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「なあ愛結、話したくなけりゃ無理にとは言わねぇけど、お前をこんな風にした男とは一体、どこでどう出逢ったんだよ? 交際相手って言ってたけど……柳木等組の男との出逢いって……」
「……交際相手だけど、そういう関係になったのはそもそも合意の上じゃなくて、……そうしなきゃいけなかった……」
「何だよ、それ」
落ち着きを取り戻した私は航海くんに聞かれ、そもそも何故このようなことになったのかを話し始めることにした。
「――私は、両親に売られたんです。借金のカタに……」
「親に、売られた?」
「仕方無かったんです、両親にはお金を返す宛も無かったから、私が身売りするより他には……」
「いや、だからって……」
私の話を聞いた航海さんは困惑していた。
無理も無いと思う。
実の両親にお金の為に売られただなんて話。
だけど、これは事実。
私の両親は元からお金遣いが荒く、身の丈に合わない生活をする為に、色々なところからお金を借りていた。
初めは返せていたみたいだけど、徐々に厳しくなり、悪徳業者からもお金を借りるようになっていた。
私がそれを知ったのは、高校三年の秋頃。
家に借金取りが来たことで全てを知った。
「返す」と言いながらもそんなお金が無かった両親は親戚や知人に頭を下げて回るも全て断られ、夜逃げしようという話をし始めたものの失敗に終わり、それを取り立てをしていた柳木等組にバレて私たち家族は窮地に立たされた。
そんなとき、
柳木等組の幹部でそれなりの地位にいた男、田畠 玲生が両親に言ったのだ。
「借金を全てチャラにする代わりに、娘を俺に売れ」と。
初めこそ渋っていた両親も、借金を全て無かったことにしてもらうだけでなくて新たな住まいや仕事まで用意して貰えるという話しに目が眩み、私は売られたのだ。
「……高校卒業してすぐ、私は田畠の元に行くことになりました。それからの生活は……地獄のようでした……。彼は自分の手元に私を置くだけではなくて、両親の借金をチャラにしてやった分、私にお金を稼ぐよう要求してきました」
「金を稼ぐって……」
「私の場合は、アダルトビデオへの出演です。嫌だったし、経験も無かったから怖かったけど、断る選択肢は無くて……せめて顔出しはしないことを条件にと……私は――」
「――もういい! もう分かったから! これ以上は言わなくていいから!」
航海くんは私の言葉を遮るように身体を抱き締め、これ以上言わなくて良いと言った。
この後は言わなくても想像出来るだろうから、聞く必要は無いということなのだろう。
私の初体験は売り物にされ、お金の為に、何人もの男の人の相手をさせられた。
田畠は私を気に入ったなんていっていたけど、そんな素振りは無かった。
彼女とは言われていたけど彼には他にも女の人がいたみたいだし、気分次第で何でも出来て、自分の言うことを聞く従順な女を手元には置いておきたいだけだったのかもしれない。
「愛結、ごめん。辛いこと話させて」
「え?」
「俺が変なこと聞いたせいで、話したくねぇこと口にさせた。悪かった」
「そんな……航海くんは、何も……」
「いや、俺が悪い。これまでのこと聞く必要なんて無かった。これからは今までのことは全て忘れていい。もう二度と思い出させたりもしない。苦しむ必要も怯える必要もないから、安心しろ」
「……航海くん……」
どうして彼は、こんなにも私の為に一生懸命になってくれるのだろう。
航海くんのような人に、もっと早く会いたかった。