テラーノベル
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「フッ……早く聞かせてくれと思うような、聞きたくないような…だね、真奈美さん」
「……はい……ふふふっ…な渡辺さんだけで十分という気もします………私はアカウント削除しましたけれど、彼女は削除していないどころか更新した…本当に、なんで?ですね…」
何とか笑いを落ち着かせたように見えた渡辺さんは、コーヒーを飲もうと思ったのかカップに指をかけたけれど
カチャ…ッン…ッ……
やっぱり笑いで手が震えて、カップとソーサーが音を立てた。
諦めたようにカップから手を放した渡辺さんは
「【遥香の一人暮らし】というアカウント名に変えて活動するので、一人暮らしのアイデアをどんどん共有していきましょう……ときたワケです……はい…」
と私を見た。
「知りませんでした……もう興味がなかったので、見ていない…」
「残念です…先ほど運営サイドがアカウントを凍結したので、もう見られません」
「「はっ?」」
私と篤久様の声が揃い
「バン…された?他のアカウントのコピーとか無断引用とか…あ、彼女ならもしかしたら誹謗中傷に対抗するように、脅迫みたいな書き込みしたとか…考えられるところが日頃の行いですけど…」
私は何となく想像できることを並べてみた。
「真奈美さん、さすがです。敵をよくご存知でおられたことが真奈美さんの勝因だと分かる言葉だ…全部正解です」
「「えっ?」」
全部って……再び私と篤久様の声も揃ってしまう。
「馬鹿馬鹿し過ぎて見たくもないけれど……渡辺さんのあの笑いに興味が湧くよな」
「ほんと…たぶん、しょぼすぎたんじゃないですか?あの人、スマホしか使えないし、しかも使いこなせないのか、サムネも下手だし、加工もキラキラさせることしか脳内に浮かばないし、ここではライトアップしてレフ板を使って写真を撮っていたけど、それも持って行っていない…」
「いえ、それは運んだのを見ました」
「うそ……信じられない…ここを出る時に必要なもの…?」
「小遣い稼ぎに続けられると思ったんじゃないか?」
篤久様がそう言うと渡辺さんも頷くけれど、フォロワー数は激減していたし全く収入になるはずがない。
それより普通に仕事をしないと……
「お小遣いと生活費の違いも分からないのでしょうか?」
「おそらく、母子揃って、そういう現実的な問題が目の前に立ちはだかりそうになった時に、これまではうまい具合に金のある方へと身を置けたのだと思う。そこでみんな何かしらの努力をして、社会と繋がって生きて行くもの…仕事でなくても趣味やボランティアでもね。でもそれをせずに、金の上に座った気分で生きてきた二人には、返ってくるものが孤立。自分はアナタたちとは違う、というなら、どうぞ違う世界で生きてくれって誰でも思うよ」
「そうですね……持って行ったレフ板…邪魔なだけだ…」
やっとコーヒーを飲んだ渡辺さんが
「きっと、友人たちから縁を切られて、あんなアカウントでも誰かと繋がっていたいと考えたのかもしれません。でも一般常識の理解出来ない残念な者のやったことの結果は、もう一段自分を堕とした」
すっかり笑いを封印して、いつもと同じトーンで言った。
コメント
9件
そんな戯言を言ってるなんて、まだ余裕があるのかね〰😒
自ら未知への希望となると思ってやったら自滅への道を選んだのね。そこまで頭が働かないか🤣🤣🤣
バン!!!1回で?🤣 渡辺さんだけ٩꒰・ัε・ั ꒱۶ズルイ〜 スクショしてない?するわけないですね! でもそれだけ笑っちゃってんだから【遥香の一人暮らし】興味持っちゃうね🤣 いつものトーンに戻った渡辺さんの最後の一言『もう一段自分を堕とした』渡辺さんが誰よりも喜んでるように感じる!相当恨んでそう!!!