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ティアキン後の話
勇者リンクによる魔王討伐から一月後、ようやくゼルダ姫を筆頭とするハイラル復興が再開し始めた。
最近まで行方不明だったゼルダ姫は魔王討伐と同時にリンクとその相棒、キヨによって発見され、現代のハイラルに帰ってきた。
この一月間、ハイラルを二度も救った二人、いや三人は民によって盛大に祝福された。
そしてその祭りが落ち着いてきたので、ゼルダ姫一行は再度ハイラル復興に尽力することとなった。
「こうしちゃいられませんよ皆さん!魔王を討伐することはできても、私達にはまだまだやることが沢山あります!」
一月前まで行方不明だったと思えないほど明るくタフなゼルダに、どれ程救われただろうか。
そう感じるのは私だけではないはずと思い、共感を求めるために隣の奴を見ると
「姫ちゃぁぁあん今日も可愛いぃぃぃ」
…到底私はこいつがハイラルを救ったなんて思えない。
「姫ちゃんって…アンタねぇ姫様に向かってそんな、」
「いいんですよプルア、彼もリンクと共にハイラルを救った勇者、なんですから。」
それとこれとは話しが別だと思うんだけど。
全く、姫様は本当にリンクとこいつに甘いんだから。
キヨ。
姫様の言う通り、リンクと共にハイラルを救った勇者、というのは私ももちろん認めている。
こいつの出自は本当に謎で、
六年前、厄災討伐の最後の希望として回生の祠に眠らせていたリンクが目覚めた時、その場になぜかキヨが居たという。
キヨ自身もなぜそこにいたのかは分かっていないが、ただ姫様の声を追いかけていたらリンクが眠っていたらしい。
何が何だか分からないけど、
断崖絶壁の始まりの大地にいたという時点で只者ではないだろう。
その証拠に厄災の時も魔王の時も、リンクと共に使命を全うし生き延びたのだ。
リンクも、喧嘩することもあったけど
キヨがいなかったらここまでできなかったかもしれないと語っている。
その反面、リンクに体力縛りを強要したり着る服を制限したりと、かなりいらんことしでかしてくれたようだけど。
ある日の朝、ゼルダ姫は二人に任務を与えた。
「今回はリンクとキヨに四地方の調査に向かってもらいます。」
本当は姫自身も同行したかったようだけど、王族として監視砦やその周辺を拠点としているハイリア人達との交流を優先したようだ。
そのことを伝えると二人は快諾してくれた。
「なぁリンク!どこから行く!」
キヨに行き先を委ねると、彼お気に入りの村があるヘブラ地方に向かうことになった。
思えばキヨとの大冒険はいつも彼が行き先を決めていた。
おかげでハイリア人の自分も知らなかった発見が多くあったし、無口な自分ではできなかったであろう人々とのたくさんの交流をできた。
自分の知名度はキヨのおかげと言っても過言ではない。と思っていることは内緒だ。
「…あれ、ここどこだ?」
雪深いヘブラ地方に向かうはずが、暑い砂漠の真ん中に立っていた。
同行させていた自分の黒馬とキヨのうまだうまみはいつのまにかスナザラシに変わっている。
「リンク…まぁいっか!」
「良くないザラシ」
「その語尾なんやねん…ん?
おいリンク…後ろ、」
会話に夢中になっていると後ろから迫り来る影に気づかなかった。
その瞬間強烈な痛みと同時に身体が勢いよく宙に浮いた。
「モルドラジークだぁぁぁ!」
砂漠を泳ぐ巨大な影、モルドラジーク。
魔王が倒されてから長年ハイラルを悩ませてきた魔物のほとんどが消えた。
しかし、イワロックなどの魔王の管轄外である魔物は未だ残っている。
モルドラジークもその一つだ。
何万年も前から共生しているはずのゲルド族でさえ、こいつには苦戦するという。
しかし、ハイラルを二度も救いハイラル一の剣士と謳われるリンクなら話は別だ。
「行くぞ!相棒!」
それに強力な相方か付いていれば敵うものは何もないだろう。
余裕で大型の魔物を倒した二人が発狂しながら砂漠を練り歩いていると、リンクは見覚えのある人影を見つけた。
「おや、リンクにキヨではないか。」
そこには他とは一風違うスナザラシを連れ、
少女とは思えない貫禄があるゲルドの族長、
ルージュがいた。
「ルージュにパトリシアちゃんじゃん!元気にしてたか!」
ルージュの声にいち早く反応したキヨがリンクを置いて駆け寄っていった。
「成程、ゼルダの命で…」
最初にヘブラ地方を目指していたことをすっかり忘れた二人は、ゲルドの街の玉座の前でルージュと話し込んでいた。
「そうなんだよなぁ姫ちゃんがとにかく可愛くてさ」
関係ないことをほざくキヨに肘打ちをして代わりに事情を説明したリンクのお陰でなんとか牢屋に入らずに済んだ。トーレルーフもないし、王家から使者がこれでは示しがつかないだろう。
最近監視砦からゲルドの街に帰還したゲルド族の兵士長、ビューラも交えて四人で会議を開く。
この感じになんとなく懐かしいものを感じたリンクとくだらないダジャレを言ってスベるキヨ。
本当に平和な世の中になったんだな。
とキヨに刃を向けながらビューラは思った。