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目の前にある襖1枚隔てた向こう側には、お父さんとお母さんが寝ているのだが、どうしても確かめたかったことがある俺は、颯爽とタケシ先生の布団に潜り込み、後ろから抱きしめてやった。
その途端に右側にある跳ねた後ろ髪が、ぴくりと揺れる。暫しの間のあと、タケシ先生は深いため息を漏らした。
「こら……いきなりなにをするんだ、バカ犬」
隣に聞こえないように押し殺した声で言ったせいで、いつもより怖さが倍増されたけど、おののいている場合ではない。俺にとっては、切実な問題なんだ。
「だ、だってよぉ……どうしても気になったんだ。その、御堂にキスされたっていうのがさ」
「ちょっ、ま――」
タケシ先生が返事をする前に、がばっと覆いかぶさり唇を塞いでやった。
おいおい、隣の部屋に親父とお袋がいるんだぞ(照)←周防の心の声
「っ……ぁ、うっ……」
抵抗できないように、タケシ先生の両腕をガッチリと握りしめ、布団に磔にしてやった。ヤル気満々な状態の俺に、目の前で心底イヤそうな顔をして眉根を寄せる。
「タケシ先生、アイツに触られたのはお尻だったっけ」
「お、おい……なにをする気なんだ、お前?」
「なにって、舐めて拭うだけ」
ケロッと言い放ってみたら、首を激しく横に振りまくった。
「ばっ! 港で両手を使って掃いまくっただろ。あれでチャラになってるって」
「俺の気が済んでない。だから舐める」
「マジメな顔して舐めるとか言うな! 隣に聞こえたらどうするんだ?」
顔を真っ赤にして大声で言ってる時点で、丸聞こえだと思うぞ、タケシ先生。つぅか冗談が通じないとか、どんだけ錯乱してるんだろ。
「だって、タケシ先生のことが好きなんだ」
俺はいたって冷静でいたため、きちんと声を抑えて言った。やっぱハズカシイからな、うん。
「す、好きだからって舐めるとか、絶対におかしいから!」
「おかしくないぜ。他のヤツに触られて、そのまんまにしてるのが変だしさ。俺のもんに勝手に触るとか、マジでムカつくってぇの」
「ムカつくのはわかるけど、場所をわきまえろって」
「そうよ。お父さんもいい加減に襖の前から離れて、ふたりのことを放っておいてあげなさいって!」
隣から聞こえてきたお母さんの声に、タケシ先生と顔を見合わせてから襖を見てしまった。
「とにかく……自分の布団に戻れ。続きは地元に帰ってから、ちゃんと聞いてやる」
かなり呆れながら告げられた言葉だったけど、お父さんのお蔭で帰ってから、タケシ先生とイチャイチャできたのは、ラッキーだったかもしれないな。