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俺
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#少女レイ
柚子ゼリー
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七月の終わり。
窓から吹き込む風が、机の上のプリントを揺らした。
「ねえ、のあさん。これ、さっきからずっと飛んでくるんだけど」
「えっ、あ、ごめんなさい! 私のプリントかなぁ?」
「いや、私のなんだけど!?」
「あははっ、ごめんね、えとさん!」
のあさんは口元を押さえて笑った。
「いや、笑いごとじゃないでしょ!」
そう言いながら、私もつられて笑ってしまう。
私とのあさんは、長い付き合いだ。
昔から一緒にいるせいか、わざわざ気を遣わなくても自然に話せる。
のあさんは、ふわふわしていて優しい。
ちょっと心配性で、誰かが困っているとすぐに気づくくせに、自分のことになると妙に曖昧な笑い方をする。
「のあさん、今日みんなで遊ぶんだけど、来る?」
「行きたいです! でも、みんなの予定は大丈夫かな……?」
「みんなが誘ってんだから大丈夫でしょ」
「そっかぁ、よかった!」
のあさんは、安心したように笑った。
その笑顔を見ると、なんだかこっちまで安心する。
だから、私は気づかなかった。
のあさんがときどき、笑ったあとにほんの少しだけ寂しそうな顔をすることに。
放課後、私たちは二人で駅まで歩いていた。
空は透き通るような青色で、蝉の声がどこまでも響いている。
「今年の夏、いっぱい思い出作りたいですねぇ」
「何それ、急に」
「だって、せっかくの夏休みだもん!」
「まあ、それはそうだけど」
「えへへ。えとさんと、みんなと、いっぱい遊びたいなぁ」
のあさんは嬉しそうに前を歩いた。
ふと、私は思いついて声をかける。
「じゃあさ、来年もまたみんなで遊ぼうよ」
のあさんの足が、一瞬だけ止まった。
「……来年も?」
「うん? 何、その反応」
「あっ、ううん! そうですね。来年も、遊びたいです」
いつもの柔らかい声。
いつもの笑顔。
なのに、どうしてだろう。
その返事だけが、妙に耳に残った。
「……当たり前じゃん。何年一緒にいると思ってんの?」
私がそう言うと、のあさんは小さく笑った。
「……そうですね」
その声は、蝉の鳴き声に消えてしまいそうなくらい、かすかだった。
家に帰ると、のあさんからメッセージが届いていた。
『えとさん、今日はありがとうございました!』
『明日も、いっぱいお話ししましょうね』
私はすぐに返信した。
『いや、今日まだ全然話し足りないんだけど笑』
すると、すぐに既読がついた。
『ふふっ、じゃあ明日もですね!』
『約束ですよ』
「……何それ笑」
私は笑いながら、スマホを置いた。
そのとき、もう一件メッセージが届いた。
『えとさん。もし私が急にいなくなったら、どうしますか?』
「……は?」
思わず声が出た。
何それ。
急にどうしたんだろう。
私は少し考えてから、返信した。
『何その質問笑』
『普通に困るでしょ。みんなも私も』
送信して、しばらく待った。
既読はついた。
けれど、返事はなかった。
「……寝た?」
私は深く考えず、スマホを伏せた。
明日になれば、またいつも通り話せる。
そう思っていた。
だって、のあさんは明日も来るって言ったから。
約束したから。
――その夜、のあさんからの返信は、最後まで届かなかった。
コメント
1件
第2話、読み終わったよ……! 「来年も?」のところで一瞬止まるのあさんの描写、めっちゃ気になった。あと最後のメッセージ、「普通に困る」って返したえとさんの温度差が逆に切ないな。明日の約束がちゃんと叶うのか、すごく続きが気になる展開だった✨ めあさん、じわじわ来る伏線の置き方うまいね!