コメント
2件
いちまんななせん超え…?そんなに書けるの尊敬しますわ、、 物語めちゃくちゃいいし最高です。👍️
どうもこんにちは
今回もリクエストです
白青感動ってことだったのですが、なんか好きなように書きすぎてしまいました 年の差BLがかきたかった
文字数は馬鹿多い(脅威の17000文字越え)
【⚠ATTENTION PLEASE⚠】
irxs
白青
白(高校生)×青(世話焼きお兄さん)
青さんタバコ吸ってます
白さん自慰有
R18有
通報❌
地雷さん・純粋さんは閲覧を控えることをお勧めします
誤字脱字は脳内変換してください
『弱いヒーロー』
『ねぇ、僕将来ヒーローになる!』
『ヒーロー?どんな?』
『困ってる人を助けるの!』
『そう、なれるといいわね』
『うん!』
『けどね、ヒーローになるためには、他のヒーローに助けられることも大切なのよ』
『どうして?ヒーローなんだから助けるのが仕事でしょ?』
『今はそう思うかもしれないけど、いつかその時が来るわ』
『そう?』
『ええ、だから、』
あなたにも、いつか現れるかもね____。
「…お邪魔します」
「んー」
久しぶりの外に、初めての家。そして、初めて会う家主。今日から俺は、ここで暮らすことになる。
「どう?俺の家。汚い?」
「え、いや、…まぁ…」
「そこは綺麗って言えよー」
俺よりも高い背の彼が俺の背中を叩いてくる。第一印象、この人は絶対にだらしない。着ているグレーのスウェットはダボダボだし、シャツが少し見えている。そして、部屋からして掃除も苦手なのだろう。踏み場が無いとまでは行かないが、ゴミが床に散乱しているし、片方だけの靴下が放ったらかしになっている。あぁ、やっぱりだらしない。
だけど、今の俺はそんなことどうでも良かった。
「お前名前なんやっけ、しょう?だっけ」
「そうです」
「わかった、しょにだね」
「はぁ?」
「俺は猫宮いふ。年齢は聞くな」
「……は、はぁ…」
「とりあえずどっかでくつろいでてええよ」
…何だ、この人。だらしないってより、自由すぎるのか。リビングにあるソファに腰掛ける。
汚いし、居心地がいい訳では無い。
だけど、ここは、あそこよりずっと安心できる。
今の俺には、寝て、食べて、また寝れる場所があるだけで十分だった。
「あ、なーしょにだ」
「…はい」
「お前って煙草嫌い?」
「え、…いや…別に」
「わかった」
そう言って、煙草を持ちながらベランダに出ていくいふさん。
煙草吸うのか、なんか想像通り。第一印象がいい訳では無いけど、嫌な人ではなさそう。ソファの背もたれに身を任すと、何故か力が抜けてしまった。
「はぁ……」
無意識にため息をつくと、ベランダから声がした。
「お前も大変やな」
俺に対して言ったのか、独り言なのか、分からないくらいの声量でいふさんが呟いた。俺は何も返さずに、近くにあったテレビのリモコンを手に取った。
数日、いふさんの家で過ごしてみてわかったことは、いふさんはとにかく面倒くさがり屋だ。怠惰すぎてびっくりする。ここの家の掃除をするのも大変だった。「料理作ってもいいですか?」と聞くと、「ええけど材料なんもないよ」と返された。見ると本当に冷蔵庫の中はすっからかんだった。自炊を全くしないことが丸わかりだ。風呂掃除とか、トイレ掃除とか、必要最低限のことはしているらしいが、逆に言うとそれしかしていないらしい。
ほら、今も。
「ちょっと、洗濯物くらいちゃんと畳んでくださいよ」
「んえーめんどくさいやーん」
「ぐしゃぐしゃのままだったらしわがつくでしょ!知らないんですか?!」
「そんなんわかっとるよ」
分かってるんだったらやればいいのに。と心の中で呟く。
この人は本当に、何故今まで一人で生きれていたのか。俺が来る前は何をしてたんだ。
「ほら、やってください」
「はいはい、わかりました」
頭を掻きながら俺のもとに歩いてくる。
しばらく二人で洗濯物を畳んでいると、いふさんが手を止めて俺の方を見る。
「なぁ、しょにだってさ、」
「はい」
「俺のこと誰だか知っとる?」
「はい?」
質問の意図が分からず頭を傾げる。
「その、俺がお前とどんな関係なのか、っていうことをさ」
「あー…まぁ、何となくは、」
「…そう」
いふさん。俺の母さんの弟。つまり俺の叔父だ。
俺の母さんは、数週間前、自殺した。俺が家に帰ると、床に散乱した大量の薬と、その場に倒れ込んだ母さんがいた。元々母さんは精神が不安定になりやすい人だったから、家に帰ると倒れてることは何回かあった。でも息はあったし、しばらくすると目を覚ますから、その時も特に気にしてはいなかった。なのに、いつまで経っても目を覚まさないのに違和感を感じて母さんに触れると、人間とは思えないくらいに冷たかった。その時点で、わかった。あ、死んでるんだ。
よく分からなかった母さんだけど、昔から女手一つで俺を育ててくれたし、優しくしてくれた。だから嫌いなんて感情はなく、むしろ大好きだった。なのに、死んだとわかった時は、泣けなかった。何も考えれなくて、ただただ母さんを見つめていた。今思えば、考えられないというより、考えたくなかったのかもしれない。そこから数日間は何も出来なかった。学校にももちろん行けなかったし、ご飯も食べられなかった。警察に通報すればよかったはずなのに、それも出来なかった。倒れた母さんをそのままにして何日間か過ごしていたら、いきなり家に警察が来た。どうやら、いきなり連絡がとれなくなった母さんの母が、家に警察を呼んだらしい。警察の人は倒れた母さんと俺の姿を見て、目を丸くして驚いていた。「何で通報しないんだ」と強く言われた。その時に、我に返った。
人間って、目の前で人が死んでたら我を失うんだ。失ったのは自分自身じゃないのに。
強くそう思った。その後、まだ高校生の俺をどうするか大人が話し合ってくれて、俺が通っている高校に近いところに住んでいるいふさんのところに引き渡されることになった。
「……いふさんは、母さんが死んでどう思うんですか」
「……………人間って、弱いよなって、」
「、なにそれ、そんなの当たり前でしょ」
「…そうか、笑」
どんな人でも、心は脆い。崩れないように頑張って支えてるだけで。本当は、手を離したら直ぐに壊れてしまうのに。
「これからは、俺が守ってやるからな」
「…ありがとう、ございます」
それは、この俺も。
「あ、あと敬語やめて」
「…今言うことですかそれ」
「それ敬語」
「あぁ……うん」
『なぁ、初兎さ、母ちゃん死んだんだって』
『えっ!?ガチで?』
『何か自殺?したらしい』
『えぐ、精神病だったんだろ?』
『そう、やばいよな』
『気使って喋んなきゃいけねーじゃん笑』
「おい初兎ー、おはよー」
「おはよ」
「…あ、あのさー、昨日俺めっちゃ笑ってさー」
「…」
「はっ、いやあの、何だっけ…何話そうとしたんだっけ…」
「初兎くん、大丈夫?」
「何が?」
「あぁいや、何もない!何か私にできることあるかな?」
「だから何が?別に風邪とかじゃないんやけど」
「えっ、ごめん、そういうつもりじゃなくて…」
みんな、偽善者だ。
「…おーしょにだ、おかえり」
学校からの帰り道、たまたま買い物をしているいふさんと会った。
「ふは、びびったやろ、この俺が買い物なんて」
「…」
「実はな、昨日レシピ調べて一日中勉強したんよ、やから今日は俺が飯作る!」
「…」
「………しょにだ?」
何も答えない俺に違和感を感じたのか、少し屈んで心配そうな目で見つめてくる。
「どした?なんかあったん?」
「…別に」
「……そう、じゃあ家かえろ」
この人も、どうせ、
__________________
(…いい匂い)
ソファで寝転がっていると、キッチンから美味しそうな匂いがする。起き上がってキッチンの方へ向かうと、エプロンを付けて料理しているいふさんがいた。
「…何作ってるの」
「お、気になる?」
「うん」
「いひひ、ビーフシチューやで」
「ビーフシチュー?」
「おん、凄ない!?俺がビーフシチュー作るとか!」
ビーフシチューなんて、素買ったらすぐ作れるやつだろって思ったけど、喧しいドヤ顔を見たらそんなこと言えなかった。
「もうすぐ出来るから、あっち座って待っといてな」
「うん」
いつもご飯を食べているローテーブルに顔を伏せていると、コトン、と皿が置かれる音がした。
「おまたせしましたー」
「…ありがとう」
「ど?美味そうやろ?」
「うん、おいしそう」
料理をしないのが嘘だと思うくらい、凄く美味しそうなビーフシチューだった。すぐに食べたくて、静かに手を合わせてから一緒に置かれたスプーンで掬って口に運ぶ。
「…めっちゃおいしい」
「ほんま!?やっぱ一日中勉強した甲斐があったわ〜」
「けど、人参切るの下手くそやな」
「はぁ!?味が美味かったらええねん味がー」
「ふふ、笑」
「笑うな」
包丁使うの2年振りやねん、とかあーだこーだ言ってるいふさんを、じっと見つめる。
「…何?」
「あ、いや、なんも、」
「……なー、俺にはなんも言う気になれへん?」
「えっ」
頬杖をついて、真っ直ぐな青い目で見つめ返してくる。
この人にだったら、言ってもいいかもしれない。
「…学校、たのしくない」
「……うん」
「みんな、俺を慰めてるつもりなのか知らんけど、気持ち悪い」
俺は、母さんが亡くなったからといって変わったものは無い。もちろん悲しいけど、芯の部分は何も変わってない。それなのに、周りがどんどん変わっていく。同情してもらいたいから、慰めてもらいたいから学校に行ってる訳ではない。俺はみんなに、気を使って欲しい訳ではない。いつも通り接して欲しいのに、自分の正義を勝手に俺に押し付けてる。
それがずっと、気持ち悪い。
「わかるんよ、友達の親が亡くなったって聞いて、いつも通り接せれなくなる気持ちは」
「うん」
「やけど…俺は、…」
そこまで言って、言葉が出なかった。誤魔化すようにビーフシチューを食べ始めると、いふさんが口を開いた。
「じゃあもう行かんでいいよ」
「……え、」
「だって、嫌なんやろ?」
「…そう、だけど、」
「お前が変わろうとしたって、周りは変わらんもん」
「…」
「お前が無理するくらいなら、行かん方がいい」
そう言って、またビーフシチューを食べ始める。
かっこいい。心の底からそう思った。
目頭が、少し熱くなった。
_________________
顔に生ぬるい風が当たる。目を開けると、まだ外は暗かった。近くのスマホで時間を見ると、まだ深夜2時。また寝ようかと思ったが、ふと違和感を感じる。風…?窓が開いてるのか?ベットから起き上がると、空になった布団と風で靡くベランダのカーテンが目に入る。俺が来てからいふさんは布団で寝るようになり、一緒の寝室で寝ているのだが、いふさんがいなくて、ベランダが開いている…
「自殺…?」
すぐさまベランダに走ると、いふさんの姿はなかった。下を見ても何もない。リビングや風呂場を探しても、家中探し回っても、どこにもいなかった。冷や汗が流れ出てくる。死んだ?死んでないよな、死んで、ないよな、おねがいだから、
「…いふさん、いふさん!!!」
名前を呼んでも、声が返ってこない。息が段々荒くなっていく。リビングに1人で佇んでいると、玄関から物音がした。
「…お前何してんの?」
「…」
玄関へ向かうと、求めていた青髪がそこに立っていた。
「起きたん?まだ2時やで」
「………はー……」
全身の力が抜ける。ため息をつきながらしゃがみ込むと、いふさんが駆け寄ってくる。
「えっ、なに?具合悪い?」
「……ちがう」
「…そう、はよ寝よや」
「…どこ行ってたの」
「なんかベランダで一服しようと思ったら、タバコ終わってたから買いに行ってきた」
「………」
あんな必死になって探し回ったのに、この人は、ほんとに、
「てか汗えぐいで?怖い夢でも見たん?」
「……なんもない、目覚めちゃっただけ」
「そ、んじゃ寝よー」
「…タバコ、吸うんでしょ?」
「え?あぁ、けどお前寝たいやろ?」
「…俺も、相席したい、吸いはしないけど」
「ん」
太陽の光がほんのり夜空を明るくしている時間帯、暖かい風に当たりながら、俺らの街を見渡す。
「……綺麗やろ」
「…うん」
煙草とライターを手に持って、いふさんが呟く。
「なぁ、正義のヒーローっていると思うか?」
「え、…んー…いないんやない?」
「俺な、小さい頃からずっと、そういうヒーローに憧れてたんよ」
「…うん」
「テレビで見たヒーローアニメが、凄い面白くて、かっこよかったから。」
青い綺麗な髪を、風が弄ぶ。
「やけどな、そういうヒーローも、人間やってことに気づいたんよ」
「…」
「何でも解決できて、誰でも助けてくれる。そんなプレッシャーに押し潰されたくないなら、ヒーローになんてなれない。」
「……うん、」
「ヒーローは強いけど、誰よりも弱いんよ、きっと。」
そう話すいふさんの顔は、泣きそうにも、考え事をしているようにも見えた。
「ふぅ………」
「…タバコって、おいしいの?」
「えー、うまくはないけど、落ち着く」
いふさんがそう言うなら、きっとそうなのだろう。
「俺も吸いたい」
「は?ダメに決まっとるやん」
「…」
「未成年が吸うもんやない」
全部、いふさんと同じにしたい。いふさんが煙草を吸うなら、俺も吸いたい。いふさんがしたいことを、俺もしたい。
「…もう寝よ、良い子は寝る時間ですよー」
「とっくに過ぎてるよ」
「ふは、笑」
この人と、一緒になりたい。
「これ好き」
「え?」
ソファで寛いでいると、耳にイヤホンを付けたいふさんが俺の横に入ってくる。
「この曲、好き」
「あぁ、そうですか」
「聴く?」
「…まぁ、」
よく分からない返事で返すと、無理やり耳にイヤホンを押し込んでくる。曲とかあんま聴かないから好みがないんだよな。
顔を顰めていると、俺の肩に頭を預けていふさんが話しかけてくる。
「好きやない?」
「……わかんない…、」
「じゃあ、好きになってみよ」
意味がわからないが、まだ聴かせるつもりらしい。良さはわからないけど、いふさんが好きというなら、俺も好きだと思えた。
「…てか、これ無線イヤホンやから定番の同じイヤホン二人で使うやつできへんな!通りでキュンとしないはずやわ」
「……ふふ、ふはっ!」
「え?」
「キュンとって…別に有線でもキュンとしないでしょ、ははっ、…は…あ、」
思わず笑ってしまった。恥ずかしくなって俯くと、急に頭をガシガシと撫でられる。
「お前、ちゃんと笑えるんやんけ!」
「笑ってない」
「笑っとったやろ、嘘つき」
「嘘つきじゃない」
「はぁ?もっぺん笑ってみろ」
「やだ」
「全部否定すんな!!!!」
叫び散らかすいふさんを無視して、イヤホンを外す。
「ねぇ、いふさん」
「お?」
「他に、好きなものある?」
「え、んー、酒とか?」
「…そっか、他は?」
「他…甘いもん!」
「例えば?」
「チョコとか」
「……今度買ってきて」
「お、お前もチョコ好きなん?」
「そうやないけど、…食べたい」
「そ、ええよ買ってくる」
いふさんが優しく微笑んだ。それを見て、何故か鼓動が激しくなる。
「なー、そいえばしょにだって彼女おんの?」
「はぇっ?」
やっぱりこの人はよく分からない。何でこのタイミングで聞いてくるんだ。素っ頓狂な声を出すと、わはは、と笑われる。
「いる訳ないやろ!好きな人ですらいないし…」
「えーほんまかぁ?顔真っ赤やでぇ?」
「そういう話に慣れてないだけ!」
「あ、なんかな、好きな人のこと考えると瞳孔が大きくなるらしいで」
いふさんが俺の目を近くで見つめてくる。
「なっ…」
「ほら、好きな人のこと考えてみ?」
はぁ?好きな人なんていないし…考えろって言われたって…
ふと、目の前の青色と目線が合う。
あ、まずいかも、
「え、大きくなっ…」
勢いよくソファから立ち上がる。
「好きな人なんておらんから!!!!!!!」
そう叫んで、早歩きで寝室に向かう。思い切り扉を閉めると、外からいふさんが何を叫ぶ声が聞こえる。
やばい、どうしよう、もう、だめだ、
気づかないフリしてたはずなのに、自覚してしまった、
いふさんが、好きだ。
『…ん、ぁ、…や、』
えっ?
『まっ、て…しょにだ、ぁっ、』
なに、は?どういうこと?
『う、ぁ、ひぅっ…んん、』
なんだよこれ、何でいふさんが、俺の下で、
『…しょにだ、…?もっと、して、…』
「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
がばっとベットから飛び起きる。夢、だ、夢だ。なんだアレは。何であんな夢見たんだ。
「はぁ…はぁ…」
いふさんの布団を見ると、もぬけの殻になっていた。きっと仕事に行ったんだ。今は、それが不幸中の幸いだった。だってあんな夢見たあとにいふさんと会ったら、恥ずかしすぎて逃げ出してしまうだろう。
夢の中で、いふさんは、俺に抱かれていた。叔父を抱くなんて、最低だ。最低だけど、可愛かった。いふさんが好きだと自覚したのが昨日なのに、今日こんな夢を見るなんて。あぁもう、どうしろっていうんだ。そう頭を抱えていると、ふと下半身に違和感を感じる。
「……夢精、」
やっぱ俺は最低だ。
____________________
「ただいまー」
「…おかえりなさい」
玄関が開く音と同時に、いふさんの声が聞こえてくる。
「おっ、今日麻婆豆腐?」
「…うん」
「っしゃー、はよ食べよや」
「その前に手洗って」
「ふはっ、母ちゃん」
先にテーブルに座っていると、洗面所から戻ってきたいふさんもそのまま俺の前に座る。
「いただきます」
いつもの食事。何の変わりもない1シーンなはずなのに、やっぱり思い出してしまう。
なるべく目を合わせないように黙々と食べていると、いふさんが口を開く。
「なぁ、今日お前のベットで寝ていい?」
「はぁ!?」
思わず顔を上げる。
「え、ダメ?」
「…何で?」
「なんか今日職場の同僚から怖い話されて、一人で寝たら普通にちびりそうなんだよ、頼む!」
「…ぇ、や、えぇ…」
何でこんな時に…と心の中でりんごを握りつぶす。今一緒になんて寝たら、いろいろ、駄目になる。本当は絶対嫌だ、と言いたいところだが、ベットを使わせて貰ってる立場でそんなこと言えない。…よし、今日はいふさんより早くベットに入って早く寝よう。そうすれば気づかない内に朝になってるだろう。
「…いいよ」
「よっしゃ、さんきゅ」
「…」
「…お前、ゆっくり食べろや」
こっちはあんたより早く寝たいから早くご飯食べて早く風呂入りたいんだよ!!!元はと言えばあんたが夢に出てきたのが原因なのに!!
いふさんの言葉を無視して食べ終わると、すぐさま風呂場へ向かう。
風呂から上がると、いふさんはもうご飯を食べ終わったらしく皿洗いをしていた。よし、これはいける。俺がとんでもなく髪が長くて、とんでもなくスキンケアに凝っていない限り絶対いふさんより早く寝れるだろう。洗面台に行ってドライヤーで髪を乾かすと、一人で寝室へ入ろうとする。
「は、もう寝んのか」
「うん、眠いから」
「…そ、」
「あ、別に気にせず俺の隣入っていいんで」
「うんわかった、おやすみ」
「おやすみなさい」
怪しんでない。これで今日の正念場はクリアだ。安心して布団に入ると、すぐに睡魔が襲ってきた。あぁ、今日も疲れたな。これで寝たら、もう明日だ。よかった。段々意識が遠のいていく。
『あっ、あぅぅッ、やだっ…!』
…は?
『ひっ、ぅ、…んんっ、い、く、』
待て待て待て。
『いく、しょに、らっ、ぉ゙あッ、!』
「まてぇぇぇぇ!!!!!」
勢いよく飛び起きる。今朝と殆ど同じ状況だ。またあの夢、あの状況、あのいふさんの表情。そして、自立してる俺の俺。…唯一違うとしたら、まだ辺りが真っ暗なこと。
そして、隣でいふさんが寝ていること。
「……んん、しょにだ…?」
俺の大声で驚いたのか、近くで嗄れたいふさんの声が聞こえる。ああ、そうだ、一緒に寝るって言って…それで…、布団に入り直しながら自分の記憶を辿る。
眠たい目を擦りながらいふさんが俺の方へ寝返りを打つと、急に距離が縮まった。
あ、やばい、かも、
「…す、いません、起こしました…?」
「………すぅ、すぅ…」
寝てる、寝てる。けど、まずい、いふさんが、近い。目の前にいふさんの寝顔がある。下が苦しい。元々夢のせいで硬くなっていたモノが、さらに主張を激しくする。
駄目だ、駄目だと分かってるのに、
「…っは、…」
自分の下着に手を入れると、既に先走りで濡れていた。
「…ん、…いふ、さ、っ」
トイレに行けばいいのに、そんな考えも浮かばないくらいこの時の俺は冷静じゃなかった。
夢の中のいふさんと、目の前のいふさんの所為で、興奮が抑えられない。いふさんの匂いと、吐く息と、寝顔が、近くて、ちかい。自分のモノを扱く手が早くなる。
「っ、ふ、…いふさ、…」
いふさん、いふさん、いふさん、すき、いふさん、
「っ…、!…はぁ…はぁ…」
…あぁ、やってしまった。最低だ。実の叔父で、抜くなんて。達した後の虚無感に苛まれながら、ベットから手を伸ばしてティッシュを取る。そのまま風呂場に向かって、下着を履き替える。
『好き』
少女漫画や青春ドラマでよくあるような感情じゃない。純情なんてない、透き通った水のようなものでもない。濁った汚い水が、酷く渦巻いているだけ。これをぶつける相手が、もしクラスの女子だったらば、俺はまだこんなに罪悪感を抱かなかっただろう。しかし、相手は叔父で、俺の身内で、同居人。
どうして、好きになってしまったのだろう。
彼がいつも楽しく話してくれるから?彼が俺を救ってくれたから?彼がよく笑うから?
彼が、俺のヒーローだから?
一緒に寝た日の朝は、いつもより体が重かった。隣にはもういふさんはいなくて、元々一人用のベットに何故か寂しい空間が出来ていた。
重たい足取りでリビングに行くと、いふさんが朝ごはんを作ってくれていた。
「おはよー、」
「…おはよう」
既に食べ始めていたいふさんの前に座って、小さくいただきますと呟く。
「……おいしい、」
「は、そりゃよかった」
昨日のことは殆ど思い出せなかった。思い切り飛び起きたとはいえ、深夜で寝ぼけてたせいかふんわりとした記憶しかない。けど、駄目なことをしたのは覚えている。興奮すると、自制が効かなくなることを身に持って感じた。
「昨日はありがとな」
「え?」
「一緒に寝てくれて」
「あぁいや…まぁ先に寝たし」
「うん」
今考えていたことを話に出され、少しドキッとした。ふと正面を見ると、何か言いたげな顔のいふさんがこっちを見ていた。
「なぁ、あのさ、」
「…はい」
「お前って俺のこと好きなの?」
「…は…」
息なのか声なのか分からない音が漏れる。
ばれ、た?
「いや、その…昨日起きててさ、」
うそ、昨日、俺が、え、
「…別に寝たフリするつもりはなかったんやけど、」
ばれた、完全に、どう、しよう、
「目開けるわけにもいかなかったし…」
きらわれた?きらわれたよな、だって、気持ち悪いもんな、
もし、嫌われたら、俺、どうすればいいんだろう、
俺のせいだ、俺のせいでいふさんが、嫌な気持ちに、
ごめんなさい、
数分間沈黙が続くと、いふさんが朝ごはんを片付けようとする。
「……め、なさい、」
「…えっ?」
それを引き止めるかのように消え入る声で言う。
「…今謝ったよな?」
「……気持ち悪くて、ごめんなさい」
「……」
いふさんが小さくため息をつくと、下を向いている俺の頭を優しく撫でる。思わず顔を上げると、小さく微笑んでいるいふさんと目が合う。
「…あんな、俺が小さい頃、近所に年上のお兄さんがいたんよ」
昔、母さんに作ってもらったお守りがあってな。青くて、猫の形したやつ。俺はそれをずっと大事にしてて、自分のリュックにずっと付けてた。やから出かける時も、ずっとそのお守りと一緒やった。
そんである日な、母さんにおつかい頼まれて、リュック背負って一人で外出かけたんよ。そしたら行ってる道中、当時のいじめっ子とすれ違って。
『おい、いふおまえどこいくんだよ』
『ぇ…お、おつかいだよ、なんかよう?』
『は?なんだよそのたいど、』
そしたら思いっきり蹴られて。
『っ、いた、』
『ははっ、かわいそー』
そこでそいつが、俺のリュックを奪ってきたんだよ。多分、金盗みたかったんやと思うけど。したらそいつがお守りに気づいた。
『…ん?なんだよこれ、ねこ?』
『あっ、それは、』
『こんなもんつけて、きも、おとこのくせに』
そう言ってそいつは、そのお守りをブチって取って、どっか遠くに投げた。
『……ぁ』
『ふははっ、がんばってみつけてこいよ』
俺はどうしても許せなくて、そいつを殴ろうかと思った。けど、そんなことより、お守りを探しに行くことの方に気がいってて。気づいたらそいつの手からリュックを奪い返して、お守りが飛んで行った方に走っていってた。
『はぁっ…はぁっ……』
飛んで行った場所はちょうど植物の茂みで、見つけるの絶対大変だって思って、それに自分の情けなさとかいろいろ混ざって、思わずその場で泣き出したんだよ。
『うぅ、うっ、…ひぐっ、…ぅう…』
そしたら、俺の家の近所の高校生がたまたま通りかかって、声掛けてくれたんだよ。
『…いふくん?どしたん?』
『…ふぇ、?…ぇ、と、』
そん時は、そいつとちょっと顔合わせたことあるくらいだったからよくわかんなくて、でも、少し安心した。
『なんかあった?母ちゃんとはぐれた?』
『…お、まもり、…が…』
『お守り?』
『おまもり、なくなっちゃ、た…の、…ぐすっ、』
お母さんに作って貰ったやつ、って言ったらそいつがにっこり笑って頭撫でてきて。
『おぉそうか、この辺なん?』
『うん…』
『わかった、お兄さんと一緒に探すぞ』
そう言って、茂みの中に飛び込んで行った。それが何だか、とてもかっこよくて、ヒーローみたいで、しばらくずっとそいつの背中を見つめることしかできなかった。一緒に探すって言われたのにな、ふはっ。
辺りがオレンジ色になってきた頃、そいつが声をあげた。
『……んー、このへんか、あっ!!』
『…?』
『あった、あったぞいふくん!!!!』
『ほんとっ!?!?』
『やったな!!』
『やったぁ!!!!!』
一緒に探してた俺も、大きな声で喜んだ。泥だらけの二人が喜びあってるのが何だかおかしくて、思わず笑うと、そいつもつられて笑ってた。
その後そこに俺のお母さんが来て、抱きしめられた。こんな時間まで何やってたのって言われたから、お守り探してたって言ったら、なんか怒られた。
『おにいちゃんが見つけてくれたんだよ!』
『えっ、〇〇くん?ごめんねうちのいふが!』
『ははっ、なんか宝探しみたいで楽しかったですよ』
『ほら、ちゃんとお礼言って!!』
『うん、ありがとおにいちゃん!!』
俺がそう言ったら、そいつが優しく笑って、
『またなんかあったら助けてやるからな』
って言って、帰って行った。
俺はそいつがずっと憧れだった、テレビで見たヒーローが全部そいつに見えるくらいには。そいつのことが凄く大好きだったけど、それは、もちろん憧れとか、人間性に対しての好きだった。
でも、大好きなことには変わりなかったけどな。そいつが引越してから、ずっと泣いてたらしいし。
「なぁ、しょにだ、」
「……」
「お前の好き、は、そういう好きなんやないか?」
…そういう好きって、憧れの好きってこと?いふさんに憧れたから、好きになったってこと?
「お前を引き取った俺が、最悪な状況から救ってくれたヒーローに見えて、勝手に好きだって勘違いしてんだよ」
何を言ってるんだ、この人は、
「お前のことを気持ち悪いなんて思わない。けど、多分その気持ちは間違いや。」
「そんなわけないやろ!!!!!!」
強く机を叩いて、そう叫ぶ。そんなわけない。俺は、俺はいふさんが、いふさんが、好きなのに、
それだけなのに、
「勘違いでも、勝手でもない俺の気持ちを、何でそうやって決めつけんねん!!!!!」
「……しょに」
「今俺の目の前にいるのはいふさんだ、テレビのヒーローでも何でもない。目の前にはあんたしかいないのに、あんた以外をどうやって好きになればいいんだよ…」
「……」
目を丸くしながら、じっと俺を見つめるいふさん。その青い瞳に映る俺は、どんな風に見えているんだろう。必死に、好きだと言い訳を重ねているように見えるだろうか。伝わっているのだろうか、この人に。
そして、彼自身の気持ちは、どうなのだろう。
「……今日は、寝てる。から、しばらく1人にさせて。」
そう言って、寝室へ向かった。今は一回、頭を冷やしたかった。あのままいふさんに気持ちをぶつけてしまうと、自制が効かなくなりそうだった。
…いふさんは、俺のヒーローだ。それは、紛れもない事実。でも、ヒーローである以前に、あの人はいふ。猫宮いふだ。俺は彼が、好きなんだ。彼がよく笑うところも、偽物の優しさじゃないところも、少しドジっぽいところも、全部。
あの人の弱ささえも、全部、俺のものにしたい。
ベットに飛び込むと、いつの間にか眠りについていた。そこから一日中、ずっと寝てしまっていたらしい。夜中に寝室をノックされて、「しょにだ、夕飯は?」っていふさんが言っていた気がしたが、寝ぼけていたせいか何も反応はできなかった。
「…ん」
目が覚めると、まだ外は太陽が昇りかけだった。時計を見ると、朝の4時だった。そんなに寝ていたのか、と思うより先に、違和感を感じた。まだ朝の4時だというのに、布団にいふさんがいなかった。もう仕事に行った?いや、あの人に限ってそんなことない。前は自殺だとか騒いだけど、今はあの時より冷静だったのかそういう考えには至らなかった。
いつものようにリビングに行くと、机の上に1枚の紙が置いてあった。そこには、いふさんの綺麗な字でこう書かれていた。
『しばらく外出る』
息を呑んだ。
俺だ。俺が原因だ。昨日、あんなこと言ったから。気持ち悪がられた。絶対に。でも、あの人が気持ち悪がって出ていくなんてことはない。ただ、頭を冷やしたいのだろう。そう思うしかない。紙の近くには何日間かは過ごせる程の現金が置いてあった。きっとすぐ帰ってくる。それまで俺も考えを整理しよう。
一人で朝ごはんを作って一人で食べる。前の家の時よりはマシなはずなのに、その時より心に空いた穴が大きい気がする。当たり前になっていた二人での生活が、今となっては恋しかった。
そこから数日間待っても、いふさんは帰って来なかった。何回も電話をかけても、全て出ることはなかった。最初のうちは作ってた飯も、今は作る気になれなくてコンビニ弁当で済ませている。
「…しばらくって、いつまでだよ、」
寂しかった。とにかく、いふさんに会いたかった。逃げられたなんて思いたくない。嫌われたなんて思いたくない。けど、もしそれが本当だったら、それは全部、俺のせいだ。そう理解してるのに、少しでも希望に縋ってしまうのは欲張りだろうか。
今は夜の7時、ちょうど夜ご飯を食べ終えて、風呂に入って寝ようと思っていた時、携帯から着信音が鳴った。画面には、ずっと見たかった四文字が並んでいた。
『いふさん』
直ぐに電話に出ると、耳元で声が聞こえる。
『…もしもし』
「も、もしもしっ、」
興奮して少し声のトーンが高くなると、いつもの笑い声が聞こえた。
『…あー、その、元気か?』
「まぁ元気…俺は、ねぇ、どこ行ったん?」
『それは言わんけど…元気ならよかったわ』
「なんで!?なんで言ってくれないの?」
『だって、言ったらお前どうせ今から来るやろ?』
「……駄目なの?」
『駄目、今、夜やから』
「……」
場所を教えてくれないのはムカついたけど、いふさんが生きてること、元気なことに、何より安心した。
『…まぁそれだけ、お前の声聞きたかっただけ』
「なん…待ってよ、なんで」
『じゃあな』
そう言った後、強制的に切られた。今、何処にいるんだ。会いたい、早く。聞きたいことがいっぱいあるのもそうだけど、今すぐに会いたい。それだけだ。今は7時、なら、まだ時間はある。上着を羽織って、勢いよく家を飛び出して行った。
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ここが何処か分からないけど、とにかく走った。辺りはもうすっかり暗くなっていて、警察が通りかかったら絶対に職質される。だけど、とにかく走った。いふさんが生きていることが俺の何よりの動力で。
ゴールの見えない道を走っていると、公園を見つけた。少し休もうと、そこのベンチに腰掛ける。はぁ、と息を吐くと、白く染まった息が出る。そこまで寒いのに、走ったせいか体は熱を帯びていた。近くは家も殆どなく、街灯も数本しか無かった。こんな場所あったんだ。世間は広いな、と実感していると、足音が近づいてくる。
「…こんな時間になにしてんの」
足音の正体は、よく分からない男の人2人だった。キッと睨むと、急にその人たちが笑いだした。
「てめぇガキだろ?良い子はお家に帰る時間ですよ〜」
「あーでも、こんな時間にここいるってことはぁ〜悪い子ってことだよな〜」
あぁ、この人たちは輩か。相手にしない方がいいと思った俺は、無視をし続けた。だが、それが相手にとっては癪に障ったようで。
「ちっ、無視すんなよ、」
次の瞬間、思い切り胸ぐらを掴まれた。
「っ…な、やめてください」
「ははっ、なら金寄越せよ」
金なんて持って来てない。そう正直に伝えたら、相手の目の色が一気に変わった。そして、視界の右側に勢いよく出された手が見えた。殴られる。そう思い目を閉じた瞬間、後ろから声が聞こえた。
「こら、何してんねん」
相手は出した手をすんでのところで止めて、胸ぐらを離した。助かった、と思い助けてくれた人の方を見る。そこには、ずっと求めていたものがあった。
「あ?んだよおっさん、文句あんのか」
「こんな夜中に学生に絡むんじゃない、警察呼ぶで」
「は?警察?呼んでみろよ」
「…あ、もしもし、はい、あの〇〇公園で学生に暴力を振るおうとしてる人が…」
「は!?やべっ、逃げるぞ」
「おう、」
そいつらはすぐにその場から立ち去っていった。
「ふぅ…よかった、」
でも、それよりも、
「っわ、!なんやねん…」
俺は思い切り愛しい青に抱きついた。久しぶりのいふさん、いつも一緒にいたはずなのに、少し離れるだけで心はボロボロだった。今いふさんに会えただけで、俺は今までの寂しさが埋まったような気がした。
「……お前、なんでこんなとこおんねん」
「いふさんこそ、何で…」
「、、んん、その…いろいろ、話したいから、」
一旦離して、と言われる前にいふさんから離れて、またベンチに座り直す。隣にいふさんが座ると、神妙な顔つきで話し出す。
「…その、ごめん」
「……なにが」
「勝手に…出てったこと……」
「うん、それは本当に嫌だった」
「…うん、やから、すまん…」
いつもの朗らかな顔からは想像できないくらい、落ち込んだ顔をしていた。それを見て、俺も思わず眉を顰める。
「どうして、出ていったの」
きっと、頭の整理をする為とか言うんだろうと思ってした質問は、次の意外な答えでひっくり返った。
「……その、俺が駄目だ、って…思ったから、」
俺が駄目だ?何の話をしているんだ。
「どういうこと?」
「俺、が…その……最低だって、思って…」
「なんで!?あの時いふさんに気持ち悪いこと言ったのは俺じゃん!」
「ちがう、気持ち悪くもないし…」
「ならなんで!いふさんに言われたことも、別に傷付いてないし何も思ってないよ。言い返しちゃった俺が悪いし」
「……そうや、なくて…」
隣のいふさんをよく見ると、耳が真っ赤に染まっていた。寒さのせいだと思っていたその耳は、さらに赤くなっていく。
「お、俺が…お前を、好きになっちゃったから…」
か細い声で、だけど俺に聞こえる声で、そう言った。よく見るといふさんの目には涙が浮かんでいて、青い瞳が綺麗に輝いていた。
俺は、そんな彼が、今言った言葉を上手く飲み込めなかった。今これが、現実なのかさえ分からなくなっていた。
「……今…なんて、」
「、、やから、俺は、お前が好きになっちまったんだよ!!!!」
口が悪いのに、顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。あぁ、本当に、本当に、愛しい。思わず優しく抱き締める。すると、いふさんも俺の背中に手を回した。
「…おれ、はっ、お前の、叔父なのに、こんな奴が、お前みたいな、綺麗なやつを、汚したら、だめだって、おもった…から…ちょっとだけ逃げた、」
「汚すってなに」
「お前は、もっとかわいい女の子と付き合って、結婚して、それで…、」
「…それが、俺にとっての綺麗なの?」
「お前の幸せを、俺が、…簡単に、うばってる、」
「俺にとっての幸せは、いふさんと一緒にいれること。それだけだよ。」
そうはっきり伝えると、またいふさんが泣き始める。俺の肩はいふさんの涙でびちゃびちゃになっているだろう。
「…お前に、突き放すようなこと言ったのも、おれが、お前への感情を抑えきれなかったらどうしようって思ったから…、」
「ふふ、俺もそう。」
「……ごめんね、しょにだ、」
「何が」
「勝手に、しょにだのこと決めつけたりして…」
「…うん、けど、一つ言わせて欲しい。」
一度いふさんを離して、二人で向き合う。
「俺は、いふさんが、俺にとってのヒーローだったのは、間違いじゃないと思ってる。」
「…」
俺はいふさんと出会う前、多分、何もなかった。生きてるけど、別に生きたいから生きてる訳でもないし、かと言って生きる理由もなかった。母さんが死んでからは、何もなかった俺が何かを失ったことに、酷く絶望して。何もないんだから、これ以上俺から奪うなよって。学校でも居場所がないし、俺の周りにはヒーローぶってる奴しかいなかった。何もないより、その方が辛かった。
でも、いふさんが俺を救ってくれた。ほんとに、俺の人生のヒーローが現れたって思って。でも、想像しているよりヒーローは、ダサくて、ドジで、脆かった。テレビのヒーローなんかとは全然違かった。なのに俺は、そのヒーローがとてつもなくかっこよくて。弱ささえも、全部かっこよく見えて。それが貴方を好きになった理由だって言ったら嘘ではないかもしれない。だけど、俺は、”ヒーロー”のいふさんが好きなんじゃなくて、”猫宮いふ”という人間が、大好きなんだ。その中には、ヒーローのいふさんだっているし、怠惰ないふさんだっている。こんなにも情けなくて弱いヒーローがこの世にいることが、とても愛おしかった。
「さっきだって、俺を守ってくれたのは貴方だった。俺はいふさんに救われてばっかやな、」
「…んな事…」
「だから今度は、俺がいふさんを助ける。」
「……もういっぱい、たすけられた、」
「…なら、それは建前で、死ぬまで一緒にいたいっていうのは駄目?」
「ふはっ、」
我儘なヒーローやな、
笑い合いながら、二人で唇を重ね合った。
優しく触れた彼の頬は、触れたら壊れてしまいそうなくらい冷たくて、
でも、あったかかった。
※ここからおまけR18です(いふさん視点)
しょにだと付き合って2ヶ月。前よりもカップルらしいことをするようになって、今では結構ラブラブだ。デートだってするし、恋人らしいスキンシップもとる。で、こういうのって普通、年上がリードするもんだよな。そうだよな。なのに、
「はっ、うぁ、っ…しょ、にだ、ぁ…」
「いふさん、っ、すき、かわいい、」
なんで俺が抱かれちゃってんの!?!?え!?おかしいやろ!!!こんなおっさん抱いて何が楽しい!?
「んぅ…ん、んん、っ…」
「…」
枕で口を抑えていると、それを遠くに投げられて口付けをされる。
「声抑えないで」
「う、…は、はずい、…」
「なんでよ、いつも声出してるやん」
「や、なんか…まだこの自分の声慣れない…、」
「…そっか、なら、イキそうになったら俺が口抑えてあげる」
そして、再度腰を叩きつけられる。
「ん、っ…ぁ、…ぅう、」
「はぁ、きもち?いふさん」
「き、もち、…あっ、ん、」
こいつはいつも、俺のいいところを突いてくる。年下のガキのくせに、なんでこんなに慣れてんだよ。くそ。
「ぁ、あっ…い、く、ひぁっ…いく、」
「…」
いく、と声に出すと、しょにだの唇で抑えられる。少し口を開けると、ぬるりと舌が入り込んできた。
「ん、んっ…んんぁ、っふぁ、んっ、!」
確かにこれだと、声が出ないからいいかもしれない、と思ったさっきの自分を殴りたい。声が出ない代わりに、自分の声が耳に響くんだよ。と思っていたら、後頭部に添えられたしょにだの手が俺の耳を潰してきた。
「ん、!っ…ぅ、」
さっきよりも自分の声が鮮明に耳に響き渡る。恥ずかしい。恥ずかしい。こんな声、知らない。
あ、でも、もうやばいかも、
腹が疼いて自然と腰が浮く。
「んっ、んん、~~~ッ、!…」
「は…」
俺がイくと、しょにだの口も離れる。二人の間には、銀色の糸が1本通った。
「……ごめん」
「えっ、なに…が…」
「だって、泣いてる」
そう言われて初めて気づいた。あ、俺泣いてる。
「やだったよね、声」
「…ちがう、やでは、なかったけど、」
「けど?」
「きもち、よすぎて、こわかった、」
「…」
しょにだが顔を手で覆う。
「…はぁー…、もっかい、俺がイくまで」
「ぁ、うん…」
「、どうしてこんなに可愛いのかな…」
「え…?」
「なんもない、ほら足開いて」
「…ん、…ぁ、」
「お前ってさ、彼女おった?」
「え?いない」
「じゃ童貞?」
「…まぁ、」
「ならなんでそんな上手いんだよ」
「ふふ、上手いんだ俺、嬉しい」
「あー違うっ!…そうやなくて…」
「え?じゃあ下手ってこと?」
「そうやない!」
「ははっ、いふさんが可愛いから、自然と上手くなったのかも」
「…何がやねん…」
「こっち見て、いふさん」
「…」
「好き」
「…俺も」
「ずっと、側にいてね」
「こっちのセリフや」
ベランダで交わした会話は、一つのキスに吸い込まれていった。