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片思い🍆🍌

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片思い🍆🍌

4 - 第8話 冷酷 (こののこside)

♥

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2022年09月24日

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注意事項は前回同様です。


☃️side


☃️「っは、……はぁ、」


曇った景色と焦点が合わない。

ただ懸命に、動かすのは脚だけ。


とうとう雨が降り出した。

落ちてきた雨粒が、自分の頬を濡らして、冷やして。

それでも頬の熱は冷めきらなかった。

心臓が体の隅々までどくん、と脈打って。

自分がきちんと息をしているのかすら分からない。



狂っていた。



ぼんさんの声が、脳で繰り返される。


「…、行ってきなよ」

「おんりーちゃんは多分おらふくんを待ってるよ」



☃️「くっ……ぁ、はぁっ、」


その言葉が紛れもない真実なら。

でも明らかにそうじゃない、それだけが確かで。


おんりーが求めてるのは、僕の助けなんかじゃない。

ぼんさんはなんで気づいてくれないんだ。

なんで伝わらないんだ。

悔しい、苦しい。


沸騰する頭とは裏腹に、指先から体は冷えていく。

手のひらから離れない爪痕がじくじくと痛んで、心を蝕んだ。


でも、確実に前には進んでいた。




目の前には雨粒が伝うドア。

何も考えずにインターホンを押した。

出てくれない覚悟はしているし、玉砕する覚悟もできている。


心臓が早鐘を打つ。

先輩にあんなにも偉そうな口を聞いて飛び出してきたくせに、手は震えていた。

情けない。

一番つらいのは、俺じゃないのに。

ぎゅ、と強く力を込めても、爪痕が痛むだけだった。


そのとき


🍌「……入って……あいてるから」


インターホン越しに、声が聞こえた。

無事だった、という事実に安堵したのも束の間。

生気を纏っていない冷たい声に、脈が早まった。


☃️「っは、おじゃま、しま、す……」


服の裾から雫が滴る。

迷惑かもしれないなんて考えてる心の余裕がなかった。


天気のせいもあってか暗い部屋。

不安は募るばかり。


けどもう逃げないとだけは決めている。

小さくあかりが灯る部屋のドアを、そっと開けた。


☃️「ぇ、……」

🍌「……ごめんね、わざわざ」


こちらを向いて笑みを浮かべる彼。

明らか本心では無い冷たい微笑み。

心臓が強く締め付けられる。


瞼が腫れていて、目の下にはくま。

目には光が宿っていない。

部屋だって、少し荒れている。


☃️「お、んり……」

🍌「……」


なんで気づけなかったのか。

やっぱり俺は、いつもいつも自分のことばっかり。

そうして何か大切なことに気づけず、失う。

彼はここまで追い込まれていた。

それに気づけなかった。


好きになるどころか、こんなの仲間としてすら失格だ。



☃️「おん、りー…おんりー…っ…」



彼を抱きしめていた。

この一瞬だけは恋愛的感情じゃなくて、彼を想う1人の仲間として。


濡れた俺の身体より、彼の身体の方が余程冷たかった。


☃️「おんりー、ごめん、ごめんな……」

🍌「ふふ、どうしておらふくんが謝るの、?」

☃️「違う、俺が、俺がもっと早く……」


泣きたいのは俺じゃない、のに。

無意識に感情は溢れてゆく。

伝えたいことはあまりにも多すぎて、口から出るのは謝罪だけ。


そんな俺すら、また笑顔で受け止めてくれる。

こうやって彼に背負わせてきたのは、間違いなく俺だった。


☃️「……つらかったよな、苦しかったよな。っなのに、なのに俺っ……ず、っと……」

🍌「気にしないで、ありがとう。」


強がる素振りもなく、おんりーはただそう告げた。

今ならわかる、これは本心では無い。


☃️「こないだ、の撮影の時だって…さ、おんりー、僕のこと心配してくれたでしょっ、」

🍌「……」

☃️「あの時だって、俺よりぜったい、おんりーのほう、がつらかったのに…っ」

🍌「……それは、あの時のおらふくんが、いつもと違くて怖くなったから、」

☃️「俺もっ、ずっとおんりーに対して、同じこと思ってた、」

🍌「……!そうだったん、だ…」


彼の心は、どれだけ話しても溶けてくれない。


やっぱりあの人じゃないと……


分かってはいるのに。

今おんりーを離して、ぼんさんの名を口に出してしまったら。

俺の、この気持ちは…

考えると胸が締め付けられた。


おんりーをこんな状況にさせるほど、愛されていたぼんさんが羨ましい。

その好意を独り占めできたら良かったのに。

叶わないなんてことは分かってる。


☃️「っおんりー、」


もうこれで終わりにする。

おんりーに幸せになって欲しい、という気持ちは嘘じゃないから。


だからもう、これが最後。

どうしようもなく切なくて、涙は止まらない。


『仲間として』なんて言い訳をする心の裏側は、両想いを望む気持ちでいっぱいだった。


ぼんさん、今抱きしめてあげるべきは貴方です。

おんりーを救えるのは貴方だけ。



思考とは逆の僅かな独占欲に支配され、一方的に彼を強く抱き締めた。



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