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「待てないって……結婚をか?」
「そうよ! 結婚! もうこうなったら、目指すは3番目よ! この調子で5年も待っていたら、何番目になるか分かったものじゃないわ……」
ムツキの問いに、リゥパは顔を急に離して、少し大きめの声で話し始める。彼女は明るく軽そうに言っているが、内心、ナジュミネを羨ましく思っている。
私にもあんな風に優しくしてほしい、私もあんな風に心配されたい、私もあんな風に隣にいたい。そのような感情が渦巻いている。その裏返しでいつもより大胆に行動できているともいえる。
「いや、そんなことは……」
「……ハーレム、作りたいんでしょ?」
リゥパはそう呟いてジト目でムツキを見つめる。彼は冷や汗がたらりと出てくる。
「それは! いや……まあ、否定できない……ハーレムは男の夢なんだ……」
ムツキは咄嗟に口を開こうとするが、リゥパの目をまじまじと見つめていると、もごもごと口籠り始め、ようやく絞るように言葉を出す。
「やけに素直ね? それはそれで素敵だけど……それで、神に? 魔人族に? そして私が妖精族、となると、種族コンプリートでも目指しているのかしら? だとしたら、少なくとも、人族、獣人族、半獣人族あたりがまだ残っているじゃない! 私、さすがに5番とか6番とかは嫌よ! でも、ムッちゃんを諦めるのはもっと嫌! だから、ここで、勝ち取るわ!」
リゥパはまくし立てるように話し、最後にガッツポーズを決める。彼女の意志は固いようだ。
「たしかに、旦那様なら少なくとも5人、いや、もっと妻ができそうだ。男はスケベで、旦那様とて例外ではない。作れるだけ作るに違いない」
「……ナジュ、それはフォローのつもりなのか?」
ムツキはナジュミネの言葉に頭を思い切り叩かれた気分になる。
「いや? 妾は事実を示しただけだが? それに……男らしい旦那様は好きだぞ?」
「ぐっ……申し開きはありません」
ナジュミネが頬を赤らめながら言うので、ムツキは男として反応してしまう。彼には反撃する余地もなく、ただただ言われたことを認めるほかなかった。
「というわけで、一緒にパパを説得してもらうわ。それがお願い」
「では、妾はアルと一緒に戻ろうか。妾がいたのでは、話がこじれるだろう」
ナジュミネが気を利かせて、アルと一緒に帰ろうとする。しかし、リゥパはその言葉に首を横に振っていた。
「いえ、ナジュミネにはムッちゃんの第二夫人として、パパに紹介したいわ。話には聞いているでしょうけど、実際に見た方がお互いにいいわ。今後、会った時に侵入者と間違われないようにね」
「……妾も助けてもらった身だ。引き受けよう」
ナジュミネは自分が、こうやってどんどんムツキの妻が増えていくと伝えるための材料になるのだろう、と思ったが、先ほどのこともあり無下にすることもできなかった。
「ナジュ、やけにリゥパに協力的だな」
ムツキは、昨夜に激しい戦いをした2人とは思えない仲の良さに少々戸惑いを覚える。仲が悪いよりはもちろん仲が良い方がいい。
「もちろん、旦那様と一緒にいられる時間が減るのは嫌だ。しかし、リゥパは……根はいいし、優しくて、周りもよく見ている。それに、旦那様のハーレムが増えるということは妻である妾の鼻も高い」
ナジュミネは一言二言の悪口をしれっと入れようかと思っていたが、自分も下がるような気がして思い直したようだ。ただ、妙な間が開いてしまったので、ムツキとリゥパが違和感を覚える。
「……ナジュミネ、私の援護をしてくれているでいいのかしら?」
「あぁ。妾は旦那様とリゥパの結婚に賛成だ」
その点に間違いはないので、ナジュミネは力強く答える。
「うーん。なんか妙な間があった気もするけど、その賛成してくれる気持ちを受け取っておくわ」
リゥパはある程度飲み込んで、微笑むことにした。
「わかった! 俺も男だ! 話をつけよう!」
ムツキは外堀を埋められていく感覚に陥ってしまうが、リゥパの気が変わらない内に彼女を手に入れたいという気持ちもあった。半分は完ぺきな下心、もう半分が彼女の願いを叶える気持ちである。
「ほんと? やった! ムッちゃん、大好き、愛してる!」
「む」
リゥパがそう言いながらムツキの頬に何度もキスをするので、ナジュミネの顔が少し険しくなる。
「そうしたら、エルフの村に行くか」
「マイロード、お気をつけて」
ムツキはアルとラタ、妖精たちと別れて、リゥパ、ナジュミネ、ルーヴァとともにエルフの暮らす村へと足を運ぶ。
「アル様、時間があるなら、俺の話を聞いていってくださいよ!」
「……そうですね。いいでしょう」
「にゃ?!」
「ばう?!」
「ぶぅ……」
アルはラタの必死な姿に断り切れず、ほかの妖精たちも巻き込んで独演会を聞くことになった。そして、それが2時間もかかることになってしまい、彼らの帰りが大幅に遅れてしまった。