「翔ってさ、鈍感だよね~!」
俺の机に肘をついてニコニコしてるのは、末永彩葉。今、俺に猛烈アタック中らしい。らしい、ってのは俺自身ピンときてないからだ。
「何が?」
「ん~? わっかんないかなぁ?」
彩葉はいたずらっぽく笑いながら、俺の顔をじっと見つめてくる。
「……いや、マジでわかんねぇ」
「はぁ~……ホントに鈍感」
何が言いたいんだか。まぁ、別にいい。俺は瑞希を狙ってるんだし。
「なぁ、彩葉。俺、瑞希のこと――」
「知ってる知ってる!」
「マジかよ、早っ!」
「あんたの好きアピール、めっちゃわかりやすいし?」
「……そんなことねぇだろ」
「あるって。で、翔は瑞希のどこが好きなわけ?」
「んー……」
俺は考えながら、廊下を歩いていく。ちょうど目の前から、瑞希が歩いてきた。
「お、噂をすれば」
「……何が?」
瑞希が怪訝そうに俺を見てくる。
「いや~、俺が瑞希のこと好きって話!」
「あっそ」
バッサリ切り捨てられた。でも、ここで引き下がる俺じゃねぇ。
「瑞希って、今好きなヤツとかいんの?」
「いない」
「じゃあ俺は?」
「絶対ない」
即答!? いや、即答はさすがにキツくね!?
「おいおい、即答は傷つくんだけど!」
「翔が他の女子にアタックしまくってるの知ってるし」
「え、でも俺、今は瑞希一本――」
「この前、朱音にも告ってたよね?」
「ぐっ……」
「昨日は彩葉と楽しそうに話してたし」
「そ、それは違う!」
「なにが?」
「俺は瑞希が本命だから!」
瑞希は呆れた顔をして、俺を見下ろした。
「バカじゃないの?」
「えぇ~!? なんで!?」
「遊びで告ってくるヤツ、好きになるわけないじゃん」
そう言って、瑞希は俺を置いてスタスタと教室へ戻っていった。
……え、遊びじゃねぇんだけど。俺、マジで瑞希がいいんだけど。
「……え、マジで?」
今日イチでショックを受けながら、俺はその場に立ち尽くすしかなかった。
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