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2025年6月17日。部屋で雑魚寝をしていた幸太と陽翔は騒がしい音に目が覚める。
「んぁ~?なんだ?」
「おはよう~。なんだか外が騒がしいねぇ」
幸太は腕をポリポリと搔きながら窓のカーテンを開く。外は台風のような暴風雨で雨が窓ガラスに叩きつけられていた。
「うわぁ、すっごい雨だ!……あれ、陽翔大丈夫か?」
「う~ん、これ交通機関止まりそうだよね……」
陽翔はスマホで交通機関情報を確認する。
「あ……やっぱり全部止まってるね。これじゃあ、帰れないや」
「えぇ!やばくないかそれ?仕事あるよな?」
「……大丈夫!」
そう言うと陽翔はすぐさまスマホで何かしらをしている。
「お、おい大丈夫ってどういう事だ?」
「よし!今社員に僕がいない間のスケジュールとかそれぞれの仕事振っといた!」
「えぇ!?大丈夫なのかそれ?」
「うん!こんなこともあろうかと僕の仕事はほぼ終わらしてここに来てるんだ!前回の幸太と遊んだ時に反省したからね~。それに残ってる僕の仕事は他のみんなにお任せできるように今日までのスケジュールも調整してるのさ!」
説明しよう!陽翔は以前幸太と遊んだ際に彼の不運に巻き込まれ病院送りとなって3日ほど入院してしまった過去があるのだ!その時の教訓から幸太と会う日には1週間は自分が居なくても仕事が回るように全体のスケジュールや仕事量を調整していたのだ!
「おぉ……流石スタートアップ企業のカリスマ社長だ……」
「そんなカリスマだなんて~みんなの努力のおかげだよ」
「それを言えるのがカリスマなんだがな」
そう言いながら幸太はラジオの電源を入れる。
「……昨日の北海道の札幌市に続き、現在全国各地で異常気象が観測されています。東北各地では記録的豪雨、落雷、暴風、季節外れの降雪が観測されており、気象庁は東北地方に異常気象特別警報を発表しました。それに伴い各地方自治体では自主避難の指示が出されています。また、西日本でも同じく暴風雨の地域が確認されており、東北、近畿、中四国から首都圏に向けての交通機関は現在運休中であり再開の目処は立っていないとの事です。なお首都圏内での交通機関の運休は現在確認されていません。東北地方で発生している異常気象に対して政府は速やかな対応を協議していくと声明を発表しています。それでは次のニュースです。先日アメリカ・ニューヨークでは観測史上最速のハリケーンが直撃。専門家によると、発生からわずか6時間でカテゴリー5にまで成長するという異常事態でした。また、ロシアでは突如としてマイナス40度の極寒が到来し、都市機能が一時完全に麻痺。モスクワでは「数秒で凍傷になる」という事例も報告されています。一方、南半球では、オーストラリア全域で40度を超える異常な熱波が続き、オーストラリア政府は国民に対して外出を控えるよう警告しています。この世界各地で発生する異常気象に対してWGED 世界政府環境調査局は6月16日、地球温暖化による異常気象の可能性が高いとしつつも説明の出来ない事例が多発しているため別の原因があるとみて調査を始めると声明を……」
幸太は左腕を掻きながら途中でラジオを切る。
「だってよ~。ここだけじゃなかったんだ。首都圏は交通機関止まってなくてよかったな」
――なんか左腕、ヒリヒリするなぁ……。ラジオ電波の影響かな?
「そうだねぇ。首都圏に被害がないってのは見てたから知ってたけど世界各地でも異常気象かぁ。大変な世の中になったねぇ」
「ほんとなぁ。さぁ朝ごはん食べようか!俺の自慢の非常食のレトルトリゾットを御馳走しよう。同封されてた発熱剤が火を噴くぜェ」
「やったぁ!それにしても幸太こそ準備良いね。ラジオと言い1カ月分以上の非常食などと言いちゃんとしてるね」
「まぁ昔地震で大変だったからそこら辺の準備はしてるな。自宅の非常食や簡易トイレなどの備蓄品から避難所などの部屋の外で生活しないといけなくなった時用の持ち出し用の災害避難バッグも用意してるぜ!なんなら野宿だって可能だ!」
実際に備蓄品などは家が倒壊したりして取り出せなくなることを考えて、自宅用、持ち出し用、などそれぞれの状況に対応出来るように準備しておくと安心です。自宅用には最低でも1人に付き1週間以上の備蓄(水などの食料品や簡易トイレや消臭凝固剤などの持ち運びできない重たい物)に加え懐中電灯や手回しラジオ、電池などを用意しましょう。自宅に入れなくなることも考慮して別の場所の倉庫などに置いておくのもいいでしょう。災害バッグなどの持ち出し用には最低でも1人に付き500mlペットボトルを3本程度、レトルトや缶詰などの日持ちする非常食、常備薬とお薬手帳、貴重品(家の鍵、通帳、現金など)、タオルや下着などの衣料品、懐中電灯、手回しラジオ、電池などを用意しましょう。簡易トイレや救急道具、雨具や防寒具なども用意しておくと安心です。避難時に動きにくくならないように自身の身体能力に合わせて最低限の物に留めましょう。特にお子さんや高齢者など一人での避難が難しくサポートの必要な方がおられる場合はその方と避難すると言う事を考慮した上で荷物を調節してください。家用も持ち出し用もそれぞれの家庭や事情により準備する備蓄品などは変わります。まずは自身でネットなどで何が必要なのかを調べた上で、それぞれの事情に合わせて準備をしてみてください。また、避難所が何処なのか、そこまで何時間かかるのかなども把握することも大切です。実際にはここに書いた以上に準備する物や調べるべき事があります。それぞれの命を守るためにまずは調べてみてください。
「す、すごい。僕も準備しておこう……」
「準備しておいて損はないぜ!それじゃあ説明はここら辺にしてご飯だな。今日はレトルトリゾットとこの缶に入ったパンでも食べるか~」
「缶のパンって初めてだなぁ、楽しみ!」
「いろんな味があるからいいんだよなこれ…」
そう言いながら幸太は缶のプルタブをつまみ上げる。その指はどんどん缶から離れていく。
「あ……」
「……へへ、開ける前にプルタブだけ取れちゃった」
「えぇ~それじゃあ缶を開けられないじゃない!」
「ふっふっふ~大丈夫!こんな時の為に缶切り付きの多機能ナイフを持っているのですよ!」
「どこまでも用意周到だ!すごいよ幸太!」
※災害時は何があるのかわかりません。しかしある程度は想定して準備しておくことでいらぬ心配をすることが減るのでぜひ準備してみてください!作者はアウトドアでも使えるようなものもあるのでキャンプの時に使えたらいいなぁと備蓄や準備にハマってしまいました。By作者。
それから2人は備蓄品で朝ごはんを食べながら一息ついた。
「ふぅご馳走様。ごめんね幸太が大変なのにごはんまでもらっちゃって……」
「いいんだよ。それが出来るぐらいに準備してきたからさ」
「本当にありがとうね」
「へへ、こちらこそ誰かとご飯を食べれて楽しかったぜ」
「じゃあ、お互い様だね!」
陽翔はスマホで日課のニュースチェックを始める。
「……あ、幸太見て!?先日茨城で赤いオーロラが見えたんだって!」
「え、オーロラってそこら辺でも見れるの!?すっげぇ!」
「今度落ち着いたらオーロラ見に行こうか!?」
「おう!茨城って俺行ったことないわ。楽しみだなぁ!」
「茨城のは今回だけのたまたまだと思うよ……行くのは北海道の方だよ?」
「あ、そうなの?」
「そうだよ」
「ふっ……ふははは!」
町の喧騒など気にすることなく部屋の中には彼らの笑い声があふれていた。
一方、三日前に話は遡る。
この地球上にはネットで調べても情報の出てこない地図上から消された場所がある。そこは1つの川と豊かな自然が広がっており、その中央には古めかしい宮殿がそびえていた。万が一にもその場所に足を踏み入れれば戻る事は出来ないと言う。そんな場所にある宮殿に向かう人物がいた。
その人物が宮殿の入り口にたどり着くと扉の前に四つの羽を背中に宿し、雷のように煌めき回転する炎の剣を携えた人の姿をした者が八つの瞳で見つめる。
「通られよ」
その者はただその一言を告げると道を開ける。すると重たい扉は重厚な音を立てて独りでに開いていく。
宮殿に入ると広い空間に様々な美術品が置かれている。宮殿に足を踏み入れると奥から音を立てることなく、年齢を想像出来ないほど老いた見た目の者がやって来る。
「ようこそいらっしゃいました。ミフジ様」
その者はミフジを客室に案内して出ていく。そこで数時間待つと再びあの者が音を立てることなく現れ奥の部屋に案内する。その扉からは重々しく厳格な雰囲気が流れていた。老人のような者は部屋の主に確認を取り主から許可が下りたことを確認して扉を開ける。部屋の中には装飾が一切なくただ1つの椅子とその背後に一本の木が生えていた。その木は太い幹と地面に幾重にも根を伸ばしておりその場で長い年月を味わったことが伺える。そしてその前にある椅子。豪華絢爛とも言えない質素な椅子ではあるが、見るものに何人にも近付く事すら許さないような風格を漂わせている。ミフジはそのただ1つの椅子に座る人物に向かい、ゆっくりと堂々とした歩みで静かに赤絨毯の上を進む。
部屋の主は微動だにすることも無く、ミフジがやって来るのを見つめる。
「セルグスク公爵閣下、おひさしゅうございます。こうして再びお目にかかることが叶い、誠に嬉しゅう存じます」
挨拶を返して軽く膝を曲げてお辞儀をする。それに対して相手はゆっくりとしかし重厚感のある声で返す。
「よく来てくれた。そんな堅苦しい言葉遣いは不要だ。ここに来たという事はついに確定したと言う事だな」
「かしこまりました。はい。ですが結果は私共が予想していた物とは違うものでした」
空気が震え張りつめた。
「……どういうことだ。それはこれまでの全てが無駄だったという事ではあるまいな」
セルグスク公爵は問いかける。あまりにも重々しい声にミフジは一瞬息を飲む。
「申し訳ございません。予想とは違う結果ですが計画に支障はございません。当初より監視していた対象者である――は憑依者ではないことが確定致しましたが、現在の憑依されし者が確定しました」
セルグスク公爵の表情が変わる。
「ほう……それは誰だ」
「それは――と深い関係である人物。名を――と申します」
「そうか。T市の大災害を発端として世界各地での異常気象の確認。そして先日の赤気。あの伝承が正しいのだとすれば今回の赤気はもう時間がないことを意味している。するべき事は理解しているな」
「はい、承知しております。直ちに計画を進めて行動を開始致します」
「では、もう下がって良い。失敗は許されぬぞミフジよ」
「御意に従います、セルグスク公爵閣下」
セルグスク公爵からの言葉を受けて、ミフジは一歩引いて挨拶を返して部屋を後にした。
それから三日後、2025年6月17日。10時35分過ぎ。幸太達が朝食を食べて談笑をしている間に世界中であるニュースが流れだす。
「緊急臨時速報です。ただいま世界政府より緊急声明が出されました。世界政府のリチャード・ゴードン事務総長は先ほど日本時間10時25分に緊急会見を開き、現在の世界での異常気象が続いた場合、この地球上での生命維持活動は困難となる状況に陥ると発表。加えてその原因の主犯格である日本国籍――を国際指名手配しました。男は国際テロ組織であるホニャイヤダの代表であり気象操作兵器を開発。その兵器により世界に被害を与えています。現在M県T市に潜伏していると見られており、心当たりのある方はすぐにお近くの警察に通報、相談をお願い致します。貴方の行動で救える命があります」
そして世界は大きく動き出す。
これにて第16話、おしまい。