なんでも短編小説

あの人は長い髪が好きだった。

さらさらと風になびく黒髪。それを耳にかける仕草。時に緩く結ばれたポニーテール、

あの人は私の”そこ”が好きだった。

別れた時、友人は言った。

「あいつはそういう男なんだ」

今のあの人の恋人はふんわり緩く巻かれたパーマが良く似合う茶髪の子だった。

あの人は彼女の”そこ”が好きなのだ。

だから私は思い切って髪を切った。

バッサリと肩より短く。

あの人が好きだった私と

あの人を好きだった私を

美容室の床に捨ててきてやったのだ。

女の子が髪を切る理由:END