注意事項
・この作品はwrwrd様の二次創作です。
・本人様とは関係ありません。
・検索避けに協力してください。
・軍パロです。
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良かれと思った行動は、稀に人を傷つける。
何故人は、皆平等な幸せを分け与えて貰えないのだろう。
何故一部の人が幸せな人生を過ごして、一部の人が辛い人生を過ごすのだろう。
神様が決めたのだろうか。
だとしたら、神様は無責任だ。
良かれと思ったその行動で救える心がある。
そんなの嘘ぽっちだ。
例えば、国民を守るために敵国を潰す。
一見凄く正義感の強い行動だと見える。
だが、敵国からしたらどうだろう。
国民を巻き込んで潰されてしまった敵国からしたら。
それは最悪極まりない事だ。
良かれと思っても、それはその人から見たら…であって、全てを考えてはくれない。
犠牲者は、必ず現れてしまう。
どうか。気持ちに気づいて。
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ciという青年は、非常に弱い心の持ち主だ。
彼は軍人である。
W国の幹部という立場でもある。
だが彼は冗談抜きで戦闘が下手だ。
剣は重くて持てず、弓はブレブレ、斧は空振りばかり。
そんな彼は、自分でもそのマヌケさを理解していて、誰かが止めるまで自主練をしていた。
それほど、誰かに認めてもらいたかった。
承認欲求と言うのだろうか。
それが人一倍大きい青年だった。
ci「ぜぇッ…はッ…!!」
膝に手を当てて、深く呼吸をする。
酸素と二酸化炭素の交換を必死に行う。
パッと目の前の的を確認する。
真ん中には赤い丸が着いている。
その赤い丸から5cmほど離れたところに、ciの放った矢が刺さっていた。
前より近くなっている。
ciは頬をにんまりと上げて、額の汗を拭った。
これを誰かに見てもらわねば。
ciは的を外して、それを脇に抱えた。
そのまま訓練所を後にした。
片付けを忘れているのだが…。
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ci「zmさん!!」
1番最初に見つけたのは、zmという男だ。
彼は飛び抜けて戦闘力が高い。
どうやら、W国の脅威と言われているとか。
ciがzmの名を叫ぶと、zmは振り返って笑った。
zm「汗だくやん!!どしたん!!」
的をzmの顔目掛けて突き出す。
ciはワクワクと目を輝かせてzmの返答を待った。
褒めてくれるだろうか。
それとも、ご飯を奢ってくれたり。
zm「うーん…もう少しやね。」
彼は顎に手をやりそう言った。
zm「もっと右上を狙ったらどう。風向きとかも確認せぇよ。」
ciは少し俯いて、はい。と返事をした。
そのまま的を下ろした。
褒めてくれなかった。
彼に認められる為には、どうすれば。
先程までキラキラと輝いて見えたciの瞳は、ふらふらとさまよっていた。
zm「…ああ、でも!!」
ci「…そっか。頑張るわ!!」
zmが何かを言いかけたのも聞こえず、ciは的を持って走り出してしまった。
スキップしてきた道を、走り去って。
ああ、まだ足りない。
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rb「ci!!」
突如名を叫ばれ、ビクリと肩が跳ねる。
振り返ると、rbが立っていた。
ci「…rb、??」
rb「今何時や思てん。」
そう言われ、時計に目を向ける。
時刻は11:35。
rbは30分に来たらしいが、5分間ciは無反応だったらしい。
rb「ほら、食堂行くぞ。皆もう食い終わってんで。tnとutなら待っとるよ。」
rbの手招きを眺め、それから的を指さした。
ci「俺まだ中心に当ててないねん。だから、今日は晩飯抜くわ。」
へらりと笑って見せた。
すると、rbはため息をついて、こちらにやってきた。
それから的を外して、倉庫に放り投げた。
ci「…え?」
rb「阿呆、食事くらいとれ。」
rbに手を引かれて、訓練所を出る。
廊下はもうぼんやりと暗くなっていて、少し肌寒い。
rb「…見てたけどさ、お前もっと力抜くとええよ。ガチガチやから、ブレるんや。」
ci「えッ…ぁ、うん。」
小さく返事をするが、それから会話が途切れる。
食堂に着くと、言ってた通りtnとutがお茶を飲みながら会話をしていた。
rb「ci連れてきたで。まぁた自主練しとった。」
ci「あ、あはは~…。」
席に着き、ひとまずお茶を1口。
暖かいお茶が身体を芯から温めた。
ut「もうこれ以上頑張っても無駄やで。僕も、自分を超えるために面倒なことをやるのは嫌いや。」
無駄。
俺の頑張りは、無駄なことなの?
ciはゆっくりとコップを机に戻す。
褒めてもらいたいだけ。
ただ、それだけ。
ciが揺れるお茶を見ていると、tnが肩をポンと叩いた。
tn「utと同類にされるのは嫌やね。ciは頑張っとるもんなあ。」
ut「ええ!?僕と同類が嫌て、どゆこと!?」
rb「無能。」
ut「いやいや!!今日はちゃんと書類出したよ!?」
tnが庇ってくれたと思ったが、どうやら場の空気を良くするためだけに言ったようだ。
utがわいのわいのと騒いでいるのを見て、tnは満足そうに笑っていた。
ciも、頬を持ち上げて笑った。
生ぬるい空気が、全身を重くした。
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ci「…無能、ね。」
ciは風呂場の鏡で、黒くなった目の下を撫でながら呟いた。
utは、無能と呼ばれている。
でも、それは力を発揮しないからであって、力がないからではない。
対して、ciはどうだろう。
無能と呼ばれることはない。
だが、力を発揮するどころか、そんな力すらない。
だから、ネタにされるほどでもないのだろう。
utが羨ましい。
鏡の前の自分は、やつれていて腰は一回り細くなったようにも見えた。
こんな奴が、軍人だなんてね。
はあとため息をついたciは、濡れた髪をわしゃわしゃと掻きながら廊下に出た。
shp「んあ、ci。」
ci「おう、shpくん。」
ぐいーっと身体を伸ばしていた彼は、shp。
ciの一個上の先輩だ。
なんでもこなせるタイプの人間で、ciの苦手な1人でもあった。
shp「今風呂上がり??」
ci「うん。あ…待ってた??」
shp「あ、いや。眠れんくてさ。」
shpはそういうと、ciの髪から垂れそうになった1滴の水を袖で拭った。
ci「じゃ、また明日な。」
shp「…なあ、少し話さん??」
ci「…え?」
shp「話聞くだけでも。」
ci「…まあ、ええけど。」
そう返事をすると、shpは歩き出した。
その背中を追いかけるようにciも足を踏み出した。
勉強しなきゃなんだけどなあ。
ciはそう愚痴りながらも、shpに着いて行った。
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思っていたよりも風が冷たい。
屋上へやってきた2人は、フェンスの近くにあるベンチに腰を下ろした。
それから夜空を見上げた。
ci「…んで、話って??」
ああ、そうだった。
shpはciの方を向いて、口を開いた。
shp「悩み事を隠すのは卑怯やと思う。」
「隠してるのに、解決するはずがないやろ。」
ciはshpから顔を背け、夜空を見上げた。
ci「何の話。部長のこと?」
shp「ワイ知ってんねん。お前が悩み事を持っとることくらいな。」
ci「…あそ。」
shp「解決したいんやろ。なら、話せよ。」
ci「…別に。他人の同情を求めるほど俺は弱くない。」
shp「弱いから悩んでるんやろ。」
ci「五月蝿い!!!!!!」
ベンチからshpを突き落とす。
shpは固く冷たいコンクリートの床に尻もちを着いた。
ci「お前に何が分かんねん!!」
shp「何もわからん、だから知りたいんや。」
ci「ええよなあ!!お前は有能有能言われてさあ!!」
「ほんまに有能やし、それもネタにされて!!」
shp「ci。」
ci「でもなァ!!俺みたいな無能が居るから有能がおんねん!!称えられんねん!!」
「無能がおっての有能やからなァ!!少しくらいは無能を褒めてくれたってええやないけ!!」
shp「ci、」
ci「五月蝿い!!俺は知ってた。この世界は厳しいって!!だからこそ…生き抜きたいんや!!」
「それをお前らはバカにしやがって!!!!」
「なんなの!!俺が居るから、お前らが称えられるのにさ!!!!もう俺は要らないって!?」
shp「ciッ。」
ci「はいはい!!俺は能もないガラクタですよ~!!」
「そんな奴は、死んでしまえばええんやね!!俺はそうやって教わった!!」
shp「ciッ…!!」
ci「壊れたら捨てる。皆そうしてる!!直せるかもしれへんのに!!作り変えれるかもしれへんのに!!!!」
フェンスが音を立てる。
ciがフェンスから上半身を出す。
下は闇に包まれていた。
落ちてしまえばどうなるかなんて、誰でも分かる。
それでも、ciはそれすら見失うくらいに、心を壊してしまっていた。
皆の良かれと思う行動で密かに心を殴られて。
そして、宙にふわっと両足が浮いた。
shp「ciッ!!!!!!!!!!」
がしり。
shpはなんとかその両足を掴む。
フェンス越しにciと目が合った。
彼の瞳には何も写っていなかった。
虚空にさまよい、真っ黒に包まれていた。
ずるりと空中からciを救い出し、shpは逃がさないとその身体を抱き寄せた。
もう、彼からは何の声も発せられない。
気絶でもしたのだろうか。
いいや、違う。瞼が開いている。
ちらりと目を合わせてみるが、ぼんやりとしていてまるで目が合ったとは言えなかった。
これはまずいと本能が感じ取り、すぐさまインカムを取り出す。
…そして、インカムを手から落とした。
こうやって、自分がこいつの為にした行動のせいでこいつは傷ついてしまっていた。
それは事実であり、今こうして目の当たりにした。
shpは静かにciを背負って、真っ暗な廊下を進んだ。
自室に着き、ベットにciを寝かせる。
優しく手で瞼を閉ざした。
すると、しばらくして寝息を立てた。
床で寝ようか。
shpは考えたが、それは嫌だ。
shpは仕方なく、ciの隣に小さく丸まった。
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shp「んん……。痛ぁ。」
目を覚ますと、既に日が登っていた。
shpは床で寝ていたようだ。
恐らく、途中で落ちてしまったのだろう。
ベットに目を向けると、布団は丸く膨らんでおり、水色の髪の毛がぴょこぴょこと飛び出ていた。
shp「…ん”ー。」
身体を伸ばし、少しだけカーテンを開く。
それから布団を捲り、ciの顔を確認した。
寝ている。死んでしまったかのように。
小さな寝息は、耳を済まさねば聞こえない。
そんなciが可哀想に見えて、shpは咄嗟に撫で始める。
指との間にひょこっと入ってくる水色の髪の毛は可愛らしかった。
ciも、そんな印象だった。
人懐っこく、shpがutといると、間に入っては遊びたい!と笑って言うやつだった。
そんなに明るいやつだが、それは本物だったのだろうか。
稀に見る訓練所での自主練に取り組むciは、闇に包まれたように静かな雰囲気だった気がする。
一言も発さず、ただひたすらに弓を構えていた。
矢は、あちらこちらに飛んでいき笑いだしそうになったのが、本当に情けない。
あれは、頑張っていたのに。
ciが、褒めてもらおうと、認めてもらおうと。
最近、よく幹部から怒られていたっけ。
自主練のしすぎだとか。
勉強のしすぎだとか。
それは、ciの頑張りであったのに、怒られるという気持ちを考えると悲しくて堪らなかった。
それを、どれだけ続けていただろうか。
shpが気づく前から?
それとも、もっと前から?
皆、嫌味とか意地悪とかで、その行動をしていた訳ではこれっぽっちもない。
ただ、その”優しさ”が。
良かれと思ったその”行動”が。
ciとは真逆なことであって、ひたすらに誰にも気付かれずにciを苦しめていた原因であった。
そんなこと。
分かっていても、分かりたくない。
嘘であったら、どれだけいいのだろう。
謝ったってどうしようもない。
だってこちらは良心だったのだから。
悪気なんて、一切なかったのだから。
ことわざと少し意味がズレてるけど気にしないでね😞
コメント
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泣いちゃうって😭😭‼️‼️ これからどうなって行くんだろう…!また心を閉じちゃうのか、それとも心を少しづつ開くのか…!気になるけど、どちらにせよチは報われて欲しいなぁ。努力は報われるって言葉は人によって無責任に思える発言っていうのを改めて感じた🥹👍
泣 き ま し た