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水 このヘアピン?昨日買ったんだー!
可愛いでしょ?
友人 可愛いー!!w
水 ちょっと…なんで笑ってんの!
友人 いやだって…w鏡見てみなよ
水 んー?ってあ!!!
ヘアピンの向き逆じゃん
えー恥ずかしー///
そう顔を赤らめながらヘアピンをつけ直しているのは俺のクラスの姫
男でありながら可愛らしい骨格と顔立ち
小さめの身長を存分に使った上目遣い
水色から紫がかったグラデーションの髪の毛は天性のもので、日の光に当たるとキラキラ光る
それでいて可愛いのは見た目だけじゃない
あざとさと少し天然で誰にでも分け隔てなく優しい
裏の顔でもありそうなものだが残念なことに誰にだって同じように接する
当然誰にも勝ち目なんてなかった。
白 今日も今日とてうちの姫はかわええなぁ
そう話すのは俺の親友
青 せやなぁ
白 何?そんな寂しそうな顔して
僕はそのイケメンフェイスも羨ましいで?w
青 うるせー。
なんて言いながら、俺の目には水しか映っていなかった。
俺もあんなふうになれたらな。
昔から可愛いものが好きだった。
運動をするよりお部屋でお絵かきをしていたかった。
サッカーを習うよりピアノを弾いていたかった。
自分が男で他の子と違うことに興味を示すことに違和感を抱くのはそれからすぐの事だった。
青 ねぇママ…僕ね可愛くなりたい!
お外でサッカーするよりお家でピアノを弾いていたりおままごとしたり、お絵描きしてたい。
それからねあの子がつけてたヘアピン可愛いんだ!
僕も可愛いヘアピンつけたら可愛くなれるかなぁ
子供の純粋な気持ちだった。
ただのおねだりのようなものだった。
おかしなことだとは思ってもいなかった。
それなのに…
母 変なことを言わないでッ!
良い?あなたは普通の子なの
外でサッカーや鬼ごっこをするのが好きなの
分かってちょうだい…
あなたはいい子でしょう?青
意味がわからなかった
普通って何?
可愛いものを好きだって言ったらダメなの?
可愛くなりたいって思うのはいけないの?
ただ好きなものを好きだって言ったのにどうして怒られなくちゃいけないの?
それでもいつも優しい母が怒るのが怖くて
何が悪いかもわからないまま
目に浮かんだ不快感をただ拭うことしかできなかった
青 …ごめんなさい
その日から自分の気持ちを隠すようになった
好きなものを誤魔化した
好きでもないものを好きだと偽った
ママには笑顔が戻った
それでも自分の中には不快感がぐるぐると渦巻いていた
白 なぁ知っとる?最近駅の近くに新しい雑貨屋さんできたんやって!
行ってみようや!
青 あぁ、あのずっと工事しとったところか
白 そうそう!
青 確かに気になるなぁ
白 よっしゃ!決ま…
先生 白、お前今日補習だろ
さっさと教室にこい!
白 げっ…忘れとった…
青 何してんねん、はよ行きや
白 ごめんな…また別の日に行こ!
青 おう!補習頑張りやー
雑貨屋か…
ちょっと覗いて帰るか
まぁ雑貨屋なんて別に買うもんもないな…
青 あっ…これ…
目に止まったのは可愛らしいヘアピンだった
手に取り近くで見るとやはり可愛くて
俺の胸は高鳴った
でも…
青 こんなん…俺には似合わんよな…
そう思い商品を置いた
第一こんなもん買ったら母さんにもなんて言われるかわからんしな…
そのまま出口に向かおうとした
水 買わないの?
後ろから聞き覚えのある可愛い声がした
青 うわっ!?びっくりした…
水 そんな驚く?あははっ
そう笑う彼はやはり可愛くて
それなのに俺の心には黒いモヤがかかった
水 君にも似合うと思うけどなぁ
青 いやいや…こういうのは水の方が似合うやろ?
水 そんなことないよ〜
僕は好きなものを身に着けてるだけだからさ!
青 …ええやん、似合ってるし
少し素っ気なくなってしまった気がする
好きなものを好きといえるのが羨ましくて
俺の黒い感情が溢れ出しそうになった
水 じゃぁ僕これ買おっかな〜
青 ええやん、よく似合うと思うで
水 …ちょっと待ってて!
青 え…?
そう言って水色の彼はレジに走った
その笑顔は眩しくて
やっぱり羨ましくて
なんとも言えない気持ちに苛まれた
水 あっ!良かった〜待っててくれた
青 そりゃ…待てって言われたし…
水 ふふっ…優しいね
青 別にそんなこと…
水 そんな君にプレゼント!
開けてみて!
青 え…?
渡された小さな袋だった
言われた通り開けてみると
青 さっきのヘアピン…
水 君が買わないなら僕が買うって言ったじゃん!
青 それそういう意味だったん!?
気持ちは嬉しいけど…やっぱり俺こういうのはちょっと…
なんて口をモゴモゴさせてしまう
そんな事をしていると 水は自分のポケットから同じヘアピンを取り出した
水 じゃあ僕とお揃いってことで!
そう言って彼はまた羨ましいほどに可愛い笑顔を見せた
青 ヘアピン…反対やで…w
水 あれっ!?
もう、せっかくカッコついたと思ったのにー///
水 まぁでもいっか。
青くんが笑ってくれたし!
青 え…?
水 僕もう帰らなきゃ!
それ、明日学校に着けてきてね!
友達の証だから!
そう言い残し彼はこちらに手を振りながら帰って行った
青 俺の名前…なんで知ってたんやろ…
まぁええか
同じクラスやし。
それほどおかしくもないか。
そこまで深く考え込まないようにした。
青 明日つけてって言われたけど…
家に帰って俺はこのヘアピンと見つめ合っていた
つけようとするたびどうしても母の言葉が頭をよぎる
母 良い?あなたは普通の子なの
あなたはいい子でしょう?青
青 これは可愛くなるためやなくて
友達の証やもんな…
白 えぇ!?珍しっ
青 やっぱり似合わんよな…外すわ
白 違う違う!めっちゃ似合うやん!
青 えっ…?
白 いや…イケメンってなんでも似合うんやな…
友達 えっ!青ヘアピンしてんじゃん!いつもと雰囲気違っていいな!
青 あ…ありがとう…///
学校に付けていくとみんなが褒めてくれて。
ちょっと嬉しくなって水の方を見た
水 僕の方が、先にこの良さ気づいてたのにな…(小声)
なんか…水の顔が寂しそう…?
水 ちょっとみんなっ!青くんばっかりずるいーっ
僕も混ぜてよ!
さっき一瞬水の顔が曇ってるように見えたけど
青 気のせいよな…
白 それにしても姫と仲良かったなんてビックリやわ
青 仲良いって昨日雑貨屋で会っただけやけどな
白 ちゃっかりお揃いのヘアピンまで買っちゃって
もう僕のことなんてどうでもいいのねーw
青 めんどくさい彼女みたいなこと言うやん
大丈夫やって、ちゃんと”白のこと大好きやから”
お弁当を食べながらそんなバカを言い合う
この日常がいつまでも続くと思っていた
水 は…?
この間までは
水 …ねぇ
白 おっ…噂をすれb
白が急に口を閉じた
水を見ればその理由は明確だった
青 どうしたん…なんかいつもと違うで?
そこにいたのはいつも姫と呼ばれる水からは想像もつかないほど圧と 本能的な恐怖を感じた
水 白ちゃんのこと…好きなの?
青 お…おん…当たり前やろ…?
水 へぇ…そっか
急にごめんね!
そう謝る彼はいつも通りの可愛い水だった
青 あれっ?おかしいな…
白 どうしたん青ちゃん
青 いや、体育やからヘアピン外してしまってたんやけど…しまってたところにないねん
白 えっ!?やばいやん
僕も一緒に探すわ!
青 せっかく貰ったんにな…
友達の証なのに…
白 全然ないやん…
最後まで探してあげたいんやけど…僕もうそろそろ帰らなあかんわ
青 もうこんな時間か…ごめんな付き合わせてもうて
気づいたら空は赤く染まっていて
その中白は申し訳なさそうに教室を出ていった
青 ほんま…どないしよう…
そんな中一通の連絡が入った
いま1番見たくない人から1番の欲しい言葉が
水 ヘアピン落ちてたよ!
僕のじゃないから青くんのじゃないかな?
下駄箱にいるから待ってるね!
慌ただしく荷物をカバンに詰めて、急いで下駄箱までの階段を下った
いつもの道がひどく緊張してひどく長かった
なくしたなんてバレたら怒られるかな
大切にしてないって思われないかな
そんな気持ちを持ちつつそこにはいつもの水色が見えた
水 やっほー!
そんな急がなくてもよかったのに
青 はぁっはぁっ…
ご…ごめんな
ほんまに…大切にしてたんよ
大切にしまってた…
ほんまに…嘘なんかやなくてっ…
息を切らしながら言葉を紡ぐ
途切れ途切れのその言葉はどうしても言い訳がましくて
それでも水は優しい笑顔をしていた
水 大丈夫。大丈夫だよ
怒ってないし、大切にしてくれてたことも知ってる
ありがとうね
そう言って俺の頭をそっと撫でてくれた
少し背伸びをしているところがあざとくて可愛くて
それでも優しい言葉と笑顔に心が溶かされて
俺は水には勝てないなと本気で思った
水 …青くんってさ、可愛くなりたいの?
違ったらごめんねっ…でも可愛いものを見てる時すごく幸せそうに笑ってるように見えて…
青 …
少し気まずそうに水が俺にそう問いかけた
気づかれるなんて思っても見なかった俺は
驚いてしまった
水 あれっ…僕の勘違いだったかな
青 いや…勘違いやない…けど…
水 けど…?
青 笑ってええよ…別に…
似合わんやろ。俺には。
確かに可愛くなりたかった
でも気持ちとは反して俺の身長は高くなる一方やったし、骨格だって男らしくなる一方だった
目元も切れ長な感じで、髪色だって暗いトーンの青色
声が高いわけでも可愛いわけでもない
無愛想であざとさなんてなくてっ…
どう頑張ったって可愛くなんかなれへんのよ。
水とは正反対やろ。
水 どうして無理するの?
青 無理なんて…
水 泣いてるじゃん
青 えっ…
そう言われて前がぼやけている事を自覚した
頬を撫でるように垂れる水は俺の心の黒さが溢れ出したものだった
水 それに僕…青くんが可愛くないなんて思ったことないよ
青 そんな嘘つかなくても…
自分でよく分かってるから…可愛くないことなんて
水 嘘じゃないよ!
じゃあ僕が青くんが可愛いこと証明してあげる
僕のお家においでよ
可愛くしてあげるから!
本当はこの言葉に乗せられてはいけなかったんだと思う
それでも心を動かされるこの言葉に
俺の気持ちはもう嘘をつけなかった
その笑顔に嘘偽りがあるなんて思いたくなかった
青 行きたい。
水 いらっしゃい
ここが僕のお家!
青 ご両親は?
水 僕一人暮らしなんだよね~
青 えっ!?すごいな…
俺には出来んわ…
そんな会話をしながら水が出してくれたオレンジジュースを1口飲む
水 大丈夫。
青くんが独りになることなんてないし、僕もこれから一人暮らしじゃなくなるから
青 え…?
どういう意味
そう思った頃には頭がクラクラして
姿勢を保てなくて倒れ込んだ
それ以降の記憶はもうない。
水 僕が可愛くしてあげるからね
他に誰にも見せてあげない。
青 んっ…ここは…
そう思い立ち上がろうとすると
ガシャンッ
重たい鉄が擦れる音がした
俺の足は枷で繋がれていた
水 おはよ。起きた?
青 水…ここは…?
怖かった。
声も身体も全てが震えた
そこにいるのはいつもの姫ではなくて
狂気的な笑みを浮かべた狂った男だった
あれから数日が経った
水 おはよ。今日もかわいいね。
水はいつもそう言いながら俺のところへ来る
髪も服も食事も入浴も俺の全ては水の支配下だった。
それでももうどうでも良かった。
いつも可愛い。その言葉だけが俺の支えだった。
水はいつも朝から学校へ行く。
それでも俺のわがまま1つで言葉1つで休んでくれることだって少なくはなかった。
青 なぁ…俺のこともっと可愛くして…?
水 可愛いお誘いだね
お姫様からの可愛いお誘いを断るわけにはいかないよね
青 はぁッ…ぁ”…♡
水 可愛い、可愛いねぇ
そう言いながらも腰の動きは可愛いものなんかじゃなくて
それでも可愛いと言われるのが嬉しくて
意味もわからず回るわけもない頭は快楽しか受け取れなくて
気持ちよくて幸せでいっぱいでバカになりそうだった
青 あぁッ”…おれ…かぁいいッ?んッ♡
水 世界で一番可愛い僕だけのお姫様だよ♡
青 水ッ…水ッ!~~~~~ぁッ”♡
水 気持ちいの?可愛いねぇ
気持ちいの嬉しい?可愛くなれて幸せ?
必死に僕の名前呼んでて可愛いねぇ
青 うんッ”♡うれしい…気持ちいのもかぁいいのも水のおかげッ
全部くれる水好きッ”♡
水 そっかそっかぁ♡そうだよね僕のこと大好きだよね
青 うんッ”好きッ…だいしゅきッ”♡
ちゅうしたいッ…ちゅうしてイきたいッ♡
水 可愛いねぇ…いいよ
俺は水の首に手を回し触れる唇を体温をじっくり味わった
俺には水しかいない
あぁそうか。
俺の支えは可愛いって言葉じゃない
可愛いをくれる水なんだ。
そう思えば全てが愛おしく幸せで嬉しくて
この幸せが一生続いてほしいと思った
青 えへへッ♡ずっと一緒♡
あ”〜〜〜ッ”♡
そんな事を言うと水は姫ではなく姫をさらう獣のような目つきになり
水 そんな可愛いことばっかり言ってると僕止まれないんだけどッ♡
そう言って腰の動きを速めた
青 あはッ”…んぁッ”?ぁあッ”♡
もう右も左も分からなくなった
それでも可愛いをくれる水が好きで
暖かい身体に触れながら増えていく赤い跡をなぞって幸せな気持ちで意識を飛ばした。
水 もう僕がいないとダメだもんね?
一生離してあげられないから
覚悟してね
俺の身体には赤い跡が増えていた
白 青ちゃん全然来うへんやーん
僕全然友達おらんしつまらんわ
てか、連絡までつかないとかちょっと不安なんやけど…
友達 ちょっと最近休み多くなーい?
水くんがいないとつまんないんだけどー
水 えーそんな事ないでしょ
ん?そんなにこっち見てどうしたの白ちゃん
白 い…いや…なんでも
最近青ちゃん来ないんやけど…連絡もつかんし
なんか知らん?
水 …僕は何も
白 やっぱり違和感あるんよな…
水 白…バレたらめんどくさいし何より青くんの親友なんてムカつく
あっ…良いこと思いついちゃった…♡
白 なぁッやっぱりおかしない?
友人 まぁ…優等生のあいつがここまで休みはさすがに心配だけど…
白 やっぱり水くん怪しいって
だって…青ちゃんは水くんと仲良うなり始めてから来なくなったんやで?
うちの姫を疑いたくないのは分かるけど…疑わないほうが無理やろ…
友人 まぁお前が言うことも分かるけど
でもやっぱり水がなんかするってのも想像つかねぇんだよな
水 なんの話ー?
友人 水ッ…
水 っていうか白ちゃん…青くんのこと心配するフリもうやめたら?
白 フリ…?
水 僕ずっと相談されてたんだよね
白ちゃんがつきまとってきてうざいって
でも離れようとしたら脅されたって
白 ちょっと待ってや…そんな事僕1度も
友人 おいマジかよ…
自分が追い詰めたくせに来なくなったら水のこと犯人に仕立て上げるとか…最低だな
白 ちょっと待ってや…僕の言葉は信じんのに水くんの言葉は信じるんか?
そんなんあんまりやろ
そんな言い訳は虚しく白はクラスで孤立しやがて不登校になった
水 ぜーんぶ嘘だけどね
ウザかったんだよね
青くんの好きをもらうなんて
そんな相手僕だけでいいんだから
もう何ヶ月も経った気もするし
まだ全然経っていない気もする
窓も何もないこの部屋では時の流れを感じることはなかった
それでも
水 おはよ。よく眠れた?
今日もかわいいね。
そう言いに来てくれる水が好きだった
逃げようなんて考えもしなかった
だって俺の欲しい言葉をくれるのは水だけだから
俺の居場所はここしかないから
俺が信じられるのは水だけだから
でもたまに引っ掛かる言い方をするようになった
水 青くんは昔から可愛いもんね~
俺の髪をクシでとかしながらそう言う彼
青 昔って…俺らが出会ったのは高校入学したときやろ?
水 やっぱり…覚えてないよね…
可愛いって言葉が嫌いだった
水 うぇぇぇん”っ
公園の隅でよく泣いていた
学校ではいじめられていたし
クラスの中心的な人物なんて夢のまた夢だった
自分が大嫌いだった
男のくせに弱そうなこの体が
可愛らしい声が
きれいな二重が
クリクリとした大きめの目が
低い身長が
水色の髪が
せめてと思い髪を黒く染めていた
前髪を伸ばして目を隠した
声をあまり出さないようにした
それでも骨格が変わるわけではない
自分がほかの人とどうして違うのか小さい僕には分からなくて
神様を何度も恨んだ
そんな中声をかけてきた君は
神様の情 だと思った
青 どうして泣いているの?
そう声をかけてきたのは
まるで僕がなりたい理想の男の子だった
高い身長
ネイビーに近い暗い青髪
低めの声に
切れ長の目
程よく筋肉のある体が羨ましかった
少し君を妬んだ
でももうこの溢れ出す涙を止められなくて
言いたくもないのに
心から溢れ出す言葉を紡いだ
水 いじめられてるの
僕かっこよくなくて
女みたいだって
僕だってなりたくてこうなってるわけじゃないのに
それなのにみんな僕を見て笑うんだ
拙いながらに必死に喋った言葉を
一つ一つかき集め綺麗に彼は受け止めてくれた
そのまま僕の前髪を少し上げた
青 綺麗な目やな
人それぞれなりたいものも持っとる個性も違うんやから
君は君のままいたらええんやないか?
俺は
君が羨ましいよ
はっきりと僕の目を真っ直ぐ見てそう言ってくれた
水 えっ…?
青 俺は君みたいに可愛く…
そこまで言うと彼はハッとした顔をして
青 なんでもないっ
とにかく君は君らしくいたらええんやないか?
自分のことをさらけ出しても、カッコいいものを目指しても
君の人生なんやから
初めて会った青い彼は僕が欲しい言葉を全てくれた
初めて神様に感謝した
それと同時に気づいたんだ
彼はきっと”俺は君みたいに可愛くなりたい”と言おうとしたこと
そして僕はもう君一目惚れしてしまったこと
だから
嫌いだったこの髪色をもとに戻した
彼ならきっと可愛いって言ってくれるから
目元だって隠すのをやめた
彼が綺麗だと言ってくれたから
性格だって
可愛くなるために必死で努力した
天性のものに見えるように
誰にでも優しくちょっと抜けてて
そんな彼の理想をすべて演じた
全ては君を手に入れるために
正直今だってこの顔も声も好きなわけじゃなかった
それでも彼に近づきたい
彼に見てもらいたい
その一心だけで僕はこの可愛さを利用した
あの時の僕とは今は大違いだし
きっと君はもう何も覚えていないんだろうね
それでも
僕はずっと覚えてる
君が人生を変えてくれたその言葉を
行動を
だから次は
僕が君の人生を変えてあげる
どんな手を使ってでも…ね
水 きっと青くんは覚えてないんだろうけど
僕たちは1度だけ出会ってるんだよ
でも覚えてくれてなくたって別にいいんだ
今青くんが僕を好きでいてくれることが大切だから
だからそんな申し訳なさそうな顔しないで?
可愛いその顔をよく見せてよ
青 うんっ…へへ…
水 また眠たくなってきちゃった?
ゆっくり寝てて良いんだよ
そう優しい声で優しい言葉をかけてくれる
彼の暖かい腕のなかにいると
俺の意識は夢の中へと堕ちていった
ほんっとうに可愛いな
きっと君は何もわかってないんだろうな
君が僕を好きになるように全部仕向けられたことも
ずっとずっと前から僕の手の中で踊らされていたことも
ただ僕の言葉を信じて
僕だけを見て
僕だけを必要として
それが全て計画の中だってことも
僕の手の中で幸せそうに眠る君は
まるでお姫様だった
簡単に消えてしまいそうで
でも僕の腕のなかに確かにいて
それが何とも言えない幸福感で包まれた
僕は君をここから逃がすことはできない
それでも時間は刻一刻と迫る
きっと
この事実はいつかバレてしまう
高校生の僕には隠し通すなんてそんな力はない
それでも最期まで離れたくないし
離したくもない
そもそも離す気なんてない
そんな事を考えていたら抱きしめる手に力が入ってしまったようで
青 んんっ…水…?
僕の姫が目覚めてしまった
水 ごめんね…起こしちゃったかな?
青 んーん。大丈夫
ふにゃりと微笑む君はやはり可愛くて
手放したくなくて
その唇にそっと口づけをした
甘くて苦い口づけを
青 んふふっ…
幸せやなぁ
目が覚めたら暖かい腕のなかにいて
そっと口づけをされた
その口づけは
ほんのり薬の味がした
意識が遠のいて来た頃
そっと抱きしめてくれている手を恋人繋ぎにした
水の顔を見て微笑んだ
青 愛してる
水 僕も愛してるよ
だから一緒に眠ろうね。
そう言うと君はそっと目を閉じた
あぁ愛おしい
本当に可愛い僕のお姫様
青色の髪に優しく触れながら友情の証を付ける
君を助けられるのは僕だけで
僕を助けてくれるのは君だけ
その関係が何とも美しくて幸せで
その関係に終わりをつけるなんてこと 僕にはできなかった
外の騒音もゆっくり流れる時間も
もうどうだって良かった
ただ暖かくて
幸せで満ち溢れていて
目を閉じた君の顔が何とも美しくて
それでいて可愛くて
本当に大好きだから
誰よりも愛しているから
僕は僕を最期まで好きにはなれなかったけど
君の瞳に映る僕だけは好きになれたから
体温が奪われていく
神様はきっとこんなこと望んでいなかっただろう
でもそんなことは知らない
僕は神様が大嫌いだから
恨んでいるから
最期くらいわがままに生きたっていいじゃないか
君が僕にくれた言葉
“君は君のままでいい”
この言葉が僕の宝物だったから
生きる理由だったから
僕は君の生きる理由になれたかな
君の人生の支えになれたかな
幸せそうな君にもう一度優しく甘い口づけをした
二人の手は繋がったまま、目を閉じた。
誰より可愛く、誰より愛おしい二人の姫は、
冷たくなっていく中、 互いのぬくもりを感じていた
友情の証を分かち合った姫が 目覚めることは二度となかった。
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