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(その後)
いつものように、気持ちの悪い化け物にキスをして祓った。とても不味い…例えると、吐瀉物を拭いた雑巾を舐め回しているような、そんな味。
思い出すと、もう終わったはずの気持ち悪さが舌にキてえづいてしまった。ああ、だめだ。
胃にあったものが込み上げると同時に、喉奥を通って口に流れ込む。それを吐かぬように、と口を押さえて路地裏に駆け込んだ。ここなら誰も見ていないだろうと思い、膝をつき、ビチャビチャと音を出して地面にそれを吐き出した。─一通り吐いたところで、視線を感じた。
膝をついている私を見下ろす青年。それを見上げる私。─まずい、見られた。その衝撃で、顔がサッと冷えていくのを感じた。
はあ、はあと粗い息を必死にしている私は、さぞかし酷い顔色をしているのだろう。その青年は、私を困惑したような顔で凝視すると、少し目を逸らしてから、
「…水、要りますか?」
と、水を差し出される。路地裏で吐いて跪いている人間に、みんなは水を差し出せるだろうか。少なくとも、私はできない。しかも、膝をついている私に合わせて片足の膝をついてくれているのだ。これはモテるな。多分モテすぎて女性関係がドロドロになっているんだろう。憶測だけど。
ありがたく水を受け取ってから、一気にゴクゴクと500mlのペットボトルを飲み干す。口の中に嘔吐物が残ったまま飲んだので少し気持ち悪かったが、先程よりはかなりすっきりした。
お礼を言おうと、深呼吸をしながら青年の方を向く。
「ね“ェ、ぁぞぼォオォ“?」
青年の背後に、化け物がいた。
思わず息を詰めた。─私が普段遭遇している化け物とは、程遠いほど力を感じたからだ。硬直する体とは裏腹に、脳をぶんまわす。
まずいまずいまずい!!!!!どうする?ここには体力のない俺と心優しき一般人!!俺を囮にして青年だけは逃がすか?
そう考えている間に、化け物は青年に近づいていて─『危ないっ!!』
青年を押し退けようと手が動いた。瞬間─
シュルルル、 化け物が、真っ黒な球体になった。
それをしたのは…青年、か?
目を見開いて青年を見ると、そちらも驚いたように私を見る。漸く口を開いたかと思えば─
「あれ、見えてたんですか?」
と。聞きたいのはこっちの方なんだけどな…。なんだ、ただ飲みすぎとかで吐いている人じゃなかったんだ、とぼやく青年を無視して、私は問う。
『君…一体何者だ?』
相手の目を睨んでそう聞くと、青年は「そういえば、言ってませんでしたね」と軽く笑って、 答えた。
「夏油傑です、一級呪術師だよ。よろしく」
私は、とんでもないことに巻き込まれてしまったのかもしれない。
ニコニコと胡散臭い笑みを浮かべる夏油を見て、そう思った。