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この物語は,ある不思議な「能力」をもった一人の青年と,ほんの一欠片の日常の話だ。


[先生]は~いここテスト出るからね~


いつもの教室で、間延びした先生の声が響いた。

キーンコーンカーンコーン

[先生]はい!じゃあここまでノートに写してから休み時間に入ってください。号令

[生徒]起立 きをつけ 礼

ありがとうございました

ガヤガヤ

[颯斗]拓海~サッカーしに行こう

[拓海]わかった。ノートかいてからすぐ行く

僕はそう返答した。

[颯斗]あれ?いつも”書くのが早い”拓海だからもう書き終わってると思ったわ。お前らしくないな。何かあった?

[拓海]何も無いよ。てか,そういうお前はノートに書き終わったのかよ

[颯斗]え?あぁまぁ…書き終わったけど?


嘘だ。


[拓海]お前って本当にわかりやすいよな


[颯斗]そうか?まぁ嘘なんてついても特はねぇしな


[拓海]たまには自分で書けよ

いつも写真送ってんの誰だと思ってんだよ

[颯斗]わりぃわりぃ

いつもありがとな


一通りノートを書き終えたところで、僕は能力を使う


[拓海]Remind


[先生]は~いここテスト出るからね~

パタン

僕は授業の内容を”書き終えた”ノートを閉じた。


これが僕の能力

一日の中ならいつの時間にも時間を戻すことができる。

わかりやすく言うなら、一日限定のタイムリーパーみたいな感じだ。

もちろん僕のこの能力について知っている人は誰もいない。

僕が掴んでいたもの,持っていたもの,着ていた服,触っていた人は、一緒にタイムリープできる。

この「能力」にはゲームのように,強い制約がある。

好きな時間、好きな瞬間に戻れる代わりに、1日3回しか使えないというものだ。

まぁ慎重に使えばあまり気になることはないのだが。


キーンコーンカーンコーン


[先生]はい!じゃあここまでノートに写してから休み時間に入ってください。号令

[生徒]起立 きをつけ 礼

ありがとうございました

ガヤガヤ

[颯斗]拓海~サッカーしに行こう

[拓海]OK 今度は俺が勝つからな!


[拓海]また負けた~

[颯斗]サッカー部なめんなよ?


颯斗は笑いながら言った


僕は過去一度も勝負事で「能力」を使ったことがない。理由は,ただ単につまらないからだ。先の展開がわかるのは面白味に欠ける。”初めて”だからこそ面白い。


キーンコーンカーンコーン


[颯斗]次の授業何やったっけ?


[拓海]次は数Ⅱやと思う


[颯斗]うわだる~


[拓海]それな~





キーンコーンカーンコーン


[颯斗]じゃあ俺は部活行ってくるわ

お前も部活入れば良いのに


[拓海]俺は勉強したいんだよ


[颯斗]真面目だな

あんまり無理すんなよ


[拓海]わかってる。ありがとう

お前も部活頑張れよ


[颯斗]応!


家に帰っている途中に見た光景に,目を疑った。

家がない。

解体工事?時間があるわけ無い。朝は普通にあったんだ

離婚?一日で家が消えるわけ無いから違う。

理由を模索しては,理論がそれを否定するのを繰り返した。


バッ


辺り一面が草原へと変わった

何が何だかわからなくなり、頭がバグりそうになった。


「?」混乱しているようだね。

無理もないよ


この瞬間,俺は迷わず言った


[拓海]Remind


キーンコーンカーンコーン


[颯斗]じゃあ俺は部活行ってくるわ

お前も部活入れば良いのに


[拓海]あ……ははっ…そうだな


先程の出来事が衝撃的すぎて曖昧な返答になってしまった。


[颯斗]元気ねぇな

何かあったか?


[拓海]何でもない

俺帰るわ


[颯斗]あんまり無理すんなよ


[拓海]ああ


今日「能力」を使える回数は残り


       ”1回”



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