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ACT.4:鏡の中の影
時は、再び現在へと戻る。
モリスケとシュンは、もうイケニシと直接の関わりを持つことはなかった。けれど、完全に切れたわけでもなかった。
インターネットは、切ったはずの縁をずるずると引き戻す。
特に、インスタのような場所では。
シュンは、今もなおイケニシのアカウントを“見られる”状態にあった。フォローはしていない。もちろん、向こうからもされていない。だが、どこかで互いの投稿は届いていた。
それはまるで、薄いカーテン越しに相手の影を覗くような距離感だった。
そして、事件は起こる。
ある日、モリスケとシュンは、イケニシのアイコンを使ってちょっとした“遊び”をしていた。
といっても、それはネット上によくあるいたずらの範疇。
別に本人になりすましたわけでもない。ただ、あのアイコンを使って遊んだ。それだけのこと。
しかも、そのアイコンはフリー素材。
著作権など存在しない。
だから、誰が使っても構わない。少なくとも、建前としては。
だが——イケニシは、気づいた。
どうやら、彼はエゴサーチをしているらしかった。
自分のハンドルネーム、あるいは過去のあだ名。もしかすると、画像検索でアイコンをチェックしていたのかもしれない。
「なんで俺のアイコン使ってんの?」
そんなことを、言いたげな空気がにじんだ。
けれど、直接は何も言ってこなかった。彼らしい、気味の悪い沈黙だった。
モリスケは、呆れた。
シュンも、半笑いだった。
「何が悪いんだよ。フリーアイコンじゃん。」
「むしろ、あいつが使ってたから使いたくなったんだよ。」
どこか、怒りと皮肉を込めた復讐のようなものだった。
壊れた関係。戻らない信頼。
そして、今もネットのどこかで漂う、お互いの“影”。
その影は、もう二度と交わることはない。
けれど、お互いの存在は、鏡のように反射し続けている。