テラーノベル
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「……ねえ、まろちゃん」
「ん?」
「……僕、たぶん……もう0時になっても、本音しか言えない感じ、しない」
いふは一瞬、手を止めた。
目の前の初兎は、いつものように膝を抱えて、いふのとなりに座っていた。
「今日、試してみたの。
いつもみたいに“言いたくないこと”を思い浮かべてみたけど……ぜんぜん強制される感じしなかった。
たぶん……呪いみたいなやつ、消えたんだと思う」
それは、あまりにあっけない終わりだった。
何年も苦しんだ、“嘘をつけない1時間”の制限。
でも今、ふっと、霧が晴れたようにそれは消えていた。
「……なんかね、ちょっとだけ寂しいの。
あの時間、まろちゃんといろんなこと話せたから」
いふは、静かに初兎の頭を撫でた。
「魔法がとけたのは、おまえが“自分の意思で”言えるようになったからだと思うよ」
「え……?」
「俺、気づいてた。
最近のおまえ、0時じゃなくても、ちゃんと気持ち伝えてくれてた」
「……見てた?」
「見てた。全部」
いふは笑った。
少し寂しそうに、でもすごく嬉しそうに。
「だから、もう呪いなんていらないんだよ。
初兎は、もう自分の言葉で愛を伝えられる人になったってことだよ」
初兎は、ちょっとだけ涙が浮かんだ目で、いふのほうに寄りかかった。
「……それでも、言っていい? 0時じゃなくても」
「ん?」
「……まろちゃんのこと、世界でいちばん好きだよ」
「言わなくても分かってたけど、やっぱ直接言われると、すっげぇ嬉しいな」
「……ん、よかった」
二人の間に流れるのは、特別な時間でも魔法でもない、
ただの“素直な想い”だった。
—
0時の魔法は終わった。
でも、それは“終わり”じゃなく、“始まり”だった。
初兎が“誰かに言わされる言葉”ではなく、
自分の意志で“好き”と伝えられるようになった、はじまりの夜。
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