❤️&💙×💛 ※付き合ってます
💙視点
「わぁ〜、やっぱお洒落なカフェだね!」
「「……」」
涼ちゃんがずっと前々から来たがっていた、木造のお洒落なカフェ。スマホを片手に、何回も外観の写真を撮って笑みを浮かべている。そんな姿を横目に、隣で黙り込んでいる元貴に目を向ける。
「……ねぇ、」
「…なに。」
夢中ではしゃいでいる涼ちゃんに聞こえないよう、小さいトーンで話しかけてみる。何故こんなにも隠すように話しているかと言うと、ちゃんとした理由があった。
「………、いつ言うの。」
「……若井が言うんじゃないの?」
実は今日、涼ちゃんに対してある検証をしようと思っている。カフェに入る前に、忘れ物を取りに行くフリをして、駐車場に停めておいた車へと戻る。そこで、1時間以上待っていても俺たちが帰ってこなかったら、涼ちゃんはどんな反応をするのか。
「……よし、言うわ。」
「任せた。」
こんなにも楽しそうなのに、これから1時間も待たせるなんて、という罪悪感が心を刺す。だが、前々から計画していたこれを無しにするわけにはいかない。ごめん涼ちゃん!と心の中で謝りながら、まだ写真を撮り続けている涼ちゃんの背中に声を掛ける。
「涼ちゃん!ごめん、ちょっと……」
「え、どこ行っちゃうの、!?」
涼ちゃんにそう声を掛け、元貴にアイコンタクトをする。案の定振り向いた涼ちゃんは、困惑に満ちた表情を浮かべて、何故か俺の手を握ってきた。
「じゃあね涼ちゃーん。」
「もう、!?!?なんで!?」
俺よりも先に歩み出していた元貴が、涼ちゃんに向かってヒラヒラと手を振る。なんで普通に帰る演技になっているんだ、と思いつつ、涼ちゃんの寂しげな表情がいたたまれなくなった。
「じゃあねじゃないから。ちょっと元貴と忘れ物取りに行ってくる!」
「うん…、分かった。」
一瞬向けられた、涼ちゃんからの切ない瞳。これ以上見ていたら全てをネタばらししてしまいそうで、慌てて目を逸らして元貴の背中を追う。車を停めた位置からなら、涼ちゃんの様子を見れるはず。
「…涼ちゃんの顔見た?」
「顔、?」
突然元貴から投げ掛けられた質問を反復して、さっきの涼ちゃんの様子を思い浮かべてみる。そんなにまじまじとは見ていない、寧ろ見れなかった。
「めっっちゃ泣きそうな顔してたよ。俺の優しい心が痛むわ。」
「俺だって罪悪感やばいからな??1時間とか耐えられないわ。」
「じゃあ30分にする?」
突飛な提案と共に、丁度車の側へと着いた。近くのフェンスに寄りかかりながら俯いてスマホを触る涼ちゃんを視界に映す。気の所為かもしれないが、何となくあの周りの空気が暗いような。
「……30にしよ。」
「怒るかな涼ちゃん。」
「レア涼ちゃん見れる?」
「……さあ?」
「……まだかなぁ、」
忘れ物を取りに行くと言っていた元貴と若井が、なかなか戻っていこない。別に急かすつもりないし、きっと見つかって居ないんだろうと思う。でも、少しだけ風が冷たくて肌寒い。そんなことを考えながら、近くにあった時計に目をやる。若井達が行ってからもう10分も経っていた。
「うぅ……さむ……」
「ねえ、君。」
「え?」
突然隣から聞こえてきた声に、慌てて顔を向ける。そこに居たのは、全く知らないおじさんで、思わず首を傾げる。
「え、っと…何か? 」
「ここのカフェ好きなの?」
「いや、…今から入ろうと思ってて、!」
もしかしてここのオーナーさんか何かだろうか。確かに店の前でずっと立っている僕は不審者でしかない。元貴達と一緒に入れないのは残念だけれど、先に入っておこうかな、と考えていると、前振りもなく、急に手を掴まれた。
「っ、なんですか、!?」
「おじさんもこのカフェ入ろうと思ってたんだよ。ちょっと話付き合ってくれない?」
「ご、ごめんなさい、…僕人待ってて……」
にやにやと不気味な笑みを向け、手を離そうとしない姿に、本能的な恐怖がチラつく。いいから、と手を引かれた時、後ろから2人分の足音が聞こえた。
「おじさーん。カフェの前でナンパとか正気?」
「ここよりあっちの方が相手されるんじゃない?まあ、涼ちゃんはお前に興味なんてないけど。」
「、元貴!若井、!!」
後ろから聞こえた馴染みのある声と共に、肩に暖かい手のひらが触れた。どっと身体を襲う安心感に、目の前の男を見る余裕が出来た。僕の後ろを見て、凄く怯えたような表情を浮かべている。一体2人がどんな顔をしているのかは分からないが、少しでも気を抜けば今にも涙がこぼれ落ちてしまいそうだ。2人が来てくれなかったら僕はどうなっていたんだろう。
「分かったならさっさとどっか行って。あ、ここの店主にも伝えておくから。もうここら辺うろつけないね〜。」
「っ、大人なめんなよガキ共、!!」
全く声色を変えずにそう発する元貴が、いつもよりかっこよく見えた。てっきりまだ何かしてくると思っていたが、男は捨て台詞を吐いて走り去っていってしまった。
「…やっっばぁ、まじ焦った。」
「大丈夫涼ちゃん!?何もされてない!?」
「う、うん……大丈夫。2人は?忘れ物見つかった?」
冷や汗をかき、焦りを浮かべた表情で僕の顔を覗き込んでくる若井に、ふわりと微笑んでそう伝える。僕を心配してくれている2人だが、手には何も持っていない。忘れ物はどうしたのだろうか。
「……いや、……と、とりあえず中で話そ!」
「い、いいねそれ!!涼ちゃん来たかったカフェだもんね!よし行こー!!」
「……???」
「えっ、!?!?忘れ物なかったの!? 」
「「ごめんなさい……」」
僕の座る席の向かい側に腰を下ろしている2人が、同時に頭を下げる。最初から2人で協力していたなんて、考えもしなかった。全く馬鹿な事を考えるな、なんて思いながら、届いていたメロンソーダのストローに口付ける。
「でも、涼ちゃんが絡まれるとは思わなかった。」
「若井の走り出すスピードまじ早かったよね。いつ間にか隣からいなかったもん。」
何故か楽しそうにさっきの出来事を振り返る2人を睨みつけると、それに気付いた若井が慌てて僕に向き合った。
「俺達本当に反省したんだよ。だからさ、これからは涼ちゃんのこと1人で歩かせない事にした。」
「え、?」
「そうそう。絶対俺達が傍に居ないと駄目ね。寧ろ涼ちゃんが家に一人の時は外出ちゃダメってルールでも良くない?」
「良くないよ、!?」
急に何を言い出すのかと思ったら、完全に僕不利の内容じゃないか。しかも、家に一人の時は外に出ちゃいけないなんて、監禁となんら変わりない。
「えー、じゃあGPSとか?」
「防犯ブザーとか持たせてみたらいいんじゃない。」
「防犯ブザーに釣られてまた変なやつ来るかもしれないだろ。」
「無限ループじゃん。」
勝手に展開されていく2人の会話を黙って見守る。きっと今僕が口出ししても、全て流されるだけだ。フォークを手に取り、机上のガトーショコラに切り込みを入れ、そっと口に運ぶ。口の中に広がる、少しの苦味と程よい甘さ。
2人の愛の味がした。
このお話投稿しようと思ってアプリ開いたら、何回やってもぐるぐるしててめちゃ焦りました🫠🫠
コメント
8件
途中で涼ちゃんのインライ思い出したw
涼ちゃん明らかにしょんぼりしてる反応が可愛すぎる🤦♀️💘これが萌えか…😇と言うか監禁みたいになってるの過保護な部分が出てて最高😚💖
うわぁ、かわいい……。 愛しいのお裾分けありがとうございます🫠