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本人様には関係ございません。

本人様にご迷惑のない様にお願いします。

フィクションです。

ギルドパロです。非常に捏造多いです。

これにて完結です、ありがとうございました。



「…、?」


自分の意志ではなく身体が動いたので顔を上げれば、ベッドで寝ていたはずのナカムがいなくなっていた。


「あいつ…」


シーツを触るとまだしっかりと暖かかったので、先の振動はナカムがベッドを出ていったものだろうと想像がついた。


「…うるせえな」


きりやんのいびきは部屋中に響いていて、俺もナカムもこんな環境で寝ていられる程に疲れていたのかと呆れる。


「おい、きりやん」

「んぇ…」

「起きろ、おい」

「わぁかったよぉ…」


少しズレたメガネを くい と直したきりやんは、まだ眠いですという顔で不思議そうに首をかしげた。


「あれ、ナカムは?」

「さっき出てった」

「あそ……ふぁあ…あ…。俺達のほうが休んじゃったね」

「全員休むべきだろ」

「うん、それはそうだ」


夕飯作んないと と言いながら立ち上がって、骨をバキボキと鳴らしながら伸びをするきりやんを置いて先に部屋から出る。

夕日はもう見えず、夕焼けだけが空に残っていた。




「おかえりシャークん」

「ただいま、みんなは?」

「まだ寝てるよ〜。目冷やす?」

「…うん」

「はーい、待ってて」

「ありがと」


小さく呟いたシャークんの声を反芻しながらその場を離れる。

やっぱりお礼は言われると嬉しい。


冬場だからタオルを濡らすだけで十分冷やす事が出来るだろうと洗面所に向かう途中、スマイルがこっちに向かって来ていた。


「スマさぁん?ナカムときりやんは?」

「ナカムはどっか行った。きりやんは後ろ」

「何それぇ……」

「どっか行ったんだよ、起きたらいなかった」

「きんときのところかな……」

「あいつ、行くか?」

「うーん…それはわかんないけど……」


「ね゛ぇ置いてくなって!!」

「…」

「あ、きりやん」


プンスカと怒った様子のきりやんが、僕たちのそばまでズカズカ歩いて来て止まる。


「スマイル晩飯作るの手伝えよ」

「えぇ?いやぁ、ぶるーくがやるって」

「ごめんけど僕はシャークんとお話するから」

「あ、てかシャークん帰ってんの?」

「うん、今リビング」

「んでぶるーくは今からどこ行くんだよ」

「洗面所、シャークんの目を冷やすためにタオルを調達しに行くのです」

「そういうことね、ほらリビング行くぞスマイル」


納得したらしいきりやんが何も言わないスマイルをペシペシと叩く。

目だけで不満を訴えるスマイルをきりやんは見ないでそのまま引き連れていった。




泣いたせいで頭がズキズキと痛んで仕方がないのでソファに沈み込んでいる。

最近は今まで以上に涙腺がもろく、ふとした拍子に涙が止まらなくなってしまう。

そのたびにみんなが心配して、目をこするなとか冷やせとか、さんざん世話を焼いてくれる。

知らないうちに限界が来ているんだってぶるーくは言ってたけど、自分じゃあまりわからない。


「シャークんおかえり」

「…ただいま」


ドアが開いたのでぶるーくかと思ったが、入ってきたのはきりやんとスマイルだった。


「怪我、手当てするぞ」

「…スマイルが?」

「ダメか」

「いや…」


きんときが眠ってからはきりやんがそういうのをやるから、今日もきりやんかと思っていたので、思わず疑問が口に出てしまった。

きりやんの方を見ると、困ったような顔で「スマイルの作った飯食べたい?」と言われた。

それは確かに嫌かもしれないと思ってスマイルに怪我をした腕を差し出すと、不満げな顔で救急箱から消毒液を取り出して不慣れながらも処置をしてくれる。


「痛い」

「我慢しろ」

「もっとそこきつく巻いて」

「痛いんじゃねえのかよ」

「痛いのは消毒」

「なんだお前文句言うな」

「…フフ」


なんだか全く変わらないスマイルらしさがおかしくなって、久しぶりに笑いが漏れた。

笑った良い心地のままスマイルを見ると、さっきの難しい顔はどこに行ったのかいつもより優しい表情だった。

俺が笑ったからなのか、よくわからないけどそうだと思う。

スマイルは仲間想いなところがあるから、もしかしたら最近みんなが笑ってなかったのを気にしていたのかもしれない。




いつも通りキッチンに立って料理をしていると、ぶるーくが戻ってきて、2人がシャークんを取り囲んでいる図になった。

なんかおもろいな。

シャークんは目元に冷えたタオルを置いてじっとしていて、スマイルは包帯を巻いていて、ぶるーくはシャークんに他の怪我がないか確認している。


「シャークんさん、ここ怪我してますよね?」

「え、どこ」

「ここ ここ」

「いてっ…つつくなよ」

「あぁごめん、だって見えないでしょ?」

「いやそうだけどさ…」

「シャークん、包帯緩い?」

「んーん、こんぐらいでいい。ありがとなスマイル」

「別に」

「ツンデレですかぁスマさぁん」

「はぁ?」


なんか、きんときが眠り始めてから今までで一番元気かもしれない。

いつもはずっとお通夜みたいな雰囲気で、どうしようもなく重い空気になるのに。


「まあ、いいことなんだよね」


誰にも拾われない小さな独り言を呟いて、切った野菜を鍋に入れる。

晩御飯の汁物は基本的にいつも味噌汁なので、今日も特に凝らずにいつも通り作っていく。

なんだか今日は、きっとナカムも機嫌がいい気がして、久しぶりに会話を弾ませながらご飯が食べられるかもしれないと希望を感じた。

沈黙の食卓はあまりに寂しく、あまりに肩身が狭い。

一緒に食べるならいっぱい話したいし、笑顔で美味しく食べたい。

実際みんなと囲む食卓が好きだから料理担当をやっているのもあって、久しぶりに会話に花が咲きそうだと考えるとそわそわしてしまう。


「やんさん今日のご飯なあに?」

「味噌汁と白米と…、何がいい?」

「お肉!」

「俺夜飯そんなにいらない」

「俺なんでもいい」

「ん〜昼も肉だったじゃん」

「いいじゃあん減るもんじゃないしさぁ」


他愛のない話をしていた、その時だった。


「こちらきんとき。今、起きました」


和んでいた空気が突然固まった。

シャークんも目を覆っていたタオルを取って。

全員で顔を見合わせて、口をあんぐりと開けて。


最初に飛び出して行ったのはぶるーくだった。


「きんときっ…!!!!」


リビングのドアを叩くように強く開き、駆けていく彼に置いて行かれた俺たちは、徐々に状況を理解していく。


「…起きた?」

「声、きんときのだった」

「き、きんときが」


シャークんが冷やしたての目からボロボロと涙をこぼしたのを見て、俺もスマイルも泣く以外なかった。

起きた、起きたんだ。

鍋をかけていたコンロの火を朧げな視界で止めて、ふらりとドアに向かう。

スマイルが泣きじゃくるシャークんを抱き寄せてソファから立ち上がらせているのを見てから、3人で部屋を出た。




「水飲む?」

「飲みたいな」

「持ってくるわ。絶対みんなすぐに来るから、揉みくちゃにされるんだな」

「はーい」


ナカムが笑顔で医務室から出ていく。

笑顔になって良かった。

原因は全部俺なんだろうけど。


ナカムは酷い隈をこしらえていた。

きっと長い間ろくに寝られていなかったんだなと考えるには容易で、しばらくは一緒に寝ようかななんて考えて。

もしかしたら俺が起きないかもとか言ってみんなで寝ることになるかもしれないと思った。


ナカムがあれだけ酷いなら、他のみんなはどうなんだろう。

ぶるーくは、大丈夫かな。


「っは、はぁっ、きんときっ…!!!」

「ぶるーく、ぅわ…!?」


ドアに駆け込んできたぶるーくは、一瞬止まって俺を見るなり勢いよく抱きついてきた。

今にも涙が溢れそうなほど膜が張った目をキュッと瞑り、俺の胸に顔を押し付ける。


「ごめんなさい、僕のせいで、ごめんなさい……!!」

「違うよぶるーく。言ったでしょ、俺がやりたくてやったんだって」

「でも、でも僕がちゃんとしてれば……!きんときは優しいからっ…!!」

「仲間は守りたいの。わがままくらい聞いてよ」

「こんな、わがまま…いやだあ……」


とうとう泣き出してしまったぶるーくの背中を撫でてあげると、小さかったあえぐ声がだんだんと大きくなっていく。


「ぼく、がんばったの」

「そうなの?」

「そうなの」


鼻を啜りながら小さく話し始めたぶるーくに寄り添う。

子供のようになってしまったぶるーくはそのまま言葉を繋げる。


「ずっと泣いてたら…だめ、だから、なるべく…みんなの前では、明るくいようって、思って……」

「無理してたの?」

「わかんない、けど…がんばったよ」

「えらいね、凄いじゃん」

「………。はぁ…やっぱりきんさん大好き。」

「俺もぶるーく好きだよ」

「へへ…起きてくれてよかった」

「待っててくれてありがとう」

「……うん!」


へらっと笑ってみせたぶるーくが俺から離れると、その瞬間にきりやんとスマイルとシャークんが医務室に来た。

きりやんは点滴を見てすぐに直してくれて、スマイルは柔らかく微笑んでいて、シャークんは近づいてきて、さっきのぶるーくみたいに俺に抱きついた。


「心配した」

「ごめんね、ありがとう」

「うん…」

「きんとき、点滴抜けてない?」

「抜けてない、大丈夫」

「ならいいよ」

「きんとき、解熱剤ってどこにある」

「え、変わってなければそこの棚の上から2番目の段の、右の列の手前から4つ目の瓶」

「助かる」

「待って、もしかしてスマさん熱ある?」

「あるけど」

「えぇ!?」

「ね゛ぇ俺聞いてないんだけど!?」

「言ってないし」


スマイルは俺が寝ている間、他のメンバーにバレないからって隠していたのか。

みんな知らなかったみたいで、ぶるーくは驚いてるしきりやんは怒ってるし、シャークんは俺に抱きついたままスマイルをじっと見ている。


「後でお説教だよスマイル」

「あぁ、分かってる」


潔く受け入れたスマイルを不思議に思っていると水を持ったナカムが戻って来た。


「おまたせ、みんないるね。きんときはいこれ水」

「ん、ありがとう」


抱きついていたシャークんはナカムが戻って来るとすぐに俺から離れた。

水が入ったペットボトルはいつもより重く感じて、筋力の衰えを実感する。

またいっぱい筋トレしよう。


水はとても美味しくて、ガサついていた喉が潤う。

みんなは何も話さず、ただ俺が水を飲むのを見ていた。


「…そんなに見られると恥ずかしいんだけど」

「いま俺たちは噛み締めてるんだよ」


ナカムの言葉にみんなが優しい表情をする。

俺だけがわからないらしく、どうも困惑するしかない。


「噛み締めるって、なにを」



「もちろん!きんときがいる日常だよ」




END

この作品はいかがでしたか?

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コメント

4

ユーザー

素晴らしい作品をありがとうございました!とても面白かったです!今日初めてみたんですけど一気見してしまいました‼︎

ユーザー

完結おめでとうございます! きんときさん目覚めてめちゃ嬉しいです!! 熱出てたならしんどいとか有るはずなのにそれを隠して医療担当が目覚めた瞬間熱有るってさらっと言っていたのは笑いました。 さらっとい言ってたから、2度見しちゃいましたww

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