テラーノベル
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12月の空気は、すっかり冬の匂いに変わっていた。
放課後の帰り道、咲はマフラーに顔をうずめながら歩く。
(……もうすぐ、クリスマス)
約束を交わしたあの日から、心の奥がずっとそわそわしている。
悠真と並んで歩く光景を思い浮かべるたび、胸が甘くしびれた。
「……私なんかでいいのかな」
小さく漏れた声は白い息に混じり、夜空に消える。
ポケットの中の手が、ぎゅっと握りしめられる。
会うのが楽しみで仕方ない。けれど同じくらい、不安も大きかった。
その表情を、すれ違った美優が見逃すはずもなく――。
「咲、なんか顔真っ赤だけど?」
「な、なんでもない!」
慌てて否定する咲に、美優はにやりと笑った。
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