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「だから、無理だと言っただろう。」
「は?」
女の人は土手に座り込んで、開口一番こういった。
なんて失礼な人だろう。
「お前、私が誰か分かっていないようだな」
「それは、初対面だもの。知ってるわけないじゃない。」
すると、女の人は呆れたように先程よりも大きなため息を吐いた。
「ディアに言われて来た、と言えば分かるか?」
「ディアに?どうして貴方がそれを…」
そう言われると、なんか見覚えあるような気もしてきた。
この偉そうな態度、ちょっとムカつく話し方。
そう、この人は…。
「王妃…。」
私は顔を顰めてその名前を口にした。
「なんだ、私では不満か?」
「不満よ、不満。交代できないの?他の人に。」
「無茶言うな。」
王妃は、軽く私のことをごついた。
「会議をしている所をを呼び出されたかと思えば…妄想娘の保護者になれと言われた。」
「も、妄想娘ですって?!」
「お前の事じゃ!」
そう叫んだ王妃は、もう一度私をごついた。
今度は頭を。
「あなたなんか必要ないわ!家だってすぐ見つかるし、見つからなくても野宿くらい__」
「リーヴルが危ない。」
さっきとは打って変わって真剣な声で、王妃が言った。
「なんですって?」
「二度も言わすな。リーヴルが危ない。」
「あ、危ないって?」
ひとつため息をついたあと、王妃は私が消えたあとのリーヴルについて話し始めた。
「今、リーヴルは過去最大の危機に瀕している。 世界が、消えかかっていたんだ。
不幸なことに消えかかっている世界は、妾たちの王国だった。」
そこまで言うと、王妃は寂しげに顔を伏せる。
王妃のいた世界は、賑やかな王国が舞台の小説だった。
城下町で酒を飲み交わす荒くれ者、四六時中流れている軽やかな音楽。
王妃は会う度に、「うるさくてたまらん」と言っていたが、明らかにその目は笑っていた。
王妃にとって彼らは、我が子よのような存在だったのだろう。
そんな素晴らしい世界が、消えかかっているというのだ。
「国の者は皆、城に避難したが、このままでは他の世界も無事では済まないだろう。」
王妃は私に向き合ってはっきりと言った。
「リーヴルの全てがお前にかかっている。」
「責任重大ってことね。大丈夫、任せて__」
「妾も協力しよう。だから必ずリーヴルを救え。わかったな? メシア。」
「もちろんです、王妃様。」
自信たっぷりの笑みで答える。大丈夫、創造神を説得して、世界を救うだけ。
「救世主(メシア)の名にかけて、必ず成し遂げて見せます。」
私がそう言うと、王妃は小さく頷いた。