僕らの マスク戦争
大三章 開戦〜❶
(ハクト⁉️…、今行くからな!!)
頭の中をいろいろな不安が駆け巡る。シズキは、仲間に後を頼み,自転車に飛び乗るとキョウコが教えた場所へと全速力で走った。小学校を過ぎると、イチョウ並木の途中で、手を振って合図するキョウコが見えた。
「大丈夫か??怪我は,胸、苦しいか❓」
ハクトは,誰かにリュックを奪われ、中身を道端にばら撒かれたようだ。手のひらの切り傷はその時のものらしい。喘息発作は、キョウコがリュックの吸入器を見つけ、2回利用し事無きを得た。しかし、発作がまだ続くようであれば,医師の診察が必須になる。
キョウコには、ハクトを見つけて助けてくれたことに、頭を下げ感謝した。これぐらいで済んだのは、キョウコのお陰だと思う。ハクトは,以外に落ちついていたから僕は少し戸惑っていた。
岡山のご親戚の見舞いに行く予定時間を、大幅に遅らせ変更させてしまった事を、「本当に申し訳ない!!」と、何度も謝った。後でキョウコのお母さんに電話するつもりだと、キョウコに伝える、、、、。
キョウコは、首を振り「問題ないよ」といつものように笑い、「岡山に泊まりだから、夜連絡待ってるネ」と言って、帰って行った。
僕が最初、現場に着いた時から、ずっと、ずっと驚きを隠せなかった出来事がある。
キョウコには,以前よりハクトの話をしていたので、喘息の事は知り得た事だが、自閉症の事は言って無い。話す必要も無いと思ったし、ただでさえ言い難いことでもあるから。
ハクトは,誰にも心を許さないし、誰とも触れ合えない。キョウコと実際に会うのは今日が初めてなはずなのに、ハクトはキョウコと手を繋ぎ、彼女の側から離れなかった……。
確かに怖くて、心細い状況にあり兄の高校と同じ制服のキョンに靡いたか?
キョウコが,自転車で帰ろうとしたその時,ハクトはキョウコの腕を掴み、何故か?キョウコの眼を真っ直ぐ見つめた。彼女もハクトの小さな眼差しに,答えるように優しく頷き、ハクトを軽く抱き締め、「必ずまた会えるからネ」と言い、帰って行った。
僕は言葉もなく呆然とした。今まで見たこともないハクトの行動に、只々驚きを隠せなかった。
その夜、僕も母もハクトの入院で病院にいた。医師の診断で、一晩,様子を見ることになった。父のタカシも仕事先から駆けつける。父は、途中、警察に寄ってハクトの被害届を出してきたと話した。
本人からの話はモヤッっとして、頼りなく的を得ない。周りの状況から総合的に考え、あの日は人通りが少なかったと思うし、目撃した人も今のところ無い。
ハクトの様子から分かっている事は、子供では無く大人風、若者?近間の学校が休校の所も有り、私服に着替えた学生達ではないかと言うことだ、、、、。
リュックの紐の部分に、結構な力が加わり契れていたことから、1人ではなく、複数でハクトを襲ったのでは無いかと考えている。キョウコが来たのが見え、急いで隠れ逃げた、、、ソウカ、、。
(どうしてだ❗️ハクトが何をしたと言うんだ、すぐに真実を知り、名乗りを挙げ、弟に謝れば死刑だけは許す、、、)
pandemic以来、マスクができない理由があって、証明書もぶら下げているのに、至る何処で、差別や追放に遭う。そして、、、,
今回の事は、間違いなくイジメだ❗️
国の対策が招いた愚策の所為だ。マスク警察よりもアザとい!ハクトが喘息発作で,もしもの事が起こったなら、誰が責任をとる?犯人は国に擦り,政府は国の緊急措置としての政策だと高を括り、小さな病気の子供に皺寄せがいくことなど誰も考えない。ハクトだけでは無く,社会弱者と言われる者達にとって益々生き難く、一方的な社会になりつつある、、、、、
その夜
「アッ,キョウコ?今話して大丈夫か?ハクトは、もう大丈夫だから。今日は本当に助かったよ、有難う❗️」
「ヤダァ、シズキ、本気だったんだ❓隣にオカン居るから替わるね!」
「シズキ君ネ、キョウコの母です。そんなに気にすることないのよ。キョウコの叔父で、私の兄なの、心臓元々悪く何度か入院しているの。今回、社務所で、急に倒れてネ、今、集中治療室にいて、話は出来ないけど、今直ぐにどうにかなる訳じゃないと思うから。でも、お電話本当に有難う!
それよりも、弟さん?ハクトちゃんが襲われたって聞き驚いてしまって、こちらこそお見舞い申し上げます!入院したって聞いてキョウコも凄く心配していたんです。
それはそれ可愛い弟さんだそうで、あの子、何度も話していて、退院したら家に連れて来たいと言ってました。一人っ子だからかしら?シズキ君が、羨ましいのでしょう!いつでも家は大歓迎よ、是非寄越してくださいね。」
僕は仰天した、(可愛い❗️家に呼びたい⁉️)、、、僕はなぜか、不思議な感覚をまたも感じていた。
キョウコから後に聞いた話しだが、叔父さんは古い神社の宮司をされている方らしい。持病の心臓病の悪化で、度々入院していた。
キョウコのお母さんは、その都度見舞いに岡山まで行っていた。今回も1人で行く予定だったが、急遽、キョウコもお見舞いに行くことを決めたらしい。
それから、数日後、叔父さんが亡くなったことを、キョウコから聞かされた。
“‘『僕はその時の、キョウコが言い放った言葉が頭から離れない⁉️』”’
「キョンが、岡山に行ったのは,叔父さんに呼ばれたからよ。叔父は色々な話しを、キョンにしたかった,と言うより、、今思えば、遺言みたいな内容だったカナ…わーたーしーは、水の神様、[セオリズマイヒメ]の末裔なんです❗️ウン、ソウ言われた。証拠は大和神宮内の社殿の奥,祀り棚の下の唐箱に在る紅の巻物に記載があるから、確かめなさいと、🗝の場所も聞き、この神宮はヒメを祀りし宮,キョウコの後に、大和神宮を継ぐ命を受けし……………て!
分からない、今は何も考えられないから、とにかく早く元気になって、、、と話したノ。」
「キ,キョウコ,マ、🗝,巻物📜は、み、タ,ノ❓」シズキは,自分が何の話をしているかさえ、分からなくなっていた。
「ダカラ,ダカラネ、想いの強さを肝に集め増幅させ、偉大な力を溜める!!其れから先…守りたい愛と命があるなら、ア タ シが、この私が本気で祈祷し願えば,神水が溢れ出し岩をも、砕く❗️、、、、」
「ハハハハハハハ、シズキ,本気にした?でも、、もしかしたら、半分ぐらい本当かも、そうだったらどうするシズキ⁉️」
僕は頭がついていけず、放心状態でキョウコの話を聞いていた。
何と❗️倒れた叔父さんは寝たきりで,酸素マスクを装着していたはずだし、キョウコが来た事も分からないと、キョウコのお母さんが、話していたのだ…。
[ドキュメンタリー映画]
いよいよクラスのイベントが7月半ばの蒸し暑い日の午後おそく、3年B組の教室で行われた。
映画館さながらに黒幕を垂らし,漆黒にしたいところだが、感染予防のため窓が全開してあるので、少しの風も手伝い、どうしても隙間から陽が漏れ入る。司会の女子の案内が終わり、上映がスタートした。平日と言うこともあり、少なめを予想していたが、意外にも、クラスの3分の2の保護者が参加した。
クラス一人ひとりのパフォーマンスは、個性豊かで、我が子の演技に身を乗り出し、手を叩いて、発表会、さながらに喜ぶ父兄もいた。
上映にあたって題名『僕らのマスク、戦争』が、時節にそぐわない、反マスクの反対派活動団体とつながる恐れがあると、心配の声が上がっていた事は承知していた。
【 僕たちは 、マスク廃止論を掲げているわけでは無く、マスクの自由化を希望しているだけだ】
科学的な証明も無いミクロのウィルスに、そもそもマスクでは防げない。勿論、咳をする人が、必要に応じてすれば良いことでは,ないのか?
ウィルスの正体のわからぬ最初の1年は仕方ないとしても、確かなエビデンスもないまま今も続いている。ましてや、この流行病は益々熱を帯び差別化が進んでいる。もう、マスク無しでは暮らせない社会となった。
「僕たちの今,この瞬間は僕たちのためにあるのだ❗️」
“従来の日常を取り戻し、残り少ない高校生活を有意義に過ごすことが僕らの望みである。誰にも声を上げられない不安を抱えていた僕ら、イヤ、この国の子供達の多くが、窮屈で理不尽な政策だと思っているはずだ。教育委員会からの伝達は、マスク着用の半強制なのだから…。
もっと言うなら、今のこの国の社会に生まれた子らの、先の未来の絵を想像するや空恐ろしくなる、、、、。
プロの撮影機材の優秀さもあって、スクリーンは、まさに本格的な映像美で迫る出来栄えだった。上映時間が進み、終わりに近づく頃には、笑いあり涙ありと視聴者らは、我が子やBクラス全員の真摯な訴えに、いつしか、時節を忘れ、拍手喝采を送っていた。
上映会は無事に終了し、今のところクレームが来て無いし、僕たちの思い出作りは、成功したと信じたい……。
夏の受験対策も、各々それなりにこなし、毎度の煽りとも思える報道合戦は、初秋から勢いを増し始めていた。
この時、既に忍びよる恐怖と負のスパイラルが、水面下で動き始めていたことを、僕らは知る由もなかった……。
僕らの マスク戦争
【 大三章 開戦〜❷ 】へ続く
長い文章、お読みいただきありがとうございました。地名,団体名は全てフィクションです。
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