この作品はいかがでしたか?
43
この作品はいかがでしたか?
43
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
スー…スー…
「……い、」
「お…れ…」
ガンッ
「うおわっ、!」
大きな音と共に俺の頬に痛みが走る。
「”うおわっ、”てなんだよw」
犯人は俺の左隣の席の親友・千秋だった。
「なんだよ……」
睡眠を邪魔され、皮肉っぽく返す。
「転校生だってよ。しかも女子。」
「マジ?!」
今は6月。まだ進級して間もないのに転校生が来ることは珍しい。ましてや、俺達は3年生。受験生なのだ。だからか、千秋が俺の返しを無視したことに俺は気づいていない。
ガラッ___
その時、扉が開く音がした。
皆、ドアの方に目線が集中している。勿論、千秋も、 俺も。
俺達、3-4の教室に長いポニーテールを揺らしながら、一人の女子が入ってくる。
「東 有咲(アズマ アリサ)です!」
『有咲』と言った女子は元気よく自己紹介を始める。髪は長く、少し茶髪混じりのポニーテール。目はクリっとした二重。その見た目からは元気で活発なイメージを連想させるが、背は小さい。160cmもないくらいだろうか。
「仲良くしてくれると嬉しいです!」
パチパチパチ
俺がそんなことを考えていると自己紹介が終わり、皆が拍手している。俺も慌てて拍手する。
「じゃあ__東は海川(カイカワ)(←玲於の名字)の隣な」
そして先生が俺を指さし、言う。確かに俺の右隣は空いているが、他にも空いている席はある。何故ここなのだろう。そんなことを思っていると例の転校生がやってきた。
「貴方が海川さん?」
「あ、あぁ。うん。」
突然声を掛けられ動揺している俺を置いて、彼女は話を続ける。
「私、東 有咲!隣の席だし、仲良くしてね!あ!お私のことは”有咲”って呼んでよ!」
と、俺の話す隙もなく、一人でマシンガントークを続ける。
「そういえば海川君の名前は?」
「なんで名前聞くんだよ」
やっと会話が成立した。だが、俺は緊張して冷たい言葉を返してしまった。だが、彼女は、
「私が呼びやすいから!”海川君”ってちょっと呼びにくいんだよね」
「そんなことないと思うけど…」
俺の言葉を聞いて、俺が名字のことを言われて傷ついたとでも思ったのか、慌てて有咲は言い直す。
「あ!そういう事じゃなくて…あの、私、滑舌悪くって!”か”がいっぱいあって、ちょっと呼びにくいな〜って…」
「あ、別に俺気にしてないよw」
「えっ、あ」
どうやら有咲はおしゃべりだが、気が遣えるのかもしれない。勝手な偏見を抱いていた俺に嫌気がさす。
「で、名前は?」
「あぁ。玲於。海川 玲於。」
「玲於ね!よろしく!」
「よろしくな、有咲。」
名前を呼ばれたことが嬉しいのか。それとも、俺が名前を教えたことが嬉しいのか。分からないが、有咲はニカッと無邪気な笑顔を見せる。
「ッ…//」
花が咲いたような、可愛らしい笑顔。笑みがこぼれた口元からは八重歯が覗いていた。その八重歯がさらに有咲の可愛さを引き立てる。そんな俺に有咲は一言、
「…あのさ、」
「ん?」
「昨日のこと、覚えてる?」
𝕟𝕖𝕩𝕥➯➱➩