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ワイングラスを片手に、派手な広いホールでは、沢山の男女が話に『嘘』の花を咲かせる。
俺はまあまあでかいホストクラブでスタッフをやっている乾ないこだ。
「乾くん、あっちシャンパン」
「___!、はーい!」
相変わらずグラスのタワーが沢山組まれている見慣れた光景の中に、周りとは比にならない、この店1番の大きなタワーを組んだテーブルがある。
(アイツほんとすげーなぁ…)
短く艶のある青髪に大きな瞳、ここのスーツを体の一部のように美しく着こなすNo.1ホスト、「威風」
数ヶ月前に入ったばかりだが、その人気は本物。
どんなやつでもあいつに笑いかけられたらイチコロだ。
「乾、乾っ」
「…なんすか」
『威風さんが今相手してるお姉さんめっちゃ綺麗だよな!』
「…そう?」
「あぁ、そしてエースだぞ?あれは絶対アフター行くな!!」
「………」
「乾…?」
『乾くーん、姫の案内よろしくー』
「はーい」
俺はその場に話途中だった同僚を残し、呼ばれた方へ向かった。
日をまたいで数時間経った頃、店の閉店作業が始まる。
ここの店は清掃員が少ないから、俺たちスタッフは、清掃用の服に着替え、 酒の飲み残しや飛び散った跡、吸い殻を片付け、床を磨く。
ホスト達は大抵酒を飲んでベロベロだから先に家に帰るのだが、1人俺たちを手伝ってくれる…
『大変やなぁ…?』
俺が取ろうとしたゴミにスッと手を伸ばしながら隣に現れる威風。
「俺の紹介で入ったのに随分といいご身分ですねぇ?」
半笑いで威風の言葉に返す。
『……っんは、』
「急にどしたの」
『お前、今日嫉妬しとったやろ?』
「、、っは!!?」
『見えてないと思っとったんっ?』
『俺はエースだの何だの興味無いし、ただないこの近くで仕事したくてホストになっただけやん』
『ずっと見とるよ、笑』
嘘の微笑みを浮かべて、仕事をこなす『威風』と、俺の大好きな恋人『if』。
どうやら2人とも、この言葉も俺への愛情も好意も全部、嘘では無いようだ。
「もうすぐお金が貯まるね」
『2人で暮らせんの楽しみやわ』
俺たちは一部始終、ニヤニヤしながら作業していた。