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こはる
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#魔道具職人
こはる
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深夜の1時を過ぎたころ、私はようやくお屋敷に戻ることができた。
食堂に入ってぐったりしていると、こんな時間にも関わらず、どこからか賑やかな音の余韻が伝わってくる。
……まだまだ外は収穫祭。
本当、みんな元気だなぁ。
「アイナさーん……?
あ、いた! お帰りなさい!」
「アイナ様、お帰りなさいませ」
「おっかえりー♪」
突っ伏した頭を起こしてみれば、エミリアさんとルーク、ジェラードが食堂に入ってくるところだった。
知った顔があると、やはり心が安らぐというものだ。
「ただいまですー。
みんな、夜更かしですね」
「そろそろ寝ようとは思っていたんですけどね。
物音がするので部屋を出てみたら、ルークさんとジェラードさんも、丁度出てきたところで」
「あはは♪
僕たちのアイドルを、一声でも|労《ねぎら》わなきゃって思ってね♪」
「うえぇ……。まず、そこに触れますか……」
「いえ、アイナ様。とても可愛らしかったですよ」
私の言葉に、ルークはフォローをして……くれてないよね、これ。
しかもこれって――
「……もしかしてルーク、お酒飲んだ?」
「はい、仕事終わりに勧められまして。
さすがに収穫祭ですから、飲まないのは申し訳ないかなと」
「仕事が終われば、やっぱり飲まないとね♪」
「ただ、緊急事態があれば出なければいけません。
ですので、今回は最低限とさせて頂きました」
「なるほどー……」
……それでも例の、余計な一言は出てしまうのか。
酒癖というほどでは無いんだけど、やっぱり何だか狂っちゃうんだよね……。
「それで、アイナさんはまだ起きているんですか?
起きているなら、明日の予定をお話しておこうかなって思ったんです」
「もう少しくらいは起きていますよー。
そうだ、お茶でも入れますか?」
「あ、それなら――」
「……お待たせいたしました」
エミリアさんの言葉を遮って、キャスリーンさんがお茶のセットをトレイに乗せて運んできてくれた。
何と言う良いタイミング。さすが私のメイドさん!
「わぁ、ありがとう。
キャスリーンさんも、もう休んでくれて良かったのに」
「……はい」
……ん? キャスリーンさん、何だかいつもと雰囲気が違う……?
睨んでいる……のではないけど、じっと見てきて……。
それでいて何だか少し、歯を食いしばっているような……。
「あ、あの……。キャスリーンさん、どうかした……?」
「な、なんでもありませんっ」
そう言うと、キャスリーンさんはぺこりをお辞儀をして、食堂から出ていってしまった。
もう就寝時間だし、給仕する必要は無かったんだけど……んん? 何か悪いことをしちゃったのかな?
「あー、アイナさん!
キャスリーンさんを泣かせちゃいましたね!」
「えぇ!? 私、何かやっちゃいましたか!?」
心当たりなんてまるで無い……。
そもそも今日は昼前から外に出ていたわけだし、お屋敷を出るときは何ともなかったはずなんだけど――
「……ほら、収穫祭って三日間あるじゃないですか。
メイドさんたちも、特別なシフトを組んでいたそうなんですよ」
「ああ、それは聞いています。
やっぱり楽しんでもらいたいですから、とても良いことだと思ったんですけど……?」
「それで、ですね。
今日はマーガレットさんとミュリエルさんがお休みだったんです。
その二人が、今晩のアイナさんのステージを観て……その、ほら。可愛い衣装だったじゃないですか」
「はぁ……」
「それを初日に見られなくて、キャスリーンさんは拗ねちゃったみたいなんです」
「そこ!?」
「あはは♪ キャスリーンちゃんはアイナちゃんのことが大大大好きだからねー♪
何でも一番じゃなきゃ、済まないんだよ」
「……それは……もう、何も言えませんね……」
ちょっと、フォローのしようが無いというか……。
私は一体、それを聞いてどうすれば良いのだろう……。
「ちなみにアイナさん、あの衣装はどうしたんですか?
三日目のイベントでも着るんですよね?」
「一応、持っていますよ。
アイテムボックスもありますし、自分で洗濯もできますから」
「それならちょっと着替えて、キャスリーンさんに見せてくれば良いんじゃないですか?
機嫌なんて一発で直っちゃいますよ♪」
「えぇ!?」
「そうだねぇ。遠目だとよく見えないっていうのもあったし……。
こういう衣装は作りが雑な場合もあるけど、さすがにアイナちゃんに着せるものだから、しっかり作ってあるんでしょ?」
「確かに、細かいところまで丁寧に作られていましたね。
最初はもう、凄い抵抗があったんですけど――」
……着慣れてしまえば、可愛い服だからね。
変にいじられなければ、私としては拒絶するほどのものでも無いんだよね。可愛い服だからね。
「それじゃ、僕たちにも近くで見せてくれないかな!
ねぇ、ルーク君。見たいよね?」
「もちろんです。
アイナ様の可愛らしい姿を、是非お見せください」
「こ、この酔っ払いーっ!!」
「……?
私は酔ってませんよ?」
ダメだ、このルーク。
早く明日のルークと交換してこないと!!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
――謎の圧力に耐えられず、結局着替える羽目になってしまった私。
……おかしいなぁ。
これなら食堂なんて行かないで、さっさと寝ちゃえば良かったかなぁ……。
自分の部屋で着替えてから改めて食堂に戻ると、そこにはお茶を飲んでいる四人の姿が見えた。
……四人? あ、キャスリーンさんが増えてる。
そんなキャスリーンさんは私の姿を見ると、両手で手を押さえて、ふるふると座りながら震え始めた。
「ただいま戻りました……。
まぁ、こんな衣装でしたよ。どうですか?」
渋々ながらに軽くポーズを付けて、一回転だけしてみる。
個人的には過剰なサービスだとは思うが、この衣装に恥じない振る舞いくらい、少しはしておかないとね。
「アイナ様! 可愛いですっ!!」
最初に感想を口にしたのはキャスリーンさんだった。
……勢い余って、そのまま抱き付かれてしまったけど。
抱き付くだなんて、普段のキャスリーンさんからは想像できない行動だ。
でも、拗ねていられるよりはよっぽどマシか……。
「本当に可愛いねぇ。ルーク君は、どう?」
「まったくもって、世界一可愛らしいと思います」
「ジェラードさん! ルークに振らないでくださいよ!!」
「えぇー? 面白いから良いじゃん♪」
「私は真面目ですよ?
アイナ様はどこに行こうともその可愛らしい姿で世界を――」
「はい、ストップ! はーい、ストーップ!!」
「あはは♪
でも、キャスリーンさんもこれで満足ですよね?」
「はい! 今日はぐっすりと寝られます!」
「そ、それは良かったね……」
「アイナさんってば人気者ーっ!!」
「あはは……。
人気者といえば、ポエールさんから聞いたんですけど、私にファンクラブがあるみたいなんですよ。
本当にもう、驚いちゃって」
「――あ、それでは私はそろそろ失礼いたします。
アイナ様、わざわざ着替えて頂きまして、ありがとうございました!」
「おやすみ、キャスリーンちゃん♪ さて、ルーク君。僕たちもそろそろ失礼しようか」
「いえ? 私はもっとここでアイナ様の可愛らしさを――」
「まぁまぁ良いから!
それじゃアイナちゃん、おっやすみー♪」
「え、あ、はい。
おやすみなさい……?」
三人は挨拶もほどほどに、さっさと食堂から出て行ってしまった。
……んん? 突然、どうしたんだろう。
「うーん♪
それじゃ、この可愛いアイナさんはわたしが独占できるわけですね!」
「えー……。
そろそろ寝ませんか?」
「えーっ!!?
……で、でもそうですね。アイナさん、お疲れですもんね!」
「イベントの後半は、司会進行をやっていただけなんですけどね。
ただ、やっぱり人の目に触れ続けるのは疲れる……って言いますか」
「分かりました!
それでは明日のお話をしたら、すぐに寝ることにしましょう!!」
「はーい、そうしましょう!」
――何せ明日、収穫祭の二日目はイベントが盛りだくさん!!
あとはガルーナ村のセリシアちゃんに会おうっていう話もあるからね。
となると……明日は仕事が無いとはいえ、時間の方は大丈夫かなぁ……。
セシリアちゃんと会うのは、明後日にしても大丈夫かなぁ……。
コメント
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お疲れさま!深夜の食堂に仲間たちが集まる空気感が、ほっこりしました。キャスリーンさんの「見られなかった拗ね」にわざわざ着替えて見せに行くアイナさんの優しさにじんわり。ルークの酔っ払い発言にも思わず笑顔。エミリアさんの「可愛いアイナさんはわたしが独占できる」で締める温かさが、収穫祭の余韻みたいで大好きです🌷