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次に目を覚ました時には太陽は落ち、空はオレンジ色に染まっていた、紗理奈は時計を見た
「わぁ~・・・もう夕方じゃない、5時間も私寝てたの?これじゃ今夜は眠れないかもな~」
子宮の痛みはあれから嘘のように収まり、どこかスッキリしていた、しかし次は腰が痛い
「あいたたた・・・きっと寝すぎたのね・・・シャワーを浴びたら少しお散歩しよう」
う~ん!とベッドの端にひょいっと座った
ズキンッ「痛っ!!」
途端に激しい腰の痛みでうずくまった
ズキン!ズキン!ズキン!
その痛みは今まで経験したことがなかった、腰から尾てい骨までジンジンしている、途端に血の気がサーッと引くような感じがした、痛みで体が震え、冷や汗が出た
ドキン・・・ドキン・・・「な・・・何?・・・何なの?」
心臓がドキドキする、しばらく恐怖でじっとしていると、その痛みは治まった、しかし心臓はまだドキドキしていた
ふぅ~・・・「やっぱり・・・明日・・・病院に行こう・・・何でもなくても心配だし・・・ね?マルちゃん? 」
そう言って下腹部をやさしく撫でた、それから紗理奈は畑に行って今日の晩御飯用に、きゅうりとトマトを収穫した夕食はこれでサラダでも作ろう
お福は買い物に出かけていた、じっとしていると何だか不安に駆られるので、のんびりと座ったり体を動かしたりした
しかし下腹部の痛みはどんどん、激しくなって来ていた
とうとう紗理奈は決意した、やっぱり今からタクシーを呼んで病院へ行こう!まだ午後の診察に間に合う
そうと決めたらとりあえず診察に向けて、シャワーを浴びようと浴室に行った
しかし服を脱いで髪を洗っている時も、腰の重苦しい痛みはどんどん重く、激しくなってきた
だんだんまっすぐ立っていられない、下半身が引き絞られるような痛みだ
紗理奈はウッ・・・と、また顔をしかめて目をつぶり、再び襲って来た痛みがどこかへ行くまでじっとした
しばらくしたらまた痛みはひいた、心なしか気分も悪くなってきた、もはや心臓は終始ドキドキし恐怖が襲ってきていた
髪を乾かしたらやっぱり横になろう、本能がどこか動いたらいけないと、言っているようだった
その時ツツ―・・・と何かが、紗理奈の太ももを伝い降りた
それが紗理奈の股間から出たものだと認識するのに、しばらくかかった
その真っ赤な鮮血はシャワーの水と混じって、床を赤く染め、排水口に渦を巻き流れていった
え?
途端に恐怖で全身が引きつった
そして今度は1センチほどの小さなレバーのような、鮮やかな鮮血がボトンッと床に落ちた
グラッと眩暈がした
「キャァァァアアァァァ――――――!!」
紗理奈は金切り声を上げ、その場にしゃがみ込んだ
「今日の映画とっても楽しかったから、サリーにお土産買って来たの!プリキュアの塗り絵だよ!」
瑠奈がお福ととうもろこし畑で収穫しながら言う
フフフ「瑠奈様はサリー様が大好きですね」
「うん♪」
「さぁ!今日はこれぐらいでいいですわ、キッチンで茹でて食べましょう!」
「この一番大きいのあたしの!」
お福が手に持っている籠一杯のとうもろこしと、瑠奈が両手に抱えているひときわ大きい、トウモロコシを持って二人で夕日を浴びながら、キッチンへテクテク歩く
その時母屋中に響くほどの紗理奈の悲鳴が聞こえた、お福と瑠奈はハッとして、二人同時に顔を見合わせた
「サリーの声だ!」
「お風呂場からだわ!行きましょ!」
ドサッとその場にトウモロコシは落とされた
..:。:.::.*゜:.
ガラッ「サリー様?奥様?入りますよっっ!」
お福が浴室のドアを開けると、流れるシャワーの下で湯に打たれながら、しゃがみこんで泣いている紗理奈がいた
すばやくお福が現場状況を目視で確認する、排水口の近くで血液が薄まって、ピンク色に染まっている大きな水たまりがあった
うっ・・うっ・・・「赤ちゃんが・・・・赤ちゃんが・・・」
「瑠奈様!お母さんをお呼びして!」
「うっ・・うん!」
お福の指示で、ダダダダダッと瑠奈が浴室から猛ダッシュで走り、開いているキッチンの大窓から体を乗り出し、鼻いっぱいに息を吸い込んで瑠奈が叫んだ
「ママ―――――ーーーーーーッ!!ママ―――――――ーーーーーーッ!!ママーーーーーーーーーーーーーーッ!」
瑠奈の警報音のような叫び声はどこまでも山にこだました、この叫び声を聞くとアリスはどこにいても飛んでくる、案の定3分もしないうちにアリスがダダダッとキッチンへ裏口から入って来た
「瑠奈!!どうしたの?」
息をはぁはぁ切らしながらアリスが言う
「ママ!サリーが!っっ」
「え?サリー?どこ?」
「お風呂場!!」
二人はダッシュで浴室に走り出した
..:。:.::.*゜:.
紗理奈はガタガタ震えていた、今一体自分に何が起こっているのかまったくわからない
体も感覚も粉々になったような気がしていた、何も見えず、目が開いているのかもわからない
すべてが闇の中でチカチカ模様が旋回している、子供の頃・・・閉じた瞼をげんこつで押すと、闇の中でこんな斑点が見えたものだ
シャワーの雨がいつの間にか止み、髪を誰かに拭かれお団子に括られた
そして次に身体が拭かれ、股間に分厚い布がしっかりと押し当てられた、この誰かは何をどうすればいいのか、心得ているようだった
腰の痛みが襲ってくるたび体がこわばり、子宮は火傷したような熱を持って、右へ左へとねじられているようだ
生理痛の10倍酷い・・・痛い・・・
暗闇の中・・・耳だけは機能を保っているようだ
「救急車を呼びましょう!!」
「優斗を産んだ時の(※T字帯)があるから持ってくるわ!」※出産後の大きなお産用ナプキンを抑えるふんどしの様な物
いくつかの声が聞こえた、アリスさんの声は動揺しているようだったが、お福さんの声は落ち着いていた
寒い!
寒さにガタガタ震え、歯の根が合わない、どこも動かす事が出来なかった
「このガウンを着せて!震えているわ」
「後で病院に奥様の着替えを・・・」
アリスの分厚いバスローブは紗理奈を足首まですっぽり包んだ、途端に安堵に包まれた
ソファーに横になりドライヤーの音が耳を騒がせる、救急車が来るまでにと、お福が必死で髪を乾かしている
「ナオ君に連絡して・・・ 」
「C地区にいたら帰って来るのに時間がかかるわ」
「救急車があと5分で来るって・・」
「ナオ君と連絡が取れないわ、境界線の柵の所は県外だから・・・」
リビングの無線と直哉のスマホに交互に、アリスが連絡しているのが聞こえる
紗理奈はタオルを顔に押し当て、とめどなく溢れる涙を抑えられなかった
下腹部で体がねじれるような痛みが強まったり、弱まったりしている
救急車が来てストレッチャーに乗せられ、外に出た時は視界がやけに眩しく、世界が黄色く見えた
途端に紗理奈は目を閉じて、真っ暗闇に逃げ込んだ
救急車にはお福が乗り込んで来た、どうやら一刻を争うようだ
けたたましいサイレンを鳴らし救急車は、久保田産婦人科へ車を走らせた
揺れる車内でストレッチャーに横になり、血圧を計られながら、胎児のようにお腹を押さえて丸まった
このサイレンを牧場のどこかで、彼も聞いているのだろうか
お福が救急隊員に詳しく容態を知らせている
妊娠三か月
浴室で大量の出血・・・
低すぎる血圧
出血による体の麻痺
意識を子宮へ向けようとした
どこか魂が肉体から浮遊して、まるで他人事のように自分を上から見ている
そして誰かが言った言葉が聞こえた
流産・・・・