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#学園
大正
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*‥・うらら°🌱🐇☁・‥*
52
耀聖(ようせい)
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まだ手を付けていない本を受付で借りて、用意してもらった紙袋に詰めて帰路に就く。レアナは、シレントが両手に紙袋を提げて帰るのを不思議に見つめる。
「なんであのバッグ持ってこなかったんだよ?」
「邪魔に見えるだろ。でもあれに入れる方が重たいんだよ」
「重いって……種類ごとで増えるんだろ。本は本じゃねえか」
シレントが首を横に振って、残念そうに肩を落とした。
「それが、本の場合は特殊なケースでさ。タイトルごとに違うものとして扱われるんだよ。なんでそうなったかは、あれを作った人にも分かってない」
「なるほどな……。手に持った方が楽ってわけだ」
「邪魔なのは間違いないけどねぇ」
たわいない話をしながら、帰り道に町の景色を眺める。行き交う人々は、魔族が現れたことなど誰も知らない。安穏とした日常に、レアナは苦い表情だった。
「ギルドの上層部はなんでこれを隠蔽する必要があるってんだろうな」
「まあ、彼らは冒険者じゃなくて商人みたいなものだからねえ」
冒険者ギルドはあくまで冒険者たちをビジネスに利用しているに過ぎない。魔物から獲れる貴重な素材から町の荒事まで様々なことに、人々が冒険者を利用する。ギルドは、その仲介なのだ。駒が減ったところで使える人間がいれば困らないが、ダンジョンでの問題──特に危険視される魔物が湧いた場合──は封鎖せざるを得ず、冒険者自体が減ってしまう。
ギルドの、ひいては上層部の老人たちが、自分たちの利益のために冒険者を手放さないための隠蔽。シレントはそれを間違っているが正しくもあると言う。
「無茶な冒険者たちが出ない分、僕は彼らを非難できないかな。魔族たちを討伐しようなんて考えて、多大な犠牲を払うのはいい。でも倒せなかったら?」
「被害は全人類に向かう、か。まったくもって立派なこって」
それの何が悪いと言いたくもなる。倒すべき敵を倒せずして人類の未来が果たして保証されるものか。魔族は所詮魔族で、人類にとっては敵だ。共存関係を望むシレントは、おそらくは少数派で、誰にも理解されない立場なのだから。
「まあまあ。もし彼女たちが話に応じてくれなければ、そのときは戦うしかない。だからこそ、こうして本まで借りて準備したわけだからね」
「そりゃそうだ。……ん?」
のんびり話しているうちに帰ってきて、道から眺めた家の庭が騒がしいのに気付く。クローディアが先に戻っていて、ルルに何か言われていた。その傍にはシャーロットもいる。三人で何をしているのかとレアナが声を掛ける。
「お~い。何やってんだ、お前ら。喧嘩ならよそでしろ?」
「喧嘩ではないぞ、レアナ殿。この二人に随分困らされておったのだ」
話を聞けば、クローディアが帰って来たときには既にルルとシャーロットが庭先で待っていて、『強くなるにはどうしたらいいのか』と熱心に聞き、あまつさえ稽古までつけてほしいと言い出したので困っていた。
なにしろクローディアは騎士だ。手に馴染んだ剣を振るう接近戦を主体にする。一方でルルは魔法使いで、シャーロットも槍を使うため、どちらの知識もないのにどうやって教えろというのか、と頭を悩まされて今に至った。
「槍はまだしも、魔法使いはうちにおらぬだろう。どうするのだ、仲間に入れても我々が行くダンジョンに連れるには厳しいのではないか?」
ご尤もな意見に、誰も何も言えない中、当事者のルルが声をあげた。
「足手まといにはならないわ。低級だけど支援魔法もたくさん使えるし、インサニアでも生き残れるくらいには……」
段々と自信を無くしたように声が小さくなる。レアナやクローディアを前にすれば委縮して当然だ。二人とも、ルルにとっては白金級の別格。偉そうに足手まといにはならないと言ったはいいが、その言葉が間違っている気がしてしまった。
そんな様子を察したシレントが、覚悟を繋ぐ。
「僕も同意見だ。支援の得意な彼女がいたから、インサニアでは彼女のおかげでぼくも運んでもらえた。でなければ今頃は魔族に殺されてる」
レオの援護があったとはいえ、ルルの助力がなければ矢傷で死んでいた。最後まで諦めず、自分の命さえ擲つ覚悟で繋いでくれたからこその、今だ。その前にも喰われかけた仲間の遺体を奪い返して、シャーロットと共に隠れられたのが良い証拠だ。個人の力は青銅級だとしても、仲間といれば発揮する実力もある。
「あの、わたくしも仲間に加えて頂けるのでしょうか」
シャーロットが恐る恐る手を挙げた。最初こそ絶望に吞まれていたものの、最終的には二度と仲間を失わない、誰かを守れるくらい強くなるという夢を旗に掲げた。その最もたる修行の場として、レアナたちのパーティを選んだ。
「条件は満たしていますわ。銀級以上なら迎えてくれると聞きました」
「私は構わねえが、その前に言うべきことあんだろ?」
あごでくいっと示されて、シャーロットは、あっ、と慌てて胸に手を当てた。
「わたくしの名はシャーロット・ベイリーと申します。数年の間、シレント様にもお世話になったことがあります。どうかわたくしも迎えて頂けませんか」
自己紹介を受けてレアナは満足げに頷いてから、横目にシレントを見た。
「お前、女の知り合いばっかじゃねえか?」
「おじさんのモテ期到来かな」
「それはねえよ。ただ、アジトの生活が平気かなって思ってさ」
ナチュラルに否定されて、ちょっぴりショックを受けつつも、シレントは言われた通りだと全員を一瞥する。見事に若い女性ばかりで部屋の数も足りていない。家自体は広いので窮屈さはないにしても、男がひとりは問題なのではと認識した。
「……そうだね。おじさんとひとつ屋根の下なんて誰も望まないだろうし、僕はあれだ。ギルドの宿でも借りて、そっちで暮らせば────」
「我輩は拒否する。仲間は共に暮らすべきだ、独りにはしたくない」
ずばっと切り込んだクローディアが腕を組んでふんすと鼻を鳴らす。
「パーティでありながら、気を遣わせてしまうのは不本意だ。此処はひとつ、庭も広大なのだから増築すればよい。レアナ殿は最初からそのつもりのはずだ」
すると、レアナはニヤッとして、うんうんと頷いた。
「よく分かってるじゃねえか」
最初からレアナの考えでは十人くらいのパーティになる予定だった。今では大所帯すぎるとも思うようになったが、そのために広い土地を買ったのだ。周りに豪邸が建つ中で、ぽつんとある小さな家はよく揶揄されたが、まったく向き合わなかったのも今日のためだと自信を持って言えた。
「さっそくドワーフ連中と取引と行こう。あいつらに掛かりゃあ増築は二日で終わる。その間は各々で適当にどっか泊って、完成を楽しみに過ごそうぜ」
コメント
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読了しました🌙 「覚悟」ってタイトル、すごく響きました。シレントがギルドの隠蔽体質を「間違ってるけど正しい」って冷静に語るところ、重いけど納得しちゃう。ルルの「足手まといにはならない」って必死な声、シャーロットの自己紹介、クローディアの「独りにはしたくない」――みんながそれぞれの覚悟を持って集まってるのがじんわり来ました。最後の増築計画、希望があって好きです🥀