風呂から上がってアリスが用意してくれた、タンクトップに着心地の言い、グレーのスウエットパンツ姿に着替えると、北斗はリビングに足を踏み入れた
するとリビングの明かりは薄暗く絞られ、真ん中にファーの敷物が敷いていて、大きなクッションが何個も並べられていた
真ん中の座卓には美味しそうな料理と、ムードたっぷりの蠟燭が灯っている、メニューは手巻き寿司だと見て思った
なるほどと北斗は思った、これなら料理が苦手なアリスでも、煮炊きしないのだから可能だろう
具材も切ったものを買って来たなら、包丁も使わなくて済む、考えたなと北斗はにんまりする
アリスがワイングラスを二つかざして、嬉しそうに言った
じゃーん「私達が結婚してから今日で半年の記念日よ、ケーキもあるのよ」
ブッ・・・「半年って・・・祝うものなのか?」
北斗はニヤニヤしながら大きなクッションにもたれ、ゆったりとファーの敷物の上に寝そべった
彼女は目を狭めて唇を尖らしこっちを睨んでいる、可愛いすぎるぞ
「祝うものです!」
「わかったわかったwww」
どうやら大人しく言うことを聞いた方がよさそうだ、アリスがワインを注いでくれて、乾杯をして一気に飲み干す
良く冷えていて上手い、こんなお祝いなら毎日でも大歓迎だ
アリスが真剣な顔つきで海苔を手に取り、すし飯を盛って具財を真ん中に乗せて巻いて行く、何がそんなに大変なのだろうか、おかしくて笑いをこらえるのに必死だ
「あーん」
「あーん」
アリスの巻いてくれた具材の量に対して、すし飯が多すぎる手巻き寿司をなんとか、モグモグする、おにぎりのようだ
なかなか飲み込めない手巻き寿司を、口いっぱいに頬張りながら、アリスを北斗の脚の間に引き寄せ、手はアリスの体に触るのに忙しくする
風呂での不発のままの高まりを、可愛い妻に鎮めてもらいたい
「寿司はもういい、君を食べたい」
「私は食べ物ではありません」
アリスの気を引こうとさっきから北斗の手は優しく、太ももの内側を行ったり来たりしている
アリスが体の力を抜いてくったりと、北斗にもたれてくる
「君を舐めまわして、君の中に入って、君の良い所を俺ので突いて突いて突きまくることを、揶揄して「食べたい」と言うのですよ」
優しい声と欲望に燃えた瞳をした北斗が、内太ももの付け根を親指でマッサージする
肌にかかる温かい息の感触に、アリスの背筋は弓なりになったが、北斗の手をすり抜け、すっくとアリスは立ち上がった
「先にベッドに到着した方が、お口で愛してもらえるのよ、ヨーイ!ドンッ!」
「あっ!くそっ卑怯だぞ!」
アリスがクスクス笑いながら、二階のベッドルームへ向かって、階段を駆け足で登り出した
この時の北斗はこれほど速く全力で走ったのは、初めてかもしれないというほどの俊足だった
そしてベッドに到着する寸前で、北斗はアリスを抜いて満足げに、仰向けにベッドに寝転がった
その後の事はよく覚えていない
ただ、ただ可愛い自分の妻に、人生で最高のフェラチオをしてもらい、彼女の体に溺れ、絶頂と同時に眠りについたこと
そして朝は信じられないことに夕べと、同じやり方でアリスに起こされたこと
「北斗さん私のボディソープ使ったのね(笑)赤ちゃんみたいな匂いする」
ギュっと温かいアリスの内側で締め付けられると、全身が震える
彼女の学習能力は素晴らしい、どうすれば北斗が悶絶するかもう心得ている
無理もない、結婚してから半年間毎日のようにやっている、もうアリスは北斗好みの床上手で、ベテランの域に達している
可愛い妻に愛し合う主導権を握られるのは、とてつもなく心地良い
「私とのコ・レ・が大好きな成宮候補(はぁと)」
ハァ・・・「うっ・・・正規の肩書きをバラさないでくれ・・」
朝日が差し込む中クライマックスを迎え、アリスも大声で叫びながら、北斗の上で絶頂を迎えた
北斗も酸欠患者のように息を喘がせ、アリスが絶頂を迎えた瞬間と同時に射精し、魂が空へ噴き飛んだ
絶頂の瞬間はめくるめく至福以外なにもない
北斗の魂は暫く銀河を彷徨って、なんとか地球へ帰還してこれて、心からよかったと安堵した
シャワーをあびてさっぱりした後、庭のミモザに集まる小鳥のさえずりを聞きながら、アリスの作った焦げ焦げのハムエッグとトーストを腹いっぱい食べた
アリスの料理上手になるという、意気込みだけは素晴らしいと思うが
次々とまずい料理を作って周りに迷惑を、かけているのは明や直哉から実は抗議を受けている、なんとか辞めさせられないものだろうか
そして明日の朝食は早起きして自分が作ろうと決意する
玄関でもう1ラウンド始まりそうな熱いキスで見送られ、(北斗は全然かまわないが遅刻しそうなのでやめた)選挙カーで選挙事務所へ向かった
空は晴れ、風は爽やかで、世の中は希望に満ち、ヤル気満々で選挙事務所に鼻歌を歌って入って行った
だからそれまで北斗の頭からすっぽり抜けていた
地方新聞に一面見出しで掲載されている、北斗に胸ぐらを掴まれて顔を突き合わせている、鬼龍院とのカラー写真を見るまでは
デスクいっぱいに開かれた「日刊選挙ニュース新聞」には、額に血管を浮かべて怒っている北斗に、胸ぐらを掴まれている鬼龍院と、ドアップで向き合っている、カラー写真がデカデカと写されていた
そしてさらにその下に
『成宮北斗候補とその対立者鬼龍忠彦院候補があやうく殴りあいに』
という見出しが書かれていた、北斗は感じたことのない体から、血の気が引く感覚に襲われた
そしてあの時の鬼龍院とのやり取りが、ほぼ一字一句正確に記されている記事を、読み進むうちにだんだん吐き気を催した
今朝食べた焦げ焦げのトーストが、喉からせりあがってきそうだ
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鬼龍院候補は成宮候補に向かってこう言った
彼女は一生懸命鬼龍院候補に、股を開こうとしていたけど、結婚するまで肉体関係を結びたくないと懸命な、鬼龍院候補は彼女の性欲をなんとかなだめたそうだ。(省略)我慢できなくなった彼女は成宮候補に、股を開いて結婚した
―ここで言う問題の『彼女』とは、現在成宮候補の正妻である成宮アリス(旧制伊藤アリス27歳)さんで、なんと彼女はあのITOMOTOジュエリーの令嬢で、しかも元鬼龍院候補の婚約者だったことを我々取材班は突き止めた
そこで我々取材班は詳しい話を聞きたくて、彼女のご実家(神戸は六麓荘の伊藤豪邸)に突撃したが門前払いをくらった
しかし問題はこの淡路の周防町の町議会議長の座をめぐって、対立する候補二人が、過去一人の女性をめぐって対立していた事だ。もしこの選挙活動が三人の痴情のもつれの延長ならば、あってはならないことだがそれならば周防町の住民は、ずいぶんとバカにされたものだし、我々取材班はこの町の将来を心から心配する〃
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北斗は新聞をバサッと放り投げ、両手に顔をうずめて自分の愚かさを呪った
これで何もかもおしまいだ
有権者にはまともじゃないと思われるだろうし、これから自分達の政策に関心を持ってもらおうとしても、まずこの事が浮き出てくるだろう
「・・・アリスが鬼龍院の、元婚約者ってバレちゃったわね~・・・でもこんな記事にまですること?」
気がつくと貞子と百子を抱いている、信夫が出勤してきて北斗の横にいた、ふ~・・・と貞子が腕を組んで宙を見上げる、北斗が怒りを露にする
「彼女はここに書かれているような女ではないっ鬼龍院が勝手にそう言ってるだけだっっ!なんだ、このくだらない週刊誌のゴシップ記事みたいなのはっっ 」
バンッと北斗が机を叩いた
「あ~・・よちよち・・大丈夫だよ 」
信夫に抱かれている百子がその音にビクッとなって、ふぇぇ~・・と顔をゆがめる。信夫が懸命に泣きそうになっている百子をなだめて、おしゃぶりを吸わせる
北斗のみぞおちで怒りが渦巻いた
鬼龍院への怒り、彼女との愛をこんな安っぽいゴシップ記事にされた、新聞社への怒り
そして何より・・・・あの時鬼龍院にそそのかされて、怒りをあらわにしてこんな写真を撮られた自分への怒り
後悔の刃がみぞおちに突き刺さる
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