コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
私は煙草の煙が嫌いだ。
貴方と出逢ったのは高校三年生の時だった。私と同じ部活をしていた貴方は、高校最後の大会で出逢った。その日見た貴方の姿は、言葉では言い表せない程、私には輝いて見えた。私は貴方と関わる事は無いと思っていた。でも貴方は違った。私にSNSを通し、連絡をしてくれた。何度か連絡を重ねる中で貴方を気になってしまった。貴方もきっとそうだった。
そして、私と貴方は付き合った。
何を一緒にしても楽しかった。付き合ってからすぐ来た夏には公園で水遊びもした。花火もした。線香花火が無くて2人で探しに行った。私の誕生日には手料理を振舞ってくれた。何気ない日の夕方には犬の散歩をした。そんな貴方が私は好きだった。ある日、貴方に浮気を疑われた。私は浮気なんてしていない、そう言い続けた。それが事実なのだから、どうしたらいいのか私にはわからなかった。誤解は解けず、私たちは一度別れた。
高校を卒業して、それぞれの道に進んだ。お互いに一人暮らしを始める事は知っていた。私は一人暮らしを始めてすぐに、体調を崩して寝込んでしまった。貴方は学校を休んでまで看病をしてくれた。そんな貴方が私は好きだった。それでも貴方は、もう付き合えないと言う。ずるいよ。気が付けば貴方には新しい恋人が出来ていた。自暴自棄になってしまった私はたくさん遊んだ。何か無くしてしまったけど、何を無くしたかわからない。ずっとそんな気持ちだった。先輩に勧められて大嫌いだった煙草を吸った。幼い頃から煙草の煙は嫌いだ。
気が付けば貴方と連絡を取らなくなって一年が過ぎていた。ある日、クローゼットの中から手紙が出てきた。貴方と最後に会った時に貰った手紙だった。私は貴方に手紙を書いた。最後の希望を手紙に乗せて、貴方に送った。この手紙が届かなくてもいい、私の気持ちは文字に起こす事で整理された。貴方は手紙を受け取って、私に連絡をくれた。
一度だけ会おう。
どんな結果になろうと私は受け止める準備はできていた。久しぶりに会う貴方のポケットからは、貴方の大嫌いだった煙草が出てきた。お酒を交わし、当時のことを振り返りながら煙草を吸う二人。貴方と私の煙草の煙は交わって消えていく。貴方は、恋愛は煙草みたいだと言う。火をつけてすぐは美味しくて、時間をかけて短くなって行く。美味しく無くなって飽きたり、吸い切った時には捨てて、また新しい煙草を咥える。きっと私は沢山の灰にかき消されているだろう。
二度と交わることのない貴方と私の煙草の煙は、すぐに消えて見えなくなった。
私は煙草の煙が嫌いだ。