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週明け、私は宝山君にきちんと謝った。そして横山と付き合い始めたと伝えた。宝山君は逆にあの日は焦り過ぎましたすみませんと謝ってくれた。なんだか、憑き物が落ちたかのように私への気持ちが先輩としての信頼感に変化したという。
そして、さっそく他の子とデートの約束をしているのを見た。ちょっとだけ複雑。
そしてその週、私と夏樹は何事もなく誕生日を迎えた。二日続けて食事をして、翌日の仕事に影響しない範囲で抱き合うという普通のデートをして過ごした。穏やかで少しだけ激しくて甘い誕生日だった。お互いに、こんな誕生日の過ごし方は初めてだと言い合った。本当に初めて。だってもう過去の誕生日なんて思い出せなくなってるんだから。
金曜日、私と夏樹、サアヤとコトリの四人で軽く飲んで、その後ツクシちゃんのお店に行くことになっていた。女子会プラスワンである。今回だけの特別枠。
まず、私たちがひとしきり冷やかされた。英雄カップルと名付けられた。
そして私たちは、誕生日が過ぎても会社の人たちはまだ優しいのだけど、なんとなく常識の範囲内に収まってきていることを報告した。徐々に厳しい人も出てくるかもしれない。気をつけないとって。
「誕生日のプレゼント交換とかしたの?」
サアヤが聞いてきた。
「なんだかんだ当日はちょっと緊張してたから、今度一緒に買いに行こうってことになってるんだ」
「キャー」
「いいですなぁ!」
「そういうサアヤはどうなったの?」
「うふ。あれから、本当に幼稚園の先生や保育士について話を聞かせて欲しいって言われたから会ったの」
「おー!」
「で、子どもの心理学を学んでる話をしたら、その話で盛り上がっちゃってさ、朝まで」
「キャー」
「……本当に盛り上がったのよ、児童のメンタルヘルスについて」
「作家と活発な議論を交わしたというわけね。なにげにすごいよねサアヤ」
「で、次は女子会について取材したいって言ってたから、そのうち呼ぶことになるかも」
「いいけど、引かないか心配」
「本当にね」
「横山君は大丈夫?」
「うん。だいたいのことは市子に聞いてるし、今のところ楽しいよ」
「じゃ、大丈夫かな。うーん、いやいや、その日は抑えめにしとこうね」
「で、コトリは?」
「特に変化なし! ゆるゆる付き合ってるよ。まだお互い仕事に夢中だし、結婚はまだもうちょっと先かな」
「そうだよね。私たちまだ二十五だもんね」
いつもの感じて飲んで食べて笑った。私も心から笑っていた。多分彼も。
「さて、行きますか」
ツクシちゃんにはそれぞれ報告したいことがたくさんある。
私たちはウキウキしながらツクシちゃんの占い喫茶へと移動した。
……ところが。
「えーっ、ツクシちゃんお休みなの?」
「いつもいるから、お休みって概念なかったね」
副店長の毛先がピンクのロングヘアの女性? が対応してくれた。
「そうなの。年に何回か三週間くらい他の地方の占い屋をまわってるの。今年は珍しく遅い出発となったんだけどね、ちょうど昨日出発したのよ」
きっと、私たちはもう心配ないって思ったんだろうな。不思議なツクシちゃん。今度はツクシちゃんの話も聞いてみたいな。そもそも何歳なんだろ。
「じゃあ、また三週間後くらいにきます。よろしくお伝えください」
「はーい。普通に喫茶店として来てくれてもいいからね」
「ありがとうございます。じゃ、今日はお茶飲んで帰るか」
私たちは占いなしの飲み物をそれぞれ頼んで美味しくいただいた。サアヤだけは、新しいお相手の作家さんとの相性を誰かに占ってもらうべきか、うだうだ悩んでいた。そして結局、
「うーん、やっぱり、ツクシちゃんについていくと決めたから、待つ!」
「待たなくても好きなら進めー」
「それもそっかーあはは」
賑やかな金曜日が終わった。これからも色々あるんだろうけど、素敵な親友たちと素敵な彼氏がいて、そして素敵な占い師さんがついてる。もう過去は過去のものとなった。
私たちは前に進む。ごめんね、前世の私。でももう気が済んだでしょ?
とりあえず今世の私は世界を救ったりしないように気をつけて生きるつもり。夏樹と手を繋いで帰りながら、私はこっそりそんなことを考えているのだった。
〈完〉
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