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・1話の最初に注意書きあります
アキ視点。前回から数時間飛んでます。
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〈キーンコーンカーンコーン〉
「…はぁ、」
びっくりするくらい誰にも話しかけられずに午前の授業が終わる。
居場所がない、なんて当たり前のことだから何も感じないけど
正直この騒がしさはどうにかならないのかな…
視線を向けると、殆どの人がその席に集まっている。
「水咲くんって何が好きなの?」
「やっぱり可愛いものとか?」
千草「え、なんで分かるの!?可愛いもの大好きだよ〜!」
「ていうかさっきの回答すごかったよな〜」
「羨ましいわ」
千草「そんなことないよ、でもありがと!」
水咲千草。
さっきの小さい子____
今も、汚い感情に塗れたような笑顔をしている優等生。
…俺の目からみた感想でしかないけど、
常に仮面を被っているような感じがした。
彼はクラスのコミュニティの中心にいるようだった。
なのに、周りの人はそんなこと1ミリも気付いてないみたい。
あんなにわかりやすいのに。
そもそも当たり前になっていたりするんだろうか。
元々居なかった俺は多分ここに居ちゃいけないだろう。
彼以上に注目されると、周りの反感を買う気がする。
話しかけられないほうが詮索されなくて楽だから良いけど、
周りから疎まれるのは勘弁だ。
というわけで、適当に歩いて教室から逃げてきた。
薄暗くて埃っぽい。人気もないから恐らく旧校舎か何かだろう。
「…はぁ…」
正直な話をすると怖かった。
あの笑顔が脳裏に焼き付いて離れない。
あの不自然すぎる猫撫で声が耳に残る。
依存性パーソナリティ障害みたいな、
人に自分を見てもらいたい、見続けてもらいたい、莫大な承認欲求のような、
俺には到底理解できないその過激で無造作な感情が
彼を形どっているようだった。
…ああ、そうだ。
母親が、同じような顔をしていたんだ。
媚びへつらうような、
誰かを常に求め続けるような、
欲望に溺れた笑顔をしていた。
チャイムが響く。
そろそろ教室に戻らないと。
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短めですが切りどころだと思ったのでここで切ります!
ちなみに、アキさん千草くんのことを酷評しておりますが
周りの人から見たらその笑顔は自然なものだし、
その声も性格も何時ものことなので全く違和感を覚えてません。
ですがアキさんは鋭い上に色々酷い体験をしてきているので
そういう大きな感情に敏感なところがあります。
だから千草くんの莫大な感情の一部を感じ取れたのかもしれません。
一応千草くんの印象操作にならないように注釈させていただきました。
最後まで読んでいただき嬉しい限りです。
ありがとうございました。