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覚悟を決めた私は、戦闘機動にまで加速した“ギャラクシー号”を操縦しながらセンチネルのスターファイター目掛けて突っ込んでいく。
古い情報だけど、センチネルの無人兵器は一旦目標を見つけると、その目標を撃破することに集中して、周囲への警戒が疎かになる。
これはコスト削減のために高性能AIを搭載していないためだと考えられているけど、今の私にそんなことは関係ない。
その情報がまだ有効なことを信じて突っ込むだけだよ。
双方の距離がどんどん近付いていくと、センチネルのスターファイターは3機が三角形のような陣形を組んで飛行しているのが見えてきた。陣形を崩さず執拗に輸送船を狙ってて、私には気付いていない。
お互いに超高速で機動しているのになんでそれが分かるのか。
アリアが補助してくれてるというのもあるけど、一番の理由は私達アード人の動体視力や反射神経が地球人の比じゃないことも理由として挙げられるかな。
宇宙空間の戦いは、地球上の戦闘機のドッグファイトより遥かに速い。
私達アード人には優れた身体能力と優秀なAIの補助があるからそれが出来る。それだけだよ。
「アリア!攻撃用意!」
私は三角形の左下、多分3番機かな?そいつに狙いを定める。モニターには拡大された目標が表示されて、ゆっくりとロックオンした。
すると流石に気付いたのか、センチネルのスターファイターも機動を変えるけど、遅い!
「食らえ!」
引き金を引くと4門のビーム砲からビームが放たれ、緑色のビームはそのまま3番機に直撃。エネルギーコアを撃ち抜いたのか、大爆発を起こした。
『ティナ、シールド減衰率10%です』
「まだまだ!」
宇宙じゃ爆発した破片は減速しないでそのままのスピードで飛び散る。当然それが当たるわけだから、シールドや堅い装甲は必須なんだよね。センチネルのスターファイターはあんまり頑丈じゃないけど、コイツらの強みは数だ。
私は逃げる2機に意識を切り替えて2番機らしき機体に狙いを定める。
どうやらさっきの爆発の破片を派手に食らったみたいで機動がぎこちない。チャンス!
「もう一丁!」
私は素早く背後に回り込んで、引き金を引いた。
再び発射されたビームが2番機を貫いて大爆発を起こす。私はそれに巻き込まれないように反転離脱しながら、残る1機を探す。
『ティナ!後ろです!』
「やばっ!?」
敵の1番機は私が2番機を撃破している間に背後に回り込んで来た。
「アリア!シールド出力最大!振り切るよ!」
『了解!』
センチネルは赤いビームを撃ってきて、それが“ギャラクシー号”を霞めていく。私は速度を上げながら不規則な機動を行って振り切ろうとするけど……駄目だ!普通のやり方じゃ振り切れない!ピッタリ張り付いてくる!
『ティナ!シールド減衰率20%を越えました!』
このままじゃ私の体力が尽きた瞬間破壊されて、スペースデブリの仲間入りを果たしちゃう!
私は素早く周辺を見渡して、惑星を取り囲む巨大で綺麗なリングに目を付けた。
「アリア!無茶をするよ!これからリングに突入する!それしか方法はない!」
『無茶ですが、それ以外に方法はありませんね。各センサー強化します』
「それと!ビームは次の1発だけでいいよ!残りのエネルギーはシールドに回して!」
『了解しました。リングに突入します』
リングといえば土星が有名だよね。実は木星や海王星にもリングがあるらしいけど、まあ誰だって最初は土星をイメージするはず。
で、あの綺麗なリングなんだけど。その正体は。
「うわわっ!?危なっ!?」
無数の小さな氷の塊だったりするんだよね。密度が凄いんだよ。語彙力が不足してきたけど。
そんな中を私はアリアのサポートを受けながら超高速で飛び回る。生きた心地がしない。
センチネルも追い掛けてきてる。
「恐怖なんか知らないもんね!そりゃ追い掛けてくるか!アリア!合図をしたらスラスター全部を逆噴射!」
『G緩和機構にも限度がありますよ』
「私死んじゃう!?」
『死にはしませんが、痛みは伴いますよ?』
「上等!」
私は更に速度を上げる。モニターとセンサーを睨み、前世より遥かに優れた動体視力と反射神経でリングの中を飛び回る。ロマンチックだよね。命を狙われてなきゃだけど!
「アリア!今!」
『逆噴射します!』
急に逆噴射を掛けた。つまりは急ブレーキだよ。“ギャラクシー号”のG緩和機構は優れてるけど、これじゃ全部を緩和するのは無理。なにが起きるかといえば、強烈なGで私は前に引っ張られて、停止した瞬間反動で座席に押さえ付けられる。
つまり、背中と座席に挟まれた翼がとっても痛い!
「あーっ!いったいなぁ!もう!」
私が急ブレーキを掛けるとは思わなかったんだろうね。センチネルスターファイターが私を追い越して目の前に飛び出し、そこにあった巨大な氷の塊に激突。ダメ出しでビームを撃ち込んでやると大爆発を起こした。
「眩しい!」
強烈な閃光で私は手で目を庇う。
次にとんでもない衝撃が機体を襲う。至近距離だったから、破片をモロに受けちゃったわけなんだよね。
『シールド減衰率80%。ギリギリでしたね、ティナ』
「二度としたくないよ、アリア。ふぅ……翼が痛い……」
翼って神経の塊みたいで、滅茶苦茶敏感なんだよねぇ。間違っても迂闊に触って良いものじゃないよ。うん。
『センチネルスターファイターの反応消失。他には見当たりません』
「良かった。アリア、船は?」
私が戦ったのは、あの船を助けるためだ。私はリングから脱出しながら周囲を探索する。
『エンジン部に深刻なダメージを確認。推力が著しく低下しています。惑星の引力に捕まりました。このままでは、二時間以内に墜落します。いえ、正確には惑星の重力に引き裂かれます』
「それを見過ごすなんて出来ない!救難信号はまだ出てる!?」
『まだ発信されています』
「なら乗り込むよ!生存者を探す!」
『ティナ、あの損傷では生存者も絶望的です』
「それでもだよ!」
無駄足になっても良い!もし生き残りが居るなら助けたい!
『分かりました。ですが、私もあなたをサポートする存在として、貴女自身の安全を最優先にさせていただきます。探索は1時間のみ、宜しいですか?』
「ありがとう!アリア!サポートお願いね!」
頼りになる、そして融通が利く相棒に感謝しながら私は徐々に惑星に落下を始めた船に“ギャラクシー号”を近付ける。タイムリミットは1時間。何とか生存者を探し出さないといけない。もし居なくても、彼らの情報を調べて伝えたい。犠牲者を弔うために。