３年生の存在

３年生が居なくなって初試合。まだ新しい体制が整っていなかった為か、見事に惨敗した。そりゃあ悔しかった。泣いたし、次こそって何度も思った。でも俺が主将になったから？って言うのがどうしても浮かんだ。もし違う奴だったら勝てたかもしれない。

次の日は試合の疲れも溜まっているかもとのことで朝練は無しだった。いつもよりゆっくりできた。教室に行くと、見にきていた奴らからの慰めや応援をしてもらったけど影からは弱い。前の方が強かった。壊れた鉄壁などと言われた。その日の授業は集中ができなかった。ずっと涙を堪えるのに必死だったから。

二口　(昼休み…昼休みまで我慢しろ…そしたら1人になれる所行って沢山泣いて切り替える。大丈夫…)

昼休みになり、涙も限界だった為ダッシュで教室を出た。

二口　(やばい…涙が溢れる…そうだ屋上…あそこならそうそう人は来ない)

廊下を走っていると途中で引退した３年生が移動教室から帰ってくる所だった。

鎌先　「あ二口」

笹谷　「めっちゃダッシュしてる」

茂庭　「廊下は走るなっていつも言って…」

と言いかけた時、３年生は見てしまった。二口の瞳から溢れているものを。すぐに二口は見えなくなったが、３年生は呆然としていた。

鎌先　「そりゃ悔しいよな」

笹谷　「新体制初試合だったし」

茂庭　「心配だから俺様子見てくる」

鎌先　「待てよ俺達も行くから」

屋上に着いた二口はもう抑え切れてはいなかったが大粒の涙を流した。

二口　「ふっくっ俺…主将なんてやっぱり…無理…」

茂庭　「はぁはぁ…二…もご」

鎌先　「しーっ」

笹谷　「今は刺激したうダメ」

二口　「茂庭さん…達からせっかく…任されたのに…くっ…もう…ヤダ…」

二口　「こんなんじゃダメってわかってるのにな」(昼休み終わっちまう。戻らなきゃ）

鎌先　「やっべくるくる」

笹谷　「とにかく隠れろ」

茂庭 「ええどこに！」

鎌先　「ここでいいや‼︎」

二口全く気づかず教室に戻った。

放課後の部活は普通にあったので向かうともう大抵の人はきていた。みんな目が少し腫れていた。まぁ俺もだけど。

二口　「昨日の反省も生かして練習するぞ‼︎」

部員　「おー‼︎」

しばらく練習していると３年生がきた。昨日の今日できたと言ううことはやっぱり昨日の試合を見て俺じゃダメだと思って指導しにきたのかなって思った。

３年生「おーっす」

部員　「あおつかれ様です！」

いつもなら鎌先さんをからかうが今日は顔を合わせづらい。だってせっかく早めに引退をして任せてくれたのに。あっさり負けたのだから。その日は特に話すこともなく、練習が終わった。いつもなら途中までの先輩も最後までいた。やっぱり俺だと不安だったのかなってどうしても思ってしまう。

二口　「今日はここまで。確実ストレッチして片付け。明日からは朝練あるから忘れんなよ。」

部員　「おっす」

茂庭　「俺達が片付けやるから着替えてきていいよ」

作並　「え！悪いです！」

鎌先　「いいからいいから」

笹谷　「お前達はできるだけ体休めろ」

作並　「ありがとうございます」

全員着替えが終わり帰宅したが、俺は部誌に書くことが思いつかずまだ部室にいた。

二口　(反省点なんて山ほどある。課題だってあるし、でもこれは自分に対するものだ。部活に対するものじゃないし、あーくっそ全然思いつかねぇ）

二口　「もうやだなぁ…」

とボソというと次第に涙が出てきた。

二口　「な…んで」

止めようにもなかなか止まってくれない。すると外から、足音が聞こえて

二口　(まずい…‼︎)

できるだけ涙を拭こうと思ったが、拭けば拭くほど溢れてきて…

二口　(止めれ…止まれ…！)

ガチャとドアが開き、反射的にドアの方に目線をやると、忘れ物をした部員ではない。引退した３年生だったのだ。

二口　「な…んで」

なんでいるんですか…？と言おうと思ったけど、泣いてる時ってなんか声が出づらい。

茂庭　「二口ごめん。俺達今日の屋上にいる時のお前の言葉聞いてたんだ。」

二口　「っ‼︎」

鎌先　「負けたけど、何回だって鉄壁を築けばいい。

笹谷　「俺達が選んだ主将は大丈夫って思ってるし」

二口　「フッヒック…鎌先さんが優しいのきもい…」

鎌先　「なぁんだとぉ‼︎」

二口　「今日…練習見にきたの俺じゃダメだと思ったからだと思ってました。」

茂庭　「ごめん。二口と話したくて、学校だとなかなか時間取れないし終わるまで待とうと思って」

二口　「暇なんですか…」

笹谷　「まぁ少なくとも泣いてる後輩をほっとく程忙しくはねぇな」

と言うと茂庭も鎌先もうんうんと頷く。

二口　「‼︎あざす」

茂庭　「不安な時は仲間を頼ればいい。勿論俺達に頼ってもいいから。」

二口　「はい」

その日は一緒に帰った。なぜか心がだいぶ落ち着いた。　

二口　(３年生すげぇな俺も来年は茂庭さん達のようになれるかな）

と思った。次の日からは完璧に切り替えて春高に向けて練習を開始した。