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「彼は狼くん」 ― ya × et
カーテン越しのやわらかな陽射しがリビングに差し込む。
ベッドで眠っていたえとを、ゆあんは腕の中で抱きしめたままゆっくりと目を覚ます。
「……ん……ふ……」
小さくもぞっと動く感触。寝息が途切れて、えとが瞼を震わせた。
「……おはよ、寝坊助」
耳元で囁く低い声に、えとの肩がびくりと跳ねる。
「……ゆ、ゆあんくん……っ」
慌てて起き上がろうとするえとの腰を、ゆあんは片腕で抱き寄せて逃さない。
「動くな。……せっかくあっためたのに」
「もう、そういうこと……」
「……ほら、見ろよ。首」
顎を指で持ち上げられ、鏡に映った自分の姿を見て息をのむ。
首筋や鎖骨に散る赤い痕。
「……こんなに……」
「俺がつけたって証拠。……消すなよ」
「っ……!」
俯くえとの耳が真っ赤になる。それを見たゆあんが、にやりと笑った。
「可愛いな。……昨日のこと、思い出した?」
「~~っ思い出させないでよ!」
「思い出せ。……なぁ、昨日誰の名前ばっか呼んでた?」
「……っ」
「言えない?じゃあ……言わせる」
ちゅっ……ん、ちゅぷ……くちゅ……
軽く触れた唇が、次第に深く絡んでいく。
舌先が触れ合うたび、えとの指先がぴくりと揺れた。
「ん……っ、ゆ……あん……く……」
「そう、それ。……もっと言え」
じゅる、ちゅぷっ……
「っ……朝から……やだ……」
「朝だから。……俺以外にこんな顔、絶対見せんなよ」
その一言に胸がぎゅっと締め付けられ、えとは思わずゆあんの服を握りしめる。
朝ごはん
「……何食べたい?」
「えとさん」
「真面目に……!」
「冗談。……卵焼き」
渋々キッチンに立つえとの後ろから、ゆあんがぴったりと張り付く。
「な、何……邪魔……」
「俺以外のとこ行くなって言ったろ」
「そんなこと……っ」
耳元にかかる吐息に、膝が笑う。
「この前の怪我……誰にやられた?」
「え……? ちょっとだけ知り合いと……」
「男?」
低く落とされた声に、えとがびくっとする。
振り向く間もなく、腰を掴まれてカウンターに押し付けられた。
「……二度と会わないで。……いい?」
「……うん……」
その返事に満足したように、ゆあんが頬に軽くキスを落とす。
けれどすぐ、唇が触れ、深く絡み始めた。
「んっ……ぁ……ゆ、あん……んぅ……」
「俺の名前だけ言ってろ。……ほら、もっと」
くちゅ、じゅるっ……
吐息と音が混ざり、甘くとろけた朝が続いていく。
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