テラーノベル
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現代
赤目線
昔から雨は嫌いだった。
あの日のことを思い出してしまう。
視界が青に染まっていく。
だから僕は時を止めた。
もう雨に打たれることはない。
写真の中の彼は笑っていた。
スマートフォンをみんなに向ける。
電子音。
確かに写っている5人の姿。
前に使っていたカメラとは随分と性能が変わり、その時を瞬時に閉じ込めることができる。
便利になったものだ。
「…なーに。また俺らのこと撮ってんの?」
「嫌?」
「別に、俺らも見返すの好きだし。」
「そっか…ならよかった。」
「ぶるーくってさ、よく写真撮ってるよね。」
「んー、そうかなぁ?」
「うん。しかもめっちゃ綺麗。」
「本当に?結構テキトーに撮ってるけどw」
適当に撮っているのは事実。
ぶれないように長時間固定する必要なんてない。スマートフォンのカメラを起動させて、中央のボタンを押すだけ。
簡単だ。
構図とか切り取り方はまぁ、何も考えずに撮っているから身に染みついているのだろう。
「なんでそんなに俺らのこと撮ってるの?」
「動画撮りだしたのと一緒。ただの記録だよ。」
「本当にそれだけ?」
「……いつ死んじゃうのか分かんないから。僕らが一緒だったことをちゃんと残しておきたい。」
「なにそれ、そんな不謹慎な理由やめてくんね?wなんか楽しい理由にしとこ。」
「えぇ…じゃあきりやんが考えてよ。」
「え”、まじ?…うーん……」
眉をひそめて考える彼。
僕のどうでもいい一言に対して、真剣に考えてくれる真面目な彼が好きだ。人の助けになりたいという想いが強いのだろうか。
思案に更けている彼をみていると、思いついたのかゆっくりと双眸がこちらを向く。
「たとえ忘れたとしても思い出して、また巡り会うため……とか。」
「……いいね、それ。」
「え、こんなクサい理由でいいの?」
「うん。神父さんとかが言いそうで僕は好きだよ。」
「っ、あぁそう…」
きっときりやんも覚えている。
それでも僕は知らないふり。
なんにも覚えていないふり。
やっと僕らは一緒に居られるんだから。
コメント
2件
ホテペト要素…?みたいなのが入ってるのすごい好きです