テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「お母さん!あのね」
玄関のドアを勢い良く開けて、ドタバタとお母さんの方へ向かった。
キッチンに居たお母さんは優しく微笑んで、「どうしたの?」と聞いた。
「あのね!明日、夜空とショッピング行くんだ!」
「ショッピング?!良かったわね」
「それでさ、可愛い服無い?」
「服ねえ…私の部屋の物ならなんでも着ていいよ」
「はーい!わかった!」
鈴蘭はお母さんの部屋へと向かう。クローゼットを開けて、何着か服を引っ張り出すと、自室に駆けて行った。
全身鏡の前で着替えるとどれが良いかと何着も着替えていた。可愛らしいシャツや、ワンピース、ロングスカート等を眺めて、どれにしようか頭を捻っていた。
30分程経つとそろそろ面倒くさくなってきた鈴蘭は夜空に写真と共に連絡した。
「ねえねえ、どの服が良いと思う?」
そうメールと写真を送るとすぐに返信が来た。
「うーん…3枚目のワンピースが好きかな」
「3枚目ね、わかった!」
「明日、楽しみにしてるよ」
「うん!」
夜空と少しメールをした後、そのワンピースを気に入り、全身鏡の前でクルクルしていた。
そうしてるといきなりガチャ、と言う音を立てて、ドアが開いた。入ってきたのはお父さんだった。ノックもせずに入ってきた事は置いといて、要件を聞くと、お父さんは手に持っていた5000円札を鈴蘭の手に乗せる。
驚いた鈴蘭は返そうとしたが、お父さんはそれを拒否した。
「まあまあ、せっかくのショッピングだし、色々買ってきな」
「うん…わかった!」
「じゃ、お父さんはもう寝るから」
「おやすみ!」
お父さんはバタン、とドアを閉めた。
その後はワンピースをハンガーに掛けて見えやすい所に掛けて置いて、ずっと夜空とメールをしていた。他愛のない話をしていた。
22時、そろそろ寝ようとメールをやめたが、中々寝付けない。温かい飲み物を飲んでみたりしてみたが、全く寝付けないので諦めた鈴蘭は外に出て小さな庭で花に水をやっていた。そうするとどこからか足音、走っている音がしたので、家族かと思って振り向くと、夜空が走っていた。
「え?!夜空?」
「あ、すず、家ここなんだ」
「うん、そうだよ!夜空は何してたの?」
「寝れないからランニングしてた」
「私もランニングしよーかな…ちょっと待ってて!」
「うん、わかった」
そのあと、鈴蘭はお母さんに同意を貰ったあと、夜空と20分程、雑談をしながらウォーキングをしていた。雑談をしていたせいで、走ることはできなかった。だがそれでも楽しかったから良かったかな、と結論付けた。
「前日のワクワク」終
「ん、眩し…」
窓から差し込む日差しに目を細めながら起き上がる。目が痛くなるほどの日差しに目を背けながら、窓を開けて朝の空気を吸い込んだ。
今日は土曜日。そう!ショッピングの日!
目を擦りながら顔を洗って、夜空が選んだワンピースを着る。朝食は軽く。髪は少し巻いて、お母さんから貰ったバッグに荷物を詰め込んだ。
玄関のドアを開けると、強く日差しが差し込む。目を細めていると、お母さんが日傘を出してくれた。白のシンプルな日傘だ。可愛いなー、なんて思いながらスキップで駅に向かった。
駅には着いた、駅の東口と言われたのだが、正直言って何も分からなかったので、とりあえず夜空に電話すると鈴蘭がいる所まで迎えに来てくれた。ほっとして気が抜けたが、ショッピングはこれから!と、駅の中へと足を進めた。
電車
初めて乗った電車。沢山の人が席に座っている。慣れなくてソワソワしてるとすぐショッピングモールに着いた。
ショッピングモール
そこはとても広くて、4階建て、何があるのかが何にも分からなかったので、全部夜空に任せる事にした。
オシャレな服屋。カフェ、雑貨屋。アクセサリー店。色んなお店があって目を回していたが、夜空は既に行くところが決まっていたみたいだ。
「じゃあ行こっか」
「う、うん」
夜空が前を歩く。少し高めのヒールを履いてきたせいか、歩くのが慣れない…
ウロウロと周りを見ると沢山のお店があった。立ち止まる。目に止まったのは、オシャレな洋服屋だった。
「あそこ、行きたいの?」
「あ…ちょっと気になっただけ」
「なら行ってみよっか」
「うん!」
行く気はあまり無かったが、夜空に連れてかれて、そのお店に向かった。
オシャレな服を眺めていたが、値段がどれも高い…2人でそう呟いて、お店を出た。
次に向かったのはカフェだ。
メニューを見ると、知らない名前のドリンクに知らない名前のご飯。とりあえず夜空と同じものを頼んで、1口食べてみると…
「美味しい…!」
「ふふ、でしょ?ここすごく美味しいんだ」
美味しいあまりにすぐに食べ終わってしまった。その後は雑貨屋に行って色々見ていた。
「このシャーペン可愛い…」
鈴蘭はシャーペンを手に取ると、値段を確認した後に、カゴに入れた。
「このボールペンいいな」
夜空はボールペンを手に取ったが、やっぱり…と戻してしまった。それを見ていた鈴蘭は夜空が違うコーナーに向かった隙にそのボールペンを手に取り、値段も見ずにカゴに入れた。
「せっかくお父さんにお金もらったんだから、色々買わなきゃね」
友達のためだから、とカゴの中のボールペンを眺めていたがやっぱり自分のも欲しいな、となって色違いのボールペンももう一本カゴに入れた。
「あ、すず何か買うの?」
「うん!」
「じゃあちょっと会計してくるね」
「わかった!お店の外で待ってるね」
「はーい!」
鈴蘭はレジの方に歩き出す。会計の時にふと、思った。キーホルダー欲しいな、と。
とりあえず会計を済ました鈴蘭は夜空の元に向かい、「キーホルダーも買いに行かない?」と聞いた。 夜空は快く了承すると別の雑貨屋へと歩き出した。
「あ、そういえばさ」
鈴蘭が振り返る。ほんの少し後ろを歩いていた夜空が立ち止まる。首を傾げ、どうしたのかと目で訴えていた。
「はい、ボールペン」
「え、なんでコレ…」
鈴蘭は先程買ったボールペンを手渡すと自分用のボールペンも取り出して…
「お揃いだね!」
鈴蘭がニコッと笑うと困惑していた夜空も聞くのを諦めたらしく、笑い返した。
鈴蘭のボールペンは春らしい見た目。
夜空のボールペンは星を映していた。
ボールペンをバックに仕舞うと、2人はまた歩き出す。今度は少し後ろを歩くのでは無く、大きく1歩前に出て、隣を歩いた。
雑貨屋に着くと2人はキーホルダーエリアに向かい、それぞれ選んでいた。
「どれがいいかなー」
鈴蘭が頭を捻らせていると、夜空が2つのキーホルダーを持ってきた。
「これ、どうかな?」
夜空が持ってきたのは小さなぬいぐるみのキーホルダー。首に着いたリボンは好きな色が選べるらしい、あと追加料金があるが、イニシャルのチャームも付けれるんだとか。
「それいいね!これにしよー」
「じゃあリボンの色も決めないと」
「チャームも付けるか…」
「え?でも…またお金かかるし…」
「大丈夫大丈夫!私に任せて!」
すずのぬいぐるみは熊に水色のリボン。金色のSのチャームが付いている。
夜空のぬいぐるみはうさぎに青色のリボン。
金色のYのチャームが付いている。
購入する時、レジで会計してもらっている鈴蘭の後ろで大丈夫なのか、と値段を見てプルプルしている夜空がいた。
「たしかに…ちょっと高かったね…」
「本当に大丈夫なの?」
「大丈夫大丈夫!心配しないで!」
「すずがそう言うなら…」
その後、鈴蘭と夜空はタピオカミルクティーを買って、飲みながら帰宅した。
次の日、2人のリュックにはお揃いのキーホルダーが着いていたが、2人のお揃いだと気づく人は誰一人としていない。
「当日のドキドキ」終
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!