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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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ピアノ、学校での授業や小テスト、家庭教師との勉強と日々はあっという間に過ぎた。

辛いことばかりだったけど、学校内にはシャーリィがいたし、週末にはルイスがいた。

二人に支えられ、私はロザリーの学校に馴染みつつあった。


「点数、とれるようになってるな」

「でしょ!? 音楽史の小テストは満点が採れたの!!」


ある日の休日、私はルイスと共に学生喫茶にいた。

初めは嫌々だったのに、今は友達のように接してくれる。

それにルイスは屋敷にいる家庭教師とは違う勉強のやり方を教えてくれる。

懸命に勉強したおかげで、私は”得意教科”というものが出来た。


「そりゃ、よかったな」


ルイスは素直に私の成長を褒めてくれた。

ニッと笑う姿に私はドキッとした。


(まただわ……)


ルイスとは勉強を教えてもらう仲である。

けれど、私は段々とルイスの事を異性として意識するようになった。

初めは彼と会う週末が待ち遠しくなっていたこと、次に彼に会うための服や髪型を気にすることになったこと、そして、彼に会うと胸が躍ること。

勉強を教えてもらう際、身体が密着したり、彼の大きな手が私の手に触れた時は心臓が破裂しそうになる。

今、ルイスに笑みを向けられて、私の胸の鼓動が激しく高鳴っていた。


(私、ルイスの事が……、好き)


暇な時間さえあれば、ルイスの事を考えている。

私は気づいてしまった。

これが恋なのだと。

父は母にこのような感情を抱き、交際を申し込み、結婚したのだと。


「な、なんだよ。ぼーっとした顔して」

「その……、期末試験が近いから疲れているだけよ」


だけど、ルイスには私の気持ちは届いていない。

だって、彼は――。


「そんな時期だよな。俺も実地試験が大詰めだしな」

「あなた、自分の試験は大丈夫なの?」

「ここでお前と勉強してれば赤点にはならねえよ。実技は別の所でやってるから心配すんな」

「そう。ならいいのだけど」

「試験が終わったら、半年だ」

「ええ」

「ロザリーに会えるよな」


ルイスはロザリーが好き。

ロザリーの事を話す時、頬や目元が緩み、優しい声音になる。

共に勉強をするさい、彼はきまってロザリーの話を私にする。

初めは、共通の話題だからを気を遣っていたのかと思ったけど、私が彼を意識するようになってからそれは違うことに気づいた。

彼は、成長したロザリーと再会するのをずっと待ち焦がれている。


「会ったら、話したいことが沢山あるんだ」

「……」


ルイスがロザリーに話したいこと。

それは昔話? 今の話? それとも――、未来の話?

ルイスとロザリーはとてもお似合いだと思う。

容姿端麗で士官学校に通っていて、将来は騎士を目指しているエリートの彼と成績優秀で美人で賢い私の妹。

孤児院で別れ、五年後に再会するなんて運命的な出会いだと思う。

父だって、始めは”男のお友達だ”とルイスの事を拒絶するだろうけど、彼の人柄の良さに触れれば認めてくださるはず。

そうなったら、二人は夫婦になる。

ロザリーが幸せになることは姉として祝福したい。

けれど、それを考えると胸がズキズキと痛み、切ない気持ちになる。


「ルイス」

「なんだ?」

「私……、期末試験が上手くいって、進級出来たら欲しいものがあるの」

「まあ、そしたら祝ってやるよ。なんか欲しいものがあるのか」

「うん」


ルイスとロザリーの仲に割って入ることは出来ない。

それをやったら、ルイスに嫌われてしまう。

だから、私のこの気持ちは胸に秘めてもの。

だけど、今だったら。

共に勉強をしている今だったら、気持ちを悟られずに手に入れられる。


「髪留めが欲しいの」

「……俺、貴族が付ける髪留めを買える金はねえぞ」

「年頃の女の子が付けるものでいいの」

「なら、いいぜ」

「ありがとう。楽しみにしているわ」


大好きな人からの贈り物。

母は父に赤い薔薇の耳飾りを貰った。

私も母のように、大好きな人から、ルイスからの贈り物が欲しい。

形見の耳飾りはリリアンさまの物になって、もう私の元には戻ってこないけれど、彼からの贈り物はずっと持っていたい。

そのためだったら、期末試験の勉強も苦ではない。



ルイスと約束した半月後、私はロザリーの学校の期末試験を受けた。


「うう……」


結果が戻ってきた週末。

私はルイスにテストの成績を見せた。


「お前にしては、頑張ったほうじゃねえの?」

「そうなんだけど、ルイスとの約束が伸びちゃった……」


得意な教科とそれなりに出来る教科は赤点を回避することが出来たが、苦手であるに数学と経済だけは赤点を取ってしまった。

後日、再試験を行ってくれるそうなので、今はそれに向けてテストの振り返りを行っている所だ。

落ち込む私にルイスは気遣いの言葉をかけてくれる。


「始めの頃は、全部落とすくらいの成績だっただろ? それに比べりゃ、やったほうだ」

「私、ルイスから髪飾りが欲しいの! でも、赤点取っちゃったから、先延ばしになっちゃうじゃない。それが悔しくて仕方がないの!!」

「お前、そんなに期待してたのかよ」

「もちろんよ」

「……なら、ルール追加してやるよ」


赤点を全部回避出来たら、大好きなルイスから髪飾りを貰える。

私はそのために勉強に励んだのに。

落ち込む私に、ルイスが”追加ルール”と言い出した。


「追試験を乗り切ったら、髪飾りの他にお前に一日付き合うよ」

「えっ!? ほんと!!」

「……おう」


まだチャンスがある。

それを聞いた私は喜びのあまり、勢いでルイスをぎゅっと抱きしめてしまう。

私に抱きしめられたルイスは、驚いたのか、少し間を置いて了承した。


「だから、頑張れよ」

「うんっ!」


私はルイスと新しい約束をして、屋敷へと帰った。



屋敷には私宛に一通の手紙が届いていた。


「……チャールズさま」


手紙の送り主は、私の学校生活をめちゃくちゃにした元凶。チャールズ・ツール・マジルからだった。

拾われ令嬢の恩返し

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