるな、と察して、前に立って両手を握った。
「…お風呂、みんなで入ろっか。」
俺がそう言うと、涼ちゃんは潤んだ瞳で俺を見上げて、すぐに眼を伏せ、頷いた。俺と元貴は眼を見合わせて、つい笑顔で頷き合う。やった、涼ちゃんが、ようやくその気になってくれたぞ!
俺たちはそれぞれに涼ちゃんの手を引いて、三人で連なってお風呂場へ歩いていく。
「…あ、ちょ、ちょっと待って。 」
涼ちゃんが、慌ててリビングに戻り、スマホを開いて何やら確認している。口に手を当てて、真剣に読んでいるようだ。
「…えっと、まず、トイレに…」
少しブツブツ呟いて、顔を赤くして俺たちを見た。
「…えっと、先、入っててくれる…?」
「何見てんの?」
「いや、あの…なんでも、ないけど。」
「ふーん? じゃあ入ってるわ。」
元貴と一緒に風呂場へ行くと、涼ちゃんがトイレへと消えていった。すぐに元貴と顔を見合わせて、テーブルに置かれたままの涼ちゃんのスマホへと一直線に向かう。
ボタンを押すと、やっぱりロックが掛かっているが、どーせ誕生日だろ、と元貴が押してみると、素直に開いた。後で誕生日にするなとちゃんと注意しとこう、と思いつつ、二人で画面を覗き込む。
『亮平くんメモ
・まず、トイレのウォシュレットを使って、綺麗にしておく。何度か水を入れて、出すを繰り返す。中まで綺麗にする。
・ふたりの爪を確認。伸びていたら切ってもらう。
・ゴムとローションは必ず用意。ローションは渇きにくい〇〇がおすすめ。 』
スマホのメモ機能に、涼ちゃんが書いたのであろう『ネコのススメ』のような事柄が、ビッシリと羅列されていた。俺と元貴は顔を見合わせて、なんか、泣きそうな顔になってた。
「…涼ちゃん、亮平くんにちゃんと教わったんだ…。」
「…いつの間に、こんなの…。」
二人とも、自分の爪を確認した。うん、大丈夫、昨日短く切ったばかりだし、ちゃんとヤスリもかけて滑らかにしてあるから、涼ちゃんを傷つけることはない。
元貴が俺の肩に手を置いて、そこに額を乗せた。
「なぁ…なにこれ。もう堪らんのだけど…。」
「わかる…ヤバいわこれは。あんなにずーっと猫ちゃんイタチってボケてたくせに、急にこれは…殺しに来てるな。」
俺たちは、そっと風呂場に戻って、先に身体を洗って涼ちゃんを待った。
湯船は割と広めなので、二人ならそこまでキツくはない。お互いに向かい合って、脚を少し伸ばしてお湯に浸かっていた。
ドアの向こうから音がして、すりガラスに涼ちゃんのシルエットが映る。上の服を脱いで、ちょっと鏡でなんか確認してるっぽく角度を変えてるな。お腹出てないか気にしてるな、あれは。そんで、下を脱いで。ちょっとだけ止まってから、ドアに手をかけた。
その様子を二人で食い入るように見つめていて、それだけでも物凄く興奮してきた。
ガララ、とゆっくりドアが開いて、恥ずかしそうに涼ちゃんが入ってきた。
「…! そんなにこっち見ないでよ…。」
「…ごめん。」
「…はーい…。」
俺たちの視線に怯えた涼ちゃんに言われて、俺たちは素直に従った。涼ちゃんが椅子に座り、シャワーを浴び始める。
元貴が、口パクで俺に何か伝えてきた。
『エロいな。』
俺も頷いて、口パクで返す。
『ヤバい。』
二人で、クックッと笑って、お湯を掛け合う。そんなふうに戯れあっていると、涼ちゃんがどうやら洗い終わったようで、どこにどう入ろうか迷っていた。
「真ん中おいで。」
俺が言うと、あ、じゃあ…、と言って、俺に向かい合うように、身体を縮めて湯船に入った。
「もっとこっちおいでよ、狭いでしょ。」
涼ちゃんの後ろから元貴が身体を引っ張り、自分の方へと寄せた。後ろからギュッと抱きしめて、濡れた涼ちゃんの髪に顔を埋めている。
おいズルいぞ。俺、今日、誕生日なんだからな。
俺は拗ねた顔をして、湯船の縁を掴んで身体を涼ちゃんへ、グッと寄せた。そのまま、涼ちゃんにキスをする。
「あ。」
元貴が、声を出した。お前が勝手に後ろを取るからだろ。前はもらった。
顔の角度を変えながら、俺は何度も涼ちゃんに口付ける。涼ちゃんも、素直に応えて、二人のちゅ、ちゅ、という音が浴室に響いた。
よほど面白くなかったのか、元貴が涼ちゃんの首筋に吸い付いて、指は胸の突起を弄り始めた。
「…ん!…ん…。」
涼ちゃんが声を出したが、俺はそのまま舌を侵入させて、涼ちゃんの暖かい口内を堪能する。元貴は涼ちゃんの耳を味わい、片手は涼ちゃんの中心に伸びていた。俺は、一方が空いた涼ちゃんの胸の突起を、弄りながら深いキスを繰り返す。
涼ちゃんの身体がピクピクと細かく震え、息もすごく荒くなっている。
「…気持ちいい?」
元貴が耳元で囁く。涼ちゃんが大きく身を捩るが、俺が顎を片手で押さえているので、キスからは逃さない。
「若井、そろそろストップ、涼ちゃん息できないよ。」
元貴に言われて、ハッと顔を離す。顔を真っ赤にして涙目になった涼ちゃんが、はあはあと肩で息をしていた。
「ご、ごめん、大丈夫?」
俺が涼ちゃんに確認すると、涼ちゃんは緩く笑って頷いた。あ、もうダメだ、可愛すぎる。元貴に眼をやると、元貴も頷いた。すぐに俺たちは、涼ちゃんを支えるように立ち上がって、三人で水気を拭きあった。
薄暗い部屋の中を、みんな素っ裸で寝室に向かう。その途中、涼ちゃんが荷物部屋の引き出しから色々と取り出して、持ってきた。
なんだろう、と眺めていると、灯りを落とした寝室で、涼ちゃんが真ん中のベッドに防水シーツを敷いた。そして、ベッドの宮台に、ゴムとローションを並べて置いている。
「…一応、準備、できました…。」
涼ちゃんがそこに正座をして、俯き加減で俺たちに言った。
俺たちは、そっとベッドに上がり、涼ちゃんの手をそれぞれに握る。
「…怖い?」
元貴が訊いた。涼ちゃんは頭を横に振る。俺は、涼ちゃんに両手の甲を上にして、差し出した。
「爪、ちゃんと短く綺麗にしてあるでしょ、確認して。」
「う、うん…え?」
「スマホ、ロックは誕生日にしない方がいいよ。」
元貴も、手を見せながら涼ちゃんに囁いた。涼ちゃんが意味を理解したのか、目を丸くして頬を紅潮させる。
「あ、な、み、見た…の?」
「…他は? どんなこと教えてもらったの? 亮平くんに。」
元貴が、また涼ちゃんの後ろに回って、お腹に手を回す。お前、後ろ好きだな。
「え…と…。す、少し、自分でも触って、慣れてた方がいいって…。」
「…え?!」
俺は、素っ頓狂な声が出てしまった。え、だって、涼ちゃんが…自分で…え?!
「…めちゃくちゃえっちじゃん…。 」
アホみたいなことを言ってしまって、俺もちょっと恥ずかしい。元貴が後ろから涼ちゃんの左手を支えて、そのままその手を涼ちゃんの股へと誘う。俺は理解して、涼ちゃんの両膝を持って、ぐい、と大きく広げた。
「あ…。」
「自分で触ったの?どんな風に?」
「え…いや…。」
「やってみて、涼ちゃん。」
元貴が、すごく意地悪なことを甘く低い声で囁く。俺は、膝を支えながら、ベッドの棚に手を伸ばして、ローションを手に取った。蓋を開けて、元貴が支える涼ちゃんの手の指先に、ローションを少し垂らす。
「…やってみたの?」
俺も問い掛けると、涼ちゃんはこく、と頷いた。それだけで、俺の下腹部はゾクゾクと疼いて、さっきから熱を持っている中心がさらに硬くなる。
涼ちゃんはしばらく迷っていたが、そのうち観念したように、自分の孔に指を沿わせ始めた。しかし、よほど恥ずかしかったのか、少しヌルつきを孔に与えただけで、指を離してしまった。
「…もう、…むり。恥ずかしい…。」
「ダメだよ、ちゃんとしないと。」
「…やだ…。」
ふるふると頭を振って、懇願する。元貴が、涼ちゃんの顔を自分に向けさせて、キスをした。ぴちゃぴちゃと舌を交わらせ、その表情を蕩かせていく。
俺は、ローションを指に取り、涼ちゃんが先ほど僅かばかりの潤いを与えただけの孔に、指を当てる。ビクッと涼ちゃんの足が震えたが、俺はもう片方の手で脚を閉じるのを防ぎながら、孔の周りを優しくマッサージするように、丸く撫でていく。
「…んぁ…あ…ぁ…。」
元貴にキスをされながら、涼ちゃんがピクピクと身体を反応させて、喘ぐ。きっと、人の指でされるのは、また自分で触るそれとは全く別の感覚なのだろう。少しずつ孔の中心へと指を持っていき、つぷ、と中へ入れてみる。
「あ…っ!」
一際大きな声で鳴き、涼ちゃんが身を捩って元貴にしがみつく。きゅう、と締め付けられる指を、ゆっくりと、中へ沈めていく。涼ちゃんが身体に力が入ってしまっているのがわかって、元貴がもう一度顎を少し持ち上げるようにして深いキスを落とす。中指を第二関節より少し奥に入れた状態で、元貴のキスで力が抜けるのを待つ。ふわ、と脚の緊張が解けて、指の締め付けも少しだけマシになった。俺は、くり、と指で円を描くように動かす。最初は硬く感じた周りも、それを繰り返すうちにだんだんと柔らかさを持ち始めた。
「はぁ…は…っ…ん…。」
元貴の胸にもたれかかって、両手を後ろから元貴に掴んでもらって、握りしめている。脚を広げて俺にされるがまま、身体を小さく跳ねさせて反応していた。
このまま、指をもう一本増やそうかと考えていると、不意に涼ちゃんの身体が大きく捩れた。顔を上げると、元貴が涼ちゃんの体勢を変えようと、身体を支えて動かしていた。俺は一度指を引き抜いて、元貴の様子を窺う。
「涼ちゃん、こっちの体勢の方が多分楽だから。」
そう言って、元貴は涼ちゃんを自分と向かい合わせにさせた。涼ちゃんは戸惑いながらも、膝をついて、お尻を突き出す形になる。両手は元貴の肩に置いて、不安そうにこちらを見た。
ああ、なんて可愛い格好なんだ、最高じゃん。
俺は、もう一度指に潤いを足して、今度は二本、人差し指と中指で同時にまた周りをマッサージする。元貴の肩に顔を埋めて、唇をそこに押し当てることで声を我慢しているようだ。
「我慢しなくていいのに。聴かせてよ。」
俺はそう言いながら、にゅぶ、と二本を中に入れる。さっきよりも更にきつい締め付けが、俺の指を圧迫してきた。
「ぅあ…!」
涼ちゃんが、腰をグッと上げて、少し逃げるように角度を変えた。元貴が背中や腰を摩り、涼ちゃんの緊張を解していく。
また同じように、グリグリと円を描きながら、今度は中の方も少し刺激を与えていく。
「ふ…ぁ…!? な、に…あ、…あ!」
自分の指では到底届かなかったのだろう奥の部分に、柔らかく、でも奥に芯があるような、そんな場所を見つけて、刺激する。ここが、たぶん蓮くんも言ってた『いいところ』ってヤツなんだろう。指先でそこを何度も押しながら、根本部分では孔を広げるように大きく丸く動かす。涼ちゃんの脚がぷるぷると震え、快感を得ていることが窺える。
「あ、あ…なに…や…あ…っ!」
困惑しながらも、その快感を受け入れていく涼ちゃん。元貴は、首筋や耳にキスを落として、涼ちゃんに囁く。
「気持ちい? 気持ちいねぇ、涼ちゃん。」
嬉しそうに、恍惚とした表情で涼ちゃんを見つめて、甘い声を耳に入れていく。涼ちゃんは、いろんなところからの刺激に身体をガクガクと震えさせ、だんだんと上半身が下に沈んでいく。
指は、三本入るまで解さないと、って言ってたなぁ。と、蓮くんからの情報を頭に思い返しながら、指を増やすタイミングを計っていると、元貴が俺をじっと見てきた。
「…なに?」
「…フェラ、もらっちゃってもいい?」
元貴が俺に訊いてくる。なるほど、涼ちゃんの身体が下に沈んだことで、元貴の熱とその顔が近付いていて、確かにアレは我慢できないな。
俺たちは二人で涼ちゃんを愛するわけだから、自ずと順番というものが生まれる。
初めてのキス、初めてのフェラ、初めての挿入。それはどうしようもないことで、そこにこだわっても仕方がない、とも思う。
俺は頷いて、元貴にこう返した。
「こっちは、俺がもらうよ。」
元貴は、眉根を顰めたが、渋々頷いた。いやお前が最初にそっちいったんだろ、なんで不満気なんだよ。
「涼ちゃん、舐めてくれる?」
元貴が、涼ちゃんの頬に手を添えて、優しく言った。その表情はこちらからはわからないが、こくん、と頷いたようだった。涼ちゃんの頭が下に沈んで、元貴の顔がその気持ちよさに歪んだ。ああ、いいな、どんな顔で口に含んでるんだろ、見てぇ。
それよりも、今がタイミングだと悟った俺は、もう一度指先と孔に潤いを足して、ゆっくり三本を入れていく。
「ん゛ー…!」
涼ちゃんが、元貴のモノを口に含みながら、一際大きな声を出した。しばらくは入れたままじっと動かず、涼ちゃんの呼吸を感じ取る。ふぅ、ふぅ、と鼻から息を吐いて、呼吸を整えているが、今くらいは口を離せばいいのに、とちょっと思ってしまった。きっと、もう動けないくらい、刺激が強いのだろう。
元貴が、涼ちゃんの顔を支えて、一度優しく自身から離した。そのまま、涼ちゃんに口付けて、舌を絡め合う。涼ちゃんの締め付けが、少し緩んだ。俺は、ゆっくりと、大きく、円を描いて、最終の解しに入った。
「あ…あ…。」
口を開けて舌を撫でられながら、涼ちゃんから力無く声が漏れる。俺は、もう我慢ができなくなって、元貴にゴムを要求した。元貴が後ろ手に箱を開け、一列のゴムを渡す。元貴もキスをしながらなので、片手で雑に渡してくる。
俺はそれを受け取り、口で列から一個をちぎり取る。右手で孔を解しながら、そのまま口ともう片方の手でゴムの封を開けた。なんとか左手でゴムを装着し、根元まできているか確認をする。そっと右手を引き抜き、ローションをゴムと孔に垂らして、先を当てがう。
「涼ちゃん、いい? 入れるよ?」
涼ちゃんが、元貴の足元に頭を沈めながら、こくん、と頷いた。はやる気持ちをなんとか抑え、ゆっくりと、腰を前にすすめる。孔がグッと奥に押されたかと思うと、ぷに、と広がって、俺を飲み込み始めた。
「っあ゛…あぁ…っ!」
少し苦しそうな声に、心が痛む。俺は動きを止めて、涼ちゃんの様子を見ていた。はぁはぁと荒い息を吐き、元貴の手を握りしめている。
「涼ちゃん、大丈夫…?」
「…は…っ…だい…じょ…。」
涼ちゃんのその言葉を受けて、俺は腰を持つと、ぐぐ、と奥へと押し進めた。
「あぁ…!…あ…っ!」
惜しみなく声を上げて、苦しさを逃がそうとしている。もう根元まで俺のを銜えた涼ちゃんは、静かに呼吸を整えていたが、ゆっくりとまた、元貴の熱を咥えはじめた。
「…っ、涼ちゃん、大丈夫…?」
予想外の涼ちゃんのフェラ再開に、元貴が顔を歪めながらも、その身を心配する。
「…この方が、力、抜ける…から…。」
涼ちゃんは小さく呟くと、また咥えて頭を上下に動かし始める。確かに、さっきもキスをしたりフェラをしたり、口に意識を持っていくことで、力はだいぶ緩まった。
俺は、涼ちゃんのいじらしい努力に後押しされるように、腰を掴んでゆっくりと抽挿を始める。ぬるぬるとよく絡まる肉壁が、俺を溶かすほどに気持ちがいい。腰の動きが強さを増して、肌の当たる音が部屋に響き渡る。
「ん、…ん…っ…んん…!」
ゆさゆさと揺さぶられながら、涼ちゃんはそれでも一生懸命に、元貴への愛撫を止めることなく続ける。元貴も、涼ちゃんの髪をくしゃ、と撫でながら、じっとその様子を見つめて、愛おしそうに唇を噛んでいる。
あまり最初から負担をかけすぎるのもよくないよな、と俺は意識的に早く絶頂へと向かうように動き続ける。ただでさえ締め付けが良く刺激が強い上に、切望していた涼ちゃんの中に挿れているという事実だけでも、頭がくらくらするほどに気持ちが良かった。
俺は荒くなる息と共に、涼ちゃんを打ちつける速度も早くなる。
「あ…イキそう…!」
涼ちゃんが、手を後ろに遣って、腰を持つ俺の手に重ねてきた。その手を絡め取って、俺は大きく涼ちゃんを揺さぶった。
「…ぁ、イク…っ!」
奥にグッと押しつけて、俺は下腹部に力を込めた。ビク、ビク、と何度か力を送った後、ゆっくりと引き抜く。ダランと垂れたゴムの先に、俺の欲が溜まっていた。
グッタリと横たわる涼ちゃんの髪を、元貴がそっと撫でる。しばらくして、息を整えた涼ちゃんは、元貴の手を握るとゆっくり起き上がった。
「…次、元貴…。」
「…涼ちゃん、キツイでしょ…?」
「…大丈夫…。…いっぱい、待たせちゃったから…。」
涼ちゃんはそう言うと、そっと元貴にキスをした。元貴は、涼ちゃんの頭を両手で包んで、何度も深いキスを返した。
「若井、涼ちゃん支えてて。」
涼ちゃんをこちらに向かせると、元貴はそう言った。俺は胡座をかいて座り、涼ちゃんが首に腕を回して俺に抱きつく。ゴムをつけて潤いを纏わせた元貴が、涼ちゃんの腰を掴んで、自身を中に埋め込んでいく。さっきよりスムーズに銜え込んだようで、涼ちゃんからそこまで苦しそうな声は出なかった。
俺は、涼ちゃんの顔を両手で包んで、深いキスを交わす。挿入ももちろん気持ちよかったけど、キスができなかったのが、少し寂しかった。
元貴がゆっくりと動きはじめて、涼ちゃんが揺すられていく。俺の肩にしがみつくのもしんどいのか、だんだんと身体が下に沈んで、俺の太腿に頭を乗せて、ガクガクと押されるがままに俺の足の上で揺れ動いている。
俺は、左手の親指を、涼ちゃんの口に入れてみた。涼ちゃんは、ボーッとした顔で、その指を舐めはじめる。あ、思ったよりも、これ興奮するかも。ぐちゅ、と舌を指で弄んだり、涼ちゃんに咥えてもらって出し入れしたり。次は俺もフェラしてもらおう、とそんなことを考えながら、指で涼ちゃんの口内を堪能し続けた。涼ちゃんが元貴のモノで喘ぐ姿も、物凄く妖艶に写る。
「…あ、…イク…っ。」
元貴が小さくこぼして、動きを強めたと思ったら、奥に欲を吐き出した。はぁー…、と息を吐いて、涼ちゃんから引き抜く。
俺の脚の上に力無く崩れ落ちている涼ちゃんを、優しくベッドに降ろして、俺は洗面所へとタオルを取りに行った。
お湯でタオルを絞り、寝室に戻って、涼ちゃんの身体を丁寧に拭いていく。元貴も、涼ちゃんの下着からパジャマまで一式を用意して、拭き上げたその綺麗な身体に着せていく。
「…も、大丈夫…自分で…」
「だーめ。俺らにやらせてよ。やってあげたいの。」
何を今更恥ずかしがるのか、遠慮する涼ちゃんに、元貴が笑顔で応えた。俺たちも簡単に身体を拭いて服を着替えた後、シーツなどを片付けてベッドに戻る。
涼ちゃんは、こてんと横になって、ボーッと眼を開けていた。俺たちは両側にピッタリとくっついて、涼ちゃんを抱きしめる。
「…キツかった? ごめんね、いきなり二人も相手させちゃって…。」
俺が言うと、涼ちゃんは笑顔で首を振った。
「ううん、二人とも、ここまで待ってもらってたんだもん。どっちかだけ、なんて可哀想でしょ。」
俺たちは、もうその言葉に堪らなくなって、ギューッと強く抱きしめた。涼ちゃんはふふ、と笑って、苦しいよ、なんて言ってた。
「涼ちゃん、気持ちよかった…?」
元貴が、顔を覗き込んで訊く。俺も、気になって同じく覗き込む。涼ちゃんは、伏し目がちに顔を赤らめて、こくん、と頷いた。
「…きもち…よかった…。」
俺たちは、顔を見合わせて、安堵の表情を見せた。涼ちゃんが、俺たちの手をそれぞれギュッと握る。
「…ありがと…優しくしてくれて。」
「こっちこそ、頑張ってくれてありがと。」
「俺、めちゃくちゃ幸せな誕生日だよ。」
「ホントだよな、お前だけズリーよ。」
「君からの毎日の圧に耐えたご褒美だと思うけどね。」
「お前が遅く生まれたのが悪い。」
「だからって人の過去を改竄しようとすんな。」
「『俺の過去が…書き換えられてる…?』」
「『どういう事だ…? 俺はまだ、生まれてないはず…!』」
俺たちがふざけて言い合っていると、涼ちゃんが間でクスクスと笑った。俺も元貴も、一緒に笑う。
「…でもさ、真面目な話していい?」
「ダメ。」
「なんでだよ、させろ。」
俺が話を切り出すと、元貴がまたふざけて遮った。
「これからさ、ずっと二人同時に相手してもらうと、涼ちゃんマジで大変だと思うんだわ。」
「…まあ。」
「…う、うん…。」
「だから、シフト制にしない? 」
「「シフト制?」」
二人が同時に俺を見る。
「いや、シフト制って言うと、なんかヤな感じに聞こえちゃうかもだけど、要は、一人ずつ、涼ちゃんに負担かけないように間を空けてする、ってこと。」
「…なるほど…。涼ちゃん、どう?」
「…うん…その方が…助かります…かも…。」
「問題は、いつするか…だよなぁ。お互いに、バイトとか用事でどっちかいない時が、多分やりやすいよなぁ。」
「…もしどっちもいる時に、片方がやり始めたら、乱入アリ?」
「え…!」
「それじゃあ結局涼ちゃん二人としなきゃじゃん、意味ねーだろ。」
「でも…じゃあ例えば俺とやってる時に、若井、一人でリビングで待ってるってこと? できる?」
「…無理だな。」
「えぇ…。」
涼ちゃんが、さっきから俺らの間で「え…」しか言ってない。涼ちゃんの意見を尊重しようと、俺は涼ちゃんに向き直る。
「涼ちゃんのやりやすいのが一番だから。涼ちゃんはどういう風がいい?」
「…こういうのって、そうやって決めるものなの…?」
「え?」
「…その、一緒に過ごしてて、手を繋いで、キスをしてたら、お互いにそういう気持ちになって、その…する、とかじゃないの?」
俺も元貴も口が開いて、ポカンと涼ちゃんを見つめる。え、俺たちって、こんな乙女と恋してたの? あり得ないほどに可愛すぎる23歳なんだけど。
「…まあ、確かに涼ちゃんの言う通りかもな。涼ちゃんの負担を減らすためとはいえ、当番制みたいにして、なんて、本末転倒だもんな。」
元貴が苦笑いしながら話す。俺も頷いて、涼ちゃんの手を撫でた。
「ごめんね、涼ちゃん。なんか、そうじゃなかったね。」
「ううん、ひろぱが僕の為に言ってくれたのはすごく嬉しかったから。僕、頑張るよ。頑張るけど…その、同時に、の時は、どちらかは口で…とかになるかも知れないけど…。」
「…まあ、俺らも、涼ちゃんを襲いすぎないように、気を付けるよ、たぶん。」
「連日にならないようには配慮するね、たぶん。」
「その『たぶん』がだいぶ怖い。」
三人でクスクス笑い合って、その日は涼ちゃんを真ん中に抱きしめ、繋がり合えた幸せを噛み締めながら、眠った。
今日は、久しぶりに涼ちゃんの仕事の休みと、俺らの休みが重なった。前々から涼ちゃんが行きたいと言っていた、蓮くんたちとニノ先生たちとの、合同デートが実現する日だ。
「そう言えばさ、亮平くんと最初に会った日、三人で何を話して、あんなに仲良くなったの?」
涼ちゃんを真ん中にして、三人で手を繋ぎながら歩く道すがら、涼ちゃんが俺たちに訊いてきた。
「あれ、まだ涼ちゃん知らないんだ。」
「うん、前に亮平くんに訊いた時は、『いずれ話すね』って言われて、それっきり。」
「あー、そん時まだ俺らの気持ち知らなかったんじゃない? 涼ちゃん。」
「あー…うん、多分そう。」
俺は元貴を見て、元貴が話し始める。
「俺らが、涼ちゃんのこと好きだって、亮平くんすぐ見抜いてたんだよ。」
「え? そうだったの?」
「そ。だから、協力させて欲しいって。蓮くんのこと話してきてさ。」
「蓮くん? なんで?」
「涼ちゃんは俺ら以外の人と接して、改めて俺らを意識させるのがいいんじゃないかって。」
「そうそう、ずっと一緒にいるから、このままだと気付けないって言われてね。まあ確かにそうかもなーって。」
「だから、蓮くんにどんな風に協力してもらうかとか、遊園地に誘ってみるとか、そんなのを相談して計画してたってわけ。」
「…だから二人とも、蓮くんには全然警戒しなかったんだ…。おかしいと思ったんだよ。」
「あ、そこは気付いてたんだ。」
「いや気付いてたというか、違和感はすごかったよ。」
「はは、意外と鋭いね、涼ちゃん。」
俺が涼ちゃんの手をギュッと握って顔を近付けると、涼ちゃんが少しムクれて軽く睨んだ。そして、すぐにパッと笑う。
「でも、そのおかげで今こうして幸せなんだもんね。」
「そうだよ。それに、それだけじゃないしね。」
「え?」
俺に訊き返す涼ちゃんに、元貴も顔を近づけた。
「…セックスの仕方も、その時最初に教わったんだよ。」
「…ええ!!」
顔を真っ赤にして大声で驚く涼ちゃんの両傍で、俺たちはくつくつと笑った。
「な、ほ、ホントに?!」
「ホントホント。亮平くんノリノリだったよ。」
「もうあんな事やこんな事まで。」
「…もー、亮平くん〜…!」
真ん中で焦ったように怒る涼ちゃんを、ケラケラと笑いながら俺たちは集合場所へと連れて行った。
そこには既に二組のカップルも到着していて、涼ちゃんは早速亮平くんに詰め寄っていた。亮平くんは、爽やかな笑顔で涼ちゃんを宥めて、俺は久しぶりに蓮くんと談笑する。元貴はニノ先生と話して、キチ…菊池さんと少し睨み合っていたが、すぐに笑い合って何か話していた。
三組のカップルで、遊園地へと入場して、それぞれに顔を寄せ合って、幸せそうに歩いている。
俺たちの様々な恋が、こんな風にただ当たり前の景色になっていく。日常として続いていくことの、なんと幸せなことか。
俺は、真ん中を歩く涼ちゃんの手をギュッと握って、向こう側の元貴を見る。元貴も、同じく俺を見て、優しく笑いかけてきた。
俺たちは、やっと捕まえたこの二人の幸せを、これからも変わらず大切にしていこうと、目線を交わして密かに誓い合うのだった。
コメント
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完結!!お疲れ様でした大好きです食べてもいいですか?
完結👏 七瀬さんも楽しんでるのが伝わったよ〜❤ 3人連なってお風呂へ行くって尊すぎるw 想像したら可愛くてニヤニヤが止まらなかったもん。阿部ちゃん丁寧に分かりやすく涼ちゃんに教えてあげたのね!フフッ涼ちゃんもっとがんばれっ!! シフト制!!途中乱入ありとかもう面白すぎた!お腹いっぱいよ♬
完結、ありがとうございました〜💕そしてお疲れ様でした~🙌 ♥️くんが💙への誕生日圧が面白くて。笑 待ちに待った、💙のお誕生日でしたね🤭❣️ 七瀬さんが苦労して下さった分、3人のいちゃいちゃ補給されました🤤💕